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小噺みたいなやつを書いてみた。「杞憂」

画像は私です。
本編には関係ありません。

初めて小噺みたいなやつを書いてみました。
いざ、掛け合いを書いてみると、
なかなか起伏をつけられないなぁ…
むずかしいもんですな。

タイトル『杞憂』


A:大丈夫?

B:ん?なにが?

A:鍋だよ、鍋。

B:ん、あぁ、しっかりグツグツと、
 煮崩れるくらいに…

A:ちがうよ、そうじゃなくて。
 ヒビだよ、ヒビ。
 割れてんじゃん、この鍋。

B:あ、そっち?大丈夫大丈夫!

A:大丈夫って…汁が漏れちゃうだろ?

B:あー、まぁそれはね、大丈夫!うん。

A:…いやいや、だから。
 なんで大丈夫なんだよ、
 ヒビ割れてんじゃん。縦にズバーッと…
 いつパカっと割れてもおかしくないぞ?

B:あー、ねー、うん、なるほどねー、うんうん。

A:おい、テキトーに流すなよ。
 こっちは心配して言ってんだからな。
 なに?こういう模様なの?
 にしてはセンス無いけど。

B:いやいや、
 なべの割れ方にセンスもなにもあるかよ。

A:やっぱり割れてんじゃん!

B:だれも割れてない、なんて言ってないだろ。

A:だから、割れてるんだったら!
 鍋変えようよ!まだ間に合うから!

B:アッハッハ、それはね、大丈夫。

A:大丈夫大丈夫って!
 その自信はどこからくるんだよ!

B:…ふー、わかったわかった。
 おまえ、"金継ぎ"って知ってる?

A:金継ぎ?あー、なんだっけ?
 割れた器を直すやつ?

B:そうそう。
 割れた部分を漆でくっつけたら、
 継ぎ目を金粉とかで装飾して、
 ひび割れた線を綺麗な模様みたいに
 仕上げる技法ね。

A:ふーん。

B:割れたけど捨てられない大事な器を
 リメイクしてつかおう!ってのが
 なんだか奥ゆかしいと思わない?

A:…うん、まぁ、そうだけど。
 で?この鍋のヒビに金粉は?

B:ついてないね。

A:接着の漆は?

B:ついてないね。

A:つまり、金継ぎは?

B:してないね。

A:なんの説明だったんだよ!
 やっぱヒビ割れてるんじゃん!
 漏れちゃうじゃん!

B:そもそも、これは土鍋だから
 金継ぎはできないぞ。

A:なおさらなんの説明だったんだよ!
 じゃあ結局なんだ?
 ヒビに見える模様でも無く、
 ヒビを接着してるわけでも無いのに、
 ただなんとなく大丈夫って言ってるのか?

B:ん?いや、べつにそういうわけじゃないけど、
 まぁ大丈夫だよ。

A:だから!大丈夫じゃないって!
 割れてんだから!あきらかに!

B:いやだから…

A:まぁ大丈夫ってか?
 だから見るからに!そうは思えないから
 心配して言ってるんでしょうが!

B:いやいや、
 大丈夫じゃないから大丈夫にするために
 いまこうしておかゆをね。

A:いや大丈夫じゃないなら、
 おかゆ作ってる場合じゃ…

B:だから大丈夫なんだって。
 土鍋がひび割れた時は、おかゆ作ったり、
 片栗粉煮たりすると、でんぷんかな?
 なんかそんなのでくっついて直るのよ。
 目止めってやつ。
 だから、大丈夫、ね。

A:…はぁ、
 それなら最初っからそう言えよ…。

B:おかゆを煮込んでるの見たら、
 なんとなくわかるだろ、
 風邪引いてるわけでもないんだから。

A:わかんないわ、そんなの。
 はぁ、心配して損したわ。

B:いわゆる、あれだ、杞憂(きゆう)だ。
 杞憂に終わった、ってわけだな。
 ハッハッハ。

A:なんかお前に言われたく無いわ…
 でも不思議だな。
 そんながっっつりヒビ割れてるのに
 おかゆ煮るだけで直るんだな。

B:んー?

A:いや、目止めって
 てっきり小さなヒビとか
 防いだり直したりするもんだと
 思ってたから。
 そんな端から端までのヒビでも
 直るんだな。

B:え?直らないの?

A:ん?直るんだろ?

B:え?知らない。

A:は?

B:は?


パキッ!

バゴッ!ゴロンゴロン…


A:…

B:…

A:割れたなぁ…。

B:…あれだな。

A:ん?

B:きゆうに割れたな。

A:…は?

B:いや、杞憂と急をかけてて…

A:は?


=終=


…うーむ。
書きながらどうしようこうしよう、と
悩んでいたので、気付いてない誤字脱字が
あるかも。
とりあえず、せっかく書いたので、
このまま残しておこうと思う。

お目汚し、失礼しました。

では。

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