君の歌と日記帳。
『また明日、ここで歌ってくれる?』
私は授業中もずっとこの言葉を反芻していた。
嬉しかったのか、意外だっかからなのかなのか、
私はなぜか繰り返してしまう。
私はそして奏音の歌も聞いてみたいとも思った。
彼女はどんな歌声なんだろう。
そんなことを考えていたせいか、私は課題の説明を聞き流してしまった!
うわぁっー!どうしよう!
夏休みの課題出来ないかもしれない!!
休み時間になると友達に聞いた。
そんなに難しい課題じゃないらしい。
友達
「それにしても、汐音がうわの空になってるの珍しいね…?なんかあった?」
なんだこいつ。勘が鋭いな。
汐音
「ううん、大丈夫だよ。」
友達にまで迷惑はかけられないから適当に誤魔化した。
ごめんね…
学校が終わると、私は急いで家に帰った。
そもそも何時に集合するか分からない。
だから昨日ぐらいの時間に来れば大丈夫だろう。
私は昨日、奏音と出会った場所に来た。
奏音が1人うつむいて座っていた。
汐音
「か、奏音ちゃんどうしたの?」
私は声をかけた。
奏音
「う、うわっ!」
こいつ、人を化け物扱いしやがって。
奏音
「ごめん!ごめんね!びっくりしちゃっただけだからーっ!」
汐音
「お化け扱いされた…」
私はわざとらしくそう言うと奏音は慌てた様子で言った。
奏音
「ごめん!ごめん!お詫びにいい事教えるから!」
ん?いいこと?
汐音
「いいことって何?」
奏音
「え、いいこと?えへへ、それはね…秘密の場所だよ!」
奏音は少しニヤけて言った。
汐音
「秘密の場所…?何それ…?」
私は生まれてからずっとこの町にいる。
秘密の場所なんてあったかな…?
奏音
「着いてきてー!」
汐音
「え、ちょっとまって!」
奏音は走った。
砂浜なんてすごく走りづらいのに!!
私も必死に追いかける。
でもすぐに追いついて、並んだ。
奏音と私の髪が潮風に吹かれてなびいた。
砂浜で走るのって、意外と気持ちいい!
汐音
「秘密の場所ってどこ?」
私は走りながら聞いた。
奏音
「はあ、はあ、秘密っ!」
奏音は息切れしていた。
しかし奏音の足は止まらない。
しばらく走っていたら不意に奏音は足を止めた。
そこは私達のいた砂浜からも見える大きな岩場だった。
その大きな岩は下の方に穴が空いていて洞窟のようになっていた。
私も良く小さなころ、そこで遊んでいた。
奏音
「ここだよ!」
奏音は岩場めがけて指を差す。
汐音
「ここ?ここが秘密の場所?」
私は聞く。
奏音
「違うよ、ここの中にあるの!」
でも、私、ここ知ってるけど…
かわいそうだから言わないであげるか…
奏音
「あともう少しで着くよ!着いてきて!」
奏音は岩場の穴に入っていった。
私も着いていく。
私達は、小さな頃、いつも遊んでいたところに着いた。
汐音
「着いた?」
私は奏音に聞いた。
奏音
「まだだよ!」
汐音
「え?!」
私は驚いた。
ここじゃないらしい。
奏音
「もっと上だよ!」
汐音
「上?!」
私は上を見た。
た、たしかにのぼれそう…
奏音は華麗に岩から岩に飛び移った。
私もそれに着いていく。
でも結構、岩も崩れそうだ。
やっと1番上までやってきた。
そこは下のスペースとは違い、とても幻想的な空間だった。
天井にも小さな穴が空いていて、そこから光が差し込む。
私の見たことがない空間だった。
汐音
「綺麗…」
奏音
「でしょ?私達 以外 誰も知らない秘密の場所。」
奏音は岩場に座って海を眺めて言った。
奏音
「私の特別な友達だから…秘密基地を教えたの。」
奏音は微笑む。
そう言った奏音の目はなぜか悲しそうにも見えた。
奏音
「明日からはここで歌おうよ!」
汐音
「うん。そうだね。」
きらりと光る海の網。
私達の秘密基地を反射して
幻想的な雰囲気の中
私達だけが特別な場所に立っている
私の最後の思い出を胸にしっかりと1つ1つ心に刻んだ。
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