君の歌と日記帳。
プロローグ
私は今日も歌うよ。
たとえ君に届かなくても。
君と出会ったのは今日みたいに光が海に反射して、キラキラ輝いていたときだった。
私は歌うのが好きで、よく両親に怒られた時や、悩み事がある時に海岸まで来て歌っていた。
歌を歌うと、嫌なことも悩んでいることだって、
海に流されているみたいに消えるんだ。
そして私が歌うと呼応するように海も答えてくれる。
私は海も歌も大好きなんだ。
私はその日、お母さんに怒られて、家出した。
家出と言っても、歌ってくるだけだけどね!
私はいつもの海岸にきた。
その場所だけ大きな岩が海に飛び出していた。
絶好の歌スポットだ。
海のいい香りがした。
汐音
「海は…私の友達…♪なんでもわかってくれる…♪」
私が歌うと、波の大きな音がした。
私の歌を歓迎してくれているみたい…
私の世界に浸っていると、声がした。
奏音
「わあ、素敵な歌!もっと聴かせて!」
急に目の前に女の子が現れた。
私はびっくりしてしまった。
存在感が薄すぎて幽霊かと思っただろ、もう…
同い年ぐらいだろうか、
彼女の髪は雪のように真っ白だった。
そして右目に泣きぼくろのある、
華奢な印象な少女だ。
汐音
「え、まあ、いいけど…」
汐音
「海は大きくて〜♪私の気持ちも受け止めて〜♪」
うわぁ…隣でガン見されてるから緊張するし、めっちゃ気まずい…
私が歌い終わると、その女の子は拍手をしてくれた。
波の音にかき消されて何も聞こえないけど、たしかに拍手をしていた。
奏音
「いつも歌ってるの?」
汐音
「え、まあ、そうだけど、」
正直、嬉しかった。
今まで1人で歌っていたから聞く人もいない。
初めて人に歌ったかもしれない。
奏音
「すっごく上手だね!」
私の歌を素敵、上手と言ってくれる、歌を聴いてくれることってなんて気持ちがいいのだろう!
汐音
「あ、ありがとう。」
それより、ちょっと気になることがある。
汐音
「それより、君はだれ?」
彼女はちょっと慌てた顔をして言った。
奏音
「そう、そうだよね!得体の知れない人に話しかけられても困るよね、えっと、私!奏音です!近くの病院に住んでます!」
汐音
「病院に住んでる…?」
奏音
「うん!住んでる!」
家が病院か何かなのかな?
あまり聞かないでおいたほうがいいよね。
汐音
「私は汐音。よくここで歌ってるの。」
そう言うと奏音は弾んだ声で言った。
奏音
「汐音ちゃん!よろしくね!友達になろ!」
え、友達…?さっき初めて話したのに…?
私が戸惑っていると奏音は言った。
奏音
「友達…嫌なの?」
汐音
「違う違う!急だったからびっくりして…!」
奏音
「え、友達ってそう言うものじゃないの?」
いや、それはよくわからないけど…
汐音
「私も友達ってよくわからないからな…」
私はそう答えた。
彼女は少し考えてから言った。
奏音
「そっか。じゃあ、友達になれるように努力しよう!」
汐音
「そ、そうだね。」
奏音は微笑んだ。そして言った。
奏音
「ねえ!明日もここで歌ってくれる?」
汐音
「えっ?」
正直びっくりした。
今まで私は自分のために歌ってきた。
でもこれからは人のため、聞いてくれる人のために歌ってみてもいいかもしれない。
私は人に聞いてもらうことの喜びを知らない。
そして、私の歌を素敵だと言ってくれた人をがっかりさせなくない。そう思った。
汐音
「う、うん!いいよ。」
海が赤色に染まり始め、太陽も、もう地平線。
私は奏音と別れ、また海沿いを歩いた。
私はふと足を止め、海を見た。
次に太陽が顔を出す時には、私は少し変わっているかもしれない。
そう思いながらまた一歩、歩き始めた。
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