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感情が読めない男と・吉祥寺

2018年秋、1人の男の子と付き合っていた。
感性と見た目が好みだったので、一緒にシーシャを吸った帰り道に勢いで付き合って欲しいと告げたら付き合えることになった。
お互い文章を書く人間で、そこも好きだった。彼のブログは周りくどく難しいねちっこい言葉でカルチャーだったり男とか女とかに言及していたりしたけど、そういうところも好きだった。
吉祥寺に住んでいて、当時江古田に住んでいたわたしはちょいちょい彼の家に突撃するようになっていった。お風呂から上がったあと髪を乾かしてあげたり、一緒に夜の井の頭公園を散歩したり、信じるか信じないかの都市伝説のYouTubeを見たりしてワイワイしたりしていた。その人が通っていた吉祥寺にある大学とわたしが通っていた大学が提携を結んでいて、登録すると図書館を使えたりするのでわざわざ登録してその人の大学図書館を使って本を借りたりしていた。
3ヶ月くらい経った頃に別れを告げられ、悲しかったけどこの人はわたしのことを好きではないんだろうともうすうす思っていたから納得したりもした。付き合っていた約3ヶ月、通っていたのが吉祥寺だ。

吉祥寺という街はとにかくおしゃれという謎のイメージが上京する前にはあったが、上京してからは普通の街になっていった。別に街地自体がおしゃれなわけではないのだ。ただ、こじゃれた店が有名なだけだ。吉祥寺に住んでいた彼は「小さい地方都市」と形容していて、確かにその感覚はよくわかると感じた。有名なしゃれた店以外は、ほとんど住宅地だったりチェーン店が多い。しかも有名なしゃれた店も少ししかない。少しの店舗に行列が生まれているような、そんな街だ。

井の頭公園にはアコースティックギターで弾き語りをする若者がいて、駅前のタピオカ屋でタピオカを飲む若者がいて、チーズが有名なチェーン店に並んで、こじゃれた居酒屋で一杯飲む、そんなありふれている街であるのに、吉祥寺はなぜか他の街と一線を引いている。なぜ一線が引かれているのかはわからないが、それは吉祥寺という街を「住みたい街ランキング1位」に仕立て上げた東京都民のせいでもあるだろう。ランキングに日本人は弱い。

その彼とは別れた一年後に吉祥寺でTinderをしていたら偶然見つけてマッチしてしまい、また連絡を取るようになった。今ではTwitterでなんとなくお互いイイネをつけるだけだ。彼と出会っていなければ、吉祥寺にたくさん通うこともなかったであろうと思うと、この記事を書けているのも彼のおかげなのかもしれない。そんな街。

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