「声を出さない応援」の世界

札幌ドームで観客を入れる初めての試合に行ってきたので感想を少々。

入場はネット裏もしくは三塁側のチケットを持っている人は北ゲート、一塁側のチケットを持っている人は南ゲートです。これを把握している人が少なかったのか、並ぼうとして係員に言われて移動している人が多かったように見えました。中のコンコースが北と南で通行不可能なので入場ゲートは間違えないように。列は間隔を空けて…足元に印がついているのでわかりやすい。開場したらサーモグラフィーの前を通っていつものように入場です。ピンバッジはコイントレーの上に置かれます。ゲートの前にアルコールが置いてありました。

球場内の装飾や試合前の演出は特筆することもなく、多少内容は変わっているけれどほとんどいつも通りかな。選手を送り出すときにフレップとポリーがいないのが少し寂しかった。


本題の試合中の話ですが、驚くほど静かです。もちろんストライクをとったとき、アウトをとったとき、そして札幌ドーム恒例の3ボールになったときの拍手はあります。ただ審判がプレーをかけてから投手が投げ打者が選ぶまたは打つまでは水を打ったように静かで、選手たちの声も無観客試合をテレビで見ていたときと同じようによく聞こえました。

攻撃時もそれは同じ。選手が打席に入るとき、ボールを選んだとき、ヒットを打ったとき、粘っているとき。観客は惜しみない拍手を送ります。ただ投球動作に入るとそれはピタッと止まり、決してプレーの邪魔はしません。打球音や捕球音は勿論、選手が足で土をかく音が鮮明に聞こえて鳥肌が立ったほど。

ガイドラインでは大声での応援は禁止されていますが、普通の声量での応援や会話自体は禁じられていません。ただそれすらも憚られる雰囲気で、ヒソヒソ話を選択する観客が多かったように思います。普通の声量でも周りに響いてしまうような環境でした。

声というのはどうしても漏れてしまうものです、特に試合が動くようなときには。けれどずっと声を抑える意識をしていれば、悔しいとき、盛り上がるときに出る声は普通の声量で済む。最初から普通の声量で過ごしていたら、不意に出る声は大きくなってしまう。そういうものなんじゃないかと考えさせられる3時間でした。


4019人がそれぞれ意識し続けていたから成立したあの世界、それはあの場にいた人間全員が誇れるもの。緊張感はありましたが、終わってみれば心地よい緊張感でした。「静かにする」ということは1人なら簡単でも、10人、100人と増えるごとにどんどん難しくなっていきます。あの静けさを壊さないよう4019人が努めたというのは決して簡単なことではなく、単純に大きな声を出す以上の気持ちを、エールを選手たちに伝えられたのではないでしょうか。少なくとも栗山監督は感じ入ってくれたんじゃないかな。プロ野球というのは確かに選手とファン両方で創り上げていくものだな、と実感しました。

二万人入るようになると状況はまた違ってくると思います。今だからできる体験かもしれません。今日この日、この体験ができてよかったと心から思います。

明日以降も同じような世界で選手たちにエールを送ることができますように。


余談ですが杉谷選手が代打で登場し凡退したあと周囲で少しの間笑いが溢れるシーンがありました。場の雰囲気を変える、それが杉谷拳士が「杉谷拳士」であるという証ですね。


追記

この書き方だとプレー中に音があると邪魔という風にも読み取れてしまうなと思ったのですがそうではなく、球団や応援団主導で統制された手拍子がある、などもとてもいいと思ってます。ただ現状無法地帯のようになるリスクを考えれば全員の意識の上で成り立つあの静けさは本当に素晴らしい成果だな、という話です。

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