中目黒にて、少年と相合傘をした

数年前まで、中目黒で髪を切っていた。それまでは代官山のサロンに行っていたのだが、担当してくれていた美容師さんがある日「私ここ辞めるんだ。今度は中目黒でひっそりとやるから、今度からはよかったらそっちに来て」と伝えてきたので、次回からは中目黒に行くことになった。

その日はちょうど今のような季節で、雨が降っていた。メールで案内された住所を目指して、初めて降りた中目黒駅からの大通りを傘を差しながら歩いていると、数メートル先に制服を着た小学生の男の子が一人で傘も差さずに、うつむき加減で歩いているのを見つけた。

歩く足を少し早めてその子に追いつき、傘へ入れてあげようとすると、「大丈夫です」と言われた。一応小さな子供と大人の男という関係ではあるし、離れた方がいいのか?と思ったが、その子もあまり不審がる様子ではなかったので、そのまま無言で一緒に歩くことにした。

2,3分歩いた曲がり角で、「ありがとうございました」と頭を下げてその子が去ろうとしたので、「これ、あげるよ」と言って差していた傘をあげた。すぐ近くにあったコンビニで新しい傘を買って、僕は美容院へと向かった。

中目黒で、制服がある小学校の子だから、けっこういい家の子なのかもしれない。よく分からない人に汚い傘をもらって帰ってきた子どもに親はどんな声をかけただろう。

それからも、雨の中傘を差さずに歩いている人を見かけることがある。が、傘の中へ入れてあげたのはこの時だけだ。

傘を差さずに一人で歩く人を見ていると、傘の中へ入れてあげたくなる。だけど、不審がられるのではないか、時間がない、といった理由で、行動に移すことができない。

あの時はなぜ行動に移すことができたのだろう。もしかしたら、初めて来た中目黒の街で、少しかっこつけたくなったせいかもしれない。

何度か中目黒には髪を切りに行ったが、美容師さんが産休に入ってからはどこで髪を切っていいかわからなくなり、半ば自暴自棄になって赤羽のQB HOUSEへ髪を切りに行った。「普段はマッシュみたいな感じです」と言ったのが悪かったのか、50年前の散髪の教科書に書いてあるマッシュルーム・ヘアーといった感じのひどい髪型にされた。マッシュルームというよりえのきみたいな形だった。お金があまりなかったので、また髪が伸びた時にも同じQB HOUSEに行ったが、その時も違う人にひどい髪型にされた。

今は違うちゃんとしたところに通っているのですが、そういう時期があったことから、この団体・ハモネザで活動するときにはQBQという名前がつくことになりました。QBQといいます。よろしくお願いします。

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