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君の歌と日記帳。


7月25日 月曜日。

残り1ヶ月と6日

『また明日、ここで歌ってくれる?』

私は授業中もずっとこの言葉を反芻していた。

嬉しかったのか、意外だっかからなのかなのか、
私はなぜか繰り返してしまう。

私はそして奏音の歌も聞いてみたいとも思った。

彼女はどんな歌声なんだろう。

そんなことを考えていたせいか、私は課題の説明を聞き流してしまった!

うわぁっー!どうしよう!

夏休みの課題出来ないかもしれない!!

休み時間になると友達に聞いた。

そんなに難しい課題じゃないらしい。

友達
「それにしても、汐音がうわの空になってるの珍しいね…?なんかあった?」

なんだこいつ。勘が鋭いな。

汐音
「ううん、大丈夫だよ。」
友達にまで迷惑はかけられないから適当に誤魔化した。

ごめんね…


学校が終わると、私は急いで家に帰った。

そもそも何時に集合するか分からない。
だから昨日ぐらいの時間に来れば大丈夫だろう。

私は昨日、奏音と出会った場所に来た。

奏音が1人うつむいて座っていた。

汐音
「か、奏音ちゃんどうしたの?」

私は声をかけた。

奏音
「う、うわっ!」

こいつ、人を化け物扱いしやがって。

奏音
「ごめん!ごめんね!びっくりしちゃっただけだからーっ!」

汐音
「お化け扱いされた…」

私はわざとらしくそう言うと奏音は慌てた様子で言った。

奏音
「ごめん!ごめん!お詫びにいい事教えるから!」

ん?いいこと?

汐音
「いいことって何?」

奏音
「え、いいこと?えへへ、それはね…秘密の場所だよ!」

奏音は少しニヤけて言った。

汐音
「秘密の場所…?何それ…?」

私は生まれてからずっとこの町にいる。

秘密の場所なんてあったかな…?

奏音
「着いてきてー!」

汐音
「え、ちょっとまって!」

奏音は走った。

砂浜なんてすごく走りづらいのに!!

私も必死に追いかける。
でもすぐに追いついて、並んだ。

奏音と私の髪が潮風に吹かれてなびいた。

砂浜で走るのって、意外と気持ちいい!

汐音
「秘密の場所ってどこ?」

私は走りながら聞いた。

奏音
「はあ、はあ、秘密っ!」

奏音は息切れしていた。

しかし奏音の足は止まらない。

しばらく走っていたら不意に奏音は足を止めた。

そこは私達のいた砂浜からも見える大きな岩場だった。

その大きな岩は下の方に穴が空いていて洞窟のようになっていた。
私も良く小さなころ、そこで遊んでいた。

奏音
「ここだよ!」

奏音は岩場めがけて指を差す。

汐音
「ここ?ここが秘密の場所?」

私は聞く。

奏音
「違うよ、ここの中にあるの!」

でも、私、ここ知ってるけど…
かわいそうだから言わないであげるか…

奏音
「あともう少しで着くよ!着いてきて!」

奏音は岩場の穴に入っていった。
私も着いていく。

私達は、小さな頃、いつも遊んでいたところに着いた。

汐音
「着いた?」

私は奏音に聞いた。

奏音
「まだだよ!」

汐音
「え?!」

私は驚いた。

ここじゃないらしい。

奏音
「もっと上だよ!」

汐音
「上?!」

私は上を見た。

た、たしかにのぼれそう…

奏音は華麗に岩から岩に飛び移った。
私もそれに着いていく。

でも結構、岩も崩れそうだ。

やっと1番上までやってきた。

そこは下のスペースとは違い、とても幻想的な空間だった。

天井にも小さな穴が空いていて、そこから光が差し込む。

私の見たことがない空間だった。

汐音
「綺麗…」

奏音
「でしょ?私達 以外 誰も知らない秘密の場所。」

奏音は岩場に座って海を眺めて言った。

奏音
「私の特別な友達だから…秘密基地を教えたの。」

奏音は微笑む。

そう言った奏音の目はなぜか悲しそうにも見えた。

奏音
「明日からはここで歌おうよ!」

汐音
「うん。そうだね。」

きらりと光る海の網。
私達の秘密基地を反射して
幻想的な雰囲気の中
私達だけが特別な場所に立っている
私の最後の思い出を胸にしっかりと1つ1つ心に刻んだ。











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