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ジェムカービング(宝石彫刻)

Gem Carving: ジェムカービング

古代から伝わるジェムカービングは今日も健在で、際立つ貴重な宝石を生み出しています。

ジェムカービングは長く豊かな歴史があります。古代中国で始まり南アジアのムガル帝国時代に独自のものとなり、その魅力は今日も続いています。 毎シーズン、オークションハウス、美術館、高級ジュエリーブランド、デザイナーによってジェムカービングのストーリーは作られています。

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ジェムカービングの歴史

ジェムカービングの芸術は中国で始まり、ネフライトから始まりその後翡翠が使われた。 龍山文化(西暦前3000年から2000年)の間、彫刻された翡翠の品物の使用は支配階級の特権となった。 ジェムカービングのスペシャリスト、デレクJ.コンテンツ氏によると、複雑に彫られた宝石(エメラルド、ルビー、サファイア)の最も古い発見の1つは、紀元前1世紀にアフガニスタン北部のアイハヌム遺跡で発見された。 芸術形態は16世紀初頭から18世紀半ばにかけてのムガル帝国時代に繁栄した。 天国を意味する「ジャンナ」または「楽園の庭園」へ到達したいというムガル王朝の願望は、花をモチーフにしたエメラルドを彫るきっかけとなった。 彼らはこの緑豊かな宝石をお守りとして指輪や肌に触れるように肌着の下に着けた。

ムガル帝国が好んだもう一つの鉱物はスピネルです。 1590年代のムガール財務省の歴史的記録にはスピネルをダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドよりも価値があるものと格付けした。


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現代のジェムカービング

宝石彫刻師の一般的な常識では、彫刻やビーズには低品質の宝石素材を利用することです。 トップグレードの素材はファセット用で、ミディアムグレードはカボションに使用される。 しかしムガル帝国やアールデコ時代のヴィンテージジュエリーのオークションでヴァンクリーフ&アーペル、モーブッサンのジェムカービングに優れた素材を使用していることから、ジェムカービングの高品質な素材の需要が高まっていることは明らかです。

インクルージョンを隠すために彫刻を施すというコンセプトは1950年代に登場しましたが、この5年間でテイストが洗練され高級宝石の彫刻に対する需要が30%増加ています。


ジェムカービングの人気

ジェムカービングの人気はジェムストーンであれカメオアートであれ、彫刻へのこの関心の高まりは、宝石の持つ特徴と言うよりはもっと広い意味でかけがえのないものであることに対する欲求、情熱から生じている。すべてがデジタル化されたテクノロジー主導の現代世界では、消費者の関心を引くことが出来るのはおそらく手作りのものだけでしょう。 カスタムオーダーを依頼するクライアントの多くは、個性的でユニークなものを探している。職人技が感じられ、唯一無二のものが好まれる傾向がある。


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写真はSelshaさんのインド産ピンクトルマリン


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ジェムカービングの代表ブランド

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Goshwara: シトリンに彫刻したペンダント

ゴシュワラはアメリカ拠点のジェムカービングをコンテンポラリーにデザインするジュエリーブランド。「私は熟練の宝石彫刻師たちの仕事を見ながら育ちました、その職人技は明確なアイデンティティを石に与える魔法のようでした。伝統的なモチーフが私の美的感覚に影響する一方、多くは建築物にインスパイヤーされ、特に幾何学模様には触発されます。それらは生活の中で見る物や建物、歴史的な記念碑だったりします。」とオーナーのゴシュワラスウェタ氏は語る。



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Munnu Gem Palace: エメラルドの彫刻が施されたタッセルネックレス

宝石や宝飾品の分野では、歴史が常に重要な役割を果たしてきた。ニューヨークのムンヌジェムパレスはインドの文化を色濃く残し、過去と現在が融和されたジュエリーブランド。

 2001年、メトロポリタン美術館(Met)は創設者であるジュエリーアーティストのムンヌカスリワル氏に、インドの宝石芸術の展示と同時期に現代ムガルコレクションを作成するよう依頼しました。

歴史と現代を融合させた素材とデザインの試みは、このMetとのコラボにより大成功を収め、それ以来同社は米国とヨーロッパのクライアントの間でこのカテゴリーでトップの地位を確立している。 

ムンヌのコレクションはジャイプールの伝統的な建築と現代の幾何学的な形やパターンに触発されている。



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シミズ貴石: 甲州貴石切子アメトリンのチェッカーカット×暁

シミズ貴石は山梨県甲府に工房を持つ日本を代表する宝石彫刻メーカー。甲州貴石切子は2016年に黄綬褒章を受章された宝石研磨職人清水幸雄氏と伝統工芸士資格を持つ一級宝石研磨士陽一氏が切子の技術を宝石のカットに取り入れ生み出した。表面のカットが5種、裏の切子が5種の組み合わせ、合計25の様々な模様と輝きを放つ。緻密で繊細な甲州貴石切子は多くの人を魅了している。


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Fast Fact

・ジェムストーンを研磨する製作過程で40-60%の無駄が出る傾向がある。
・主な研磨工場のある場所はインドのジャイプール、ドイツのdar-Oberstein、中国(特に翡翠)です。アメリカにはニッチなジェムアーティストもいる。
・エメラルドは最も人気のあるジェムカービングで、最も広く利用される。次にルビーで稀にブルーサファイアもある。
・高い価値があり柔らかい石(モースの硬度7.5-8)であるエメラルドは研磨するのが難しい。彫刻師は破損や宝石の材料の損失を避けるように注意する必要がある。
・ルビーとサファイアはより強力ですが(両方ともモース9)、硬度が高いため彫刻も研磨も困難です。
・トルマリン、アメジスト、ロッククリスタルなどの低価格で柔らかい素材は作業のストレスが少ないため、よりユニークなモチーフや形状を試すことが出来る。
・優れた職人を見つけ維持することは、今日の業界の課題の1つです。一人前になるには長年の経験と訓練が必要が、若者はこの分野への参入に興味がない傾向がある。



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ムガル帝国
16世紀初頭から北インド、17世期末から18世紀初頭ではインド南端部をのぞく、
インド亜大陸を支配した、19世紀後半まで存続したトルコ系イスラム王朝。
ムガル朝とも呼ばれる。首都はデリー、アーグラなど。

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