この一冊が家族の笑顔を守ってくれた〜『認知症世界の歩き方』読書感想文〜
私が、この本を手にしたのは、今年の3月でした。
3月入って間もないある日、
遠く離れた父と、週に一度の定期便の電話をしているときに、会話に違和感を覚えました。
父と会話している中で、
「そろそろ父にも認知の気配が……」
と感じる節が出てきたのです。
ついに我が親にも……。
多少私の中に、
「両親も歳を重ねいずれそうなる日が来るかもしれない。」と、どこかでか覚悟はありましたが、
父は76歳。
そうなる日が、ちょっと私の中では早く感じたので、ショックが大きかったです。
ついに父も……。
調度その頃に、この本の存在を知りました。
タイトルに惹かれて早速購入しました。
中を開くなりすぐさま釘付け状態に。
『人の顔がわからなくなる顔無し族の村』
『距離も方角もわからなくなる二次元銀座商店街』
といったように、
各章の見出しタイトルのネーミングがユーモア満載で、
明るい気持ちでページをめくれました。
そして、内容も重たくないのです。
もしも、肩苦しい言葉が並んでいると難しくて、
内容も重たく感じてしまいます。
この本は、そんなことなく、
割と穏やかな気持ちで認知症と向き合うことができました。
私はこの本を父と向き合うための、
教科書のように扱っています。
認知症の方の中で何が起きているかが
とてもわかりやすく書かれており、
メカニズムだけでなく、
当事者側の目線や感覚で理解することができます。
帰省して実際に父に会った時も、
本と照らし合わせながら、
焦ることなくイライラすることもなく
父と向きあい接することが出来ました。
読み進めていくと、
自分自身が緊張したときなどになる状態と少し重なるなる場面もあり、
「あっ、あんな時は、頭の中でこんなことが起きているのか」
と納得する部分もありました。
自分自身の体験した感覚に重なるシーンは、
自分自身の行動改善の学びにもなりました。
本を参考に、
今父の中で何が起きているのか
どのような状況なのか
を把握していき、
どう対処すれば父が日常生活を送ることができるか
考えました。
少しでもスムーズに行動できる方法を考えて
父の出来ることが減らないように
なるべく自分でいろいろと出来るように心がけ、
認知症の進行を遅らせるようにしました。
このように、
この本のおかげで、落ちついて父と接することが出来ました。
もしもこの本に出会えていなければ、
きっと
「なぜ急に、今までできていたことができなくなっちゃったの?」
などと、
不安と恐怖で
パニックになったり
イライラしたり
していたとおもいます。
本当にこの本に救われました。
考えてみれば、
父の認知症も、私の病気と同じようにうまく付き合っていけばいいのです。
私は、ある日突然原因不明の病気で、
歩くことが出来なくなり、
やがて体を起こすことも難しくなり、
日に日に今まで出来ていたことが出来なくなり、
出来ないことがどんどん増えていき、
不安とショックで押し潰されそうになりました。
自分の身に起きていることを受け入れるのが大変でした。
私だけでく、まわりの方も大変だったとおもいます。
様々な病院の様々な科のお医者様も
原因を突き止めることができず、
診断がつかないまま日にちだけが過ぎていきました。
そんな中、
私自身、身の回りのことなど、人に頼るのは嫌で、
なるべく自分でいろいろとしたかったのです。
そこで、リハビリの先生に、
原因がわからないながらも試行錯誤のリハビリをしていただき、
日々、体に刺激を与えて、
少しでも体を動かせるようにしたり
自分でも日常生活を送る方法を探したりして、
それ以上悪くならないように
自分で出来ないことを増やさないように、
祈りながら懸命に頑張りました。
その経験から、
父自身も、自分で出来る限りしたいと思っているだろうと感じ、
父にも刺激を与えていけば良いのではないだろうか?
少しでも進行を遅らせることが出来るのではないだろうか?
と思いつき、
きっと父も自分でやりたいはず!
出来ると、父の自信になり刺激にもなるはず!
と思ったのです。
私の場合は原因不明で手探り状態でしたが、
父は原因がわかり、
父にはこの教科書があります。
この本を参考に、
父にあう方法で出来ることを探したり、
まわりが手助けしながら出来ることを減らさないように
どんどんいろいろと工夫すれば良いと思ったのです。
この本のおかげで、
父の目に世の中がどう映っているのかがわかり、
父がどんな感覚なのかがわかり、
それに対してどう対処したらいいのか、
少しでも父が自分でも日常生活を送れるように
まわりがどう手助けしたらいいのか
ヒントを得て工夫することができ、
お互いに精神面でも穏やかに過ごせています。
私が自宅に戻ったあとも、
母が、父になるべく自分で出来ることを
出来るかたちでさせ続けているようです。
この本のおかげで、
不安や絶望に押し潰されることなく、
明るく「認知」とつきあっていけそうです。
この本は我が家にとってのお助けアイテムです!
これからも、
父自身でもできる喜びをどんどんみつけて
父を温かく見守っていきたいです。
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