スイッチにはなれない
推しの不倫が週刊誌にすっぱ抜かれたと聞いた。
正直、推しバンドのスキャンダルが出るのはこれが初めてではない。
かつてKANA-BOONのメンバーであった飯田さんの不倫が明るみになった時はもっとセンセーショナルに報じられたし、その後彼は心身の不調もあってバンドを離れた。
今となっては、彼が心穏やかに何処かで生きていてくれればそれで満たされる。
しかし、今回は私のメンタル的にはそれ以上の衝撃があった。
何せBUMP OF CHICKENである。スキャンダルとは一番遠いと思っていた存在でもあった。
コロナ禍で息を潜めていたBUMPは先日、アニメ映画とのタイアップを発表し、リスナーは春を待ちわびた草花のように歓喜した。
さらにバンドの心臓とも呼ぶべきメンバーの結婚も報じられ、祝福一色で彩られていた。
その中で、まさかの不倫である。
ここまで対極の事態ぶっ込んでくるか。
どうであれ、彼らの音楽が変わる訳じゃない。
そうであっても、私は何処かすごく寂しいような気持ちでいた。
先日放送を終えて尚熱冷めやらぬ、MIU404というドラマがある。
綾野剛さんと星野源さんのW主演による、刑事ドラマだ。敬愛する米津玄師さんが主題歌を手がけたこともあり、私も全話視聴した。
このドラマのテーマの1つに、誰と出会うか、それぞれの存在がどう作用するかによって人生が大きく変わるというものがあった。
特定の誰かと出会うことで人生に大きな影響が与えられることがある。
ほんの小さな、些細なきっかけで犯罪に手を染める人もいる。
画面を通して見た犯人や加害者、被害者達は、いつかの私かもしれないし、何かのきっかけでそうなったかもしれないパラレルワールドの自分かもしれない。
ドラマの中で、綾野剛さん演じる刑事、伊吹の恩師であった蒲郡元刑事が、妻を殺されたことで殺人鬼と化す回があった。
罪を告白する蒲郡に対し、伊吹は「俺はどこで止められた?」と涙ながらに蒲郡の人生の分岐点の在処を問うた。
それに対し、連行される蒲郡は星野源さん演じる伊吹の相棒、志摩に伝言を託す。
「お前にできることは何も無かった。」と。
伊吹は何をもってしても、蒲郡が踏み止まるスイッチにはなり得なかったのだと。
私はまさに、伊吹の気持ちの一部を味わったのだ。
家族も、メンバーも、リスナーも、彼が不倫に進む道を塞ぐスイッチにはなれなかったのだ。
私は、私達は、その程度の存在だと思うことをやめられない。
それでもなお、私にできることは。
泣いていても、怒っていても、一番近くに居てくれた彼らの音楽を否定しないことだと思う。
罪を憎んで人を憎まず。
坊主は憎かろうと、袈裟まで恨む必要はない。
これまでの彼らも、彼らの音楽も、許して愛していければそれで良いんじゃないだろうか。
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