カラクリヌード

『カラクリヌード』
韓国釜山公演版2016/3/26
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<演劇台本>
・許可なく上演コピー配布することを禁じます。
・許可については別記
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上演時間70分予定

●衣装・メイク
さまざまな人物、無機物になるため黒い正装をする。メイク、無機質な色。
●小道具
劇中でホットバッジと呼ばれる発光体のみ
●舞台
素舞台。イメージを感化させるため余計なものは無い。
舞台のサイドに役者の待機場所がある。役者溜まり、もしくはポケットと呼ぶ。

00■客入れ中
舞台中央に立て看板がある。
「人間の皆様へ(一部機械を装備されている方も含む)
携帯電話はロボ動作に悪影響を与える恐れあり。
場内では携帯電話OFFのご協力をお願いいたします。工場長」
モグラたち、ポケットに現れ、暗。

01■レアメタル採掘工場モグラ諸君

作業開始音「ジリジリジリジリリリリリリリリリリ!」

 立ち上がり、モグラたち配置につく。工場長話し出す。

工場長「気ょーつけーい。礼。互いに拍手」

 なぜか、互いに拍手する。

工場長「地下6000メートルレアメタル採掘工場モグラ諸君。ニッポン帝国のロボット輸出量は世界一であり、いー」

 モグラの一人、耳打ちとともに、なにか紙を渡す。

工場長「アジア戦線への中古ロボットの輸出。製造番号9434エプソン・インクジェット。1105ヒタチ・エアーコンディショナー君。2033年9月8日付。おめでとう」

 1105ヒタチ・エアーコンディショナー、戦地へと旅立つためロボットらしい動きで登場

工場長「君ヒタチ君?」
モペラ「エアーコンディショナーです」

 1105ヒタチ・エアーコンディショナー退場、別のロボットとして配列に戻る。

工場長「エプソン君は?」
モグラ1「昨日落盤で埋まりました」
工場長「合掌」
モグラたち「ちーん(日本人的に正座をし、手を合わせる)」
工場長「安全唱和」
全員「天井ヨーシ、落盤ナーシ、今日も元気に掘りましょー」
工場長「働けー!疑問を持つなー!ひたすら働けー」

 モクラたち仕事を始める。

モグラたち「ぅガッチャンコン、ぅガッチャンコン!ぅガッチャンコン、ぅガッチャン、、」

 徐々に暗。

02■リコの夢

 暗。リコの声がする。アサコの日記を読んでいる。

リコ(声「ママの日記」

 アサコの声がする。

アサコ(声「また戦争が起きて、ニッポンは中古ロボットを戦場に輸出して金儲け」
リコ(声「金持ちは地上6000メートル超高層ビル『空のクジラ』にひきこもり
 貧乏人は採掘用に改造されたロボットたちと地下で鉄探し。鉄のモグラ」

 音楽が聞こえる。

アサコ(声「リコ。想像できる?地球上にたった一人、
 運命の人に出会った時の、あたしの、あの時の感動、、」

リコ「わたしの夢」

 しだいに、互いに交信しはじめるモグラのホットバッジの明かり

モグラたち(口々に)「ハロー、ハロー、ハロー、ハロー、ハロー」
モグラ1「こちら地面より下」
モグラ2「地中6000メートル、鉄のモグラ」
リコ「こちら地上6000メートル、超高層ビル、空のクジラ、リコ」
全員「リコ」
リコ「王子様の名前が思い出せないの。
 あたしをここから連れ出してくれるはずなのに」

 モグラのホットバッジ消える。

権藤(声「おい!黙らせろ」

 テンコ登場

リコ「(狂ったように吠える)聞こえる?!足音!
テンコ「リコ!(リコ、肩を押さえられる)」
リコ「あたしのため大勢引き連れて!ザッザッザ!」
リコ「(テンコを振りほどく)ここから出して!

 その拍子にリコのホットバッジが落ちる

テンコ「ごめんね!(テンコ注射器を振り上げる)」
リコ「(ホットバッジに手をのばし)あたしのホットバッジ!!」
権藤(声「早く忘れさせろぉ!

 テンコ注射器を振り下ろす

 戦場音がする

戦場「ズダダダダダダドガガガガガガバババババ!!」

 向こうからゼロスケが歩いてくる。ホットバッジを拾う。

ゼロスケ「リコ!」

部品たちの群唱
 「12000メートルの彼方、君へ。
 僕の計算では地球と月と太陽が一直線に重なる日。
 この角度!この場所からこの強さ。
 ほんの一分、星の位置が味方して、
 僕は君の声が聞けるはずだから」

ゼロスケ「僕はどうかしているんだと思います!僕はたまたま、君に会ったその瞬間!
 偶然何かのウィルスにやられて、頭の回路がおかしくなったんだと思うんです!
 だってまるで意味がないから!人間はこれを「機械が壊れた」って言うんです!」
兵士たち「ズダダダダダダドガガガガガガバババババ!!」
(ホットバッジ点灯めちゃくちゃに振り回しながら兵士たち走り回る。残像。)
ゼロスケ「リコ!(一瞬倒れるゼロスケ、バタン!兵士たちのホットバッジ消え、静まる)

ホットバッジを大事そうに手で覆い、ゆっくりと立ち上がるゼロスケ。

ゼロスケ「だけど僕はゼッタイに壊れません。人間だってロボットだって!
 僕を壊そうとするやつらは全部殺しているんです!(姿無き敵と戦うゼロスケ)」
群唱「遠い遠い空の下、外国のどこか知らない土地で」
ゼロスケ「ズダダダダン!バババババン!ガガガガガガガ!」
群唱「僕は毎日、戦う、戦う、戦う」
ゼロスケ「敵の残骸から部品を奪うんです!弱い所を強くするんです!」
身体「僕は君のため。(周囲からロボットたち、しだいにゼロスケに吸収される)」
ゼロスケ「記憶装置を強い合板でカバーしなくちゃいけません!君の記憶が大事ですから!」
身体「僕は君のため」
ゼロスケ「右手は取り外しが可能にして、中にはコバルト合金や削岩機!
 左手は独立モーターとバッテリーを増設したぶん太くなり」
身体「僕には、」
ゼロスケ「左肩の位置がかなり上に来て、不格好になりました!」
身体「わからないことがある(立ち止まる)」
ゼロスケ「腰周りのでっぱりの中には銃器、背中には着脱可能防護シールド
 足はキャタピラをやめて二足歩行に切り替えました!
 (ゼロスケ大きくなる)僕は随分強くなりました!」
身体「ひとつだけ」
ゼロスケ「ひとつだけわからないことがあります!」
身体「この気持ち」
ゼロスケ「この気持ちを守るには、一体身体のどの部分を守ればいいんでしょうか!」
身体「ズガガガガガガガガガッガガガ(再び戦いながら進む)
 ズガガガガ!ドガッガガガガガガガガ!」
ゼロスケ「僕はあの場所へ戻ります!(止まる)」
身体「12000メートルの彼方、君へ」
ゼロスケ「僕は君のため」
身体「地球と月と太陽が一直線に重なる日」
ゼロスケ「僕はゼッタイに壊れません」
身体「この角度。この場所からこの強さ」
ゼロスケ「あの場所へ」
身体「ハローハロー」
ゼロスケ「そうして必ず、君のいる場所を見つけるから!」
身体「ハロー、ハロー、ハロー」
ゼロスケ「聞こえる?リコ!
身体「(大きな爆発で、身体がふっとぶ)ドゴオオオオオオオンン!!」

 舞台奥にリコがいる。

リコ「!!、、、思い出した!、、『ゼロスケ』!、、ゼロスケ!ゼロスケ!」

 テンコ注射器を構える

テンコ「ごめんね」
リコ「ゼロスケ!!」

リコの肩に打つ

03■権藤、夢見

 クスリを打たれたリコ、従順になり、ぼやっと、何かを読みはじめる。

 権藤実篤、登場。

権藤「ホログラム停止!」
テンコ「みゅよん(停止音)」

 音楽止まる。リコ止まる。
 テンコ、ホログラムを離れて動き出す。

権藤「鍵かけとけ。外に出すな。薬増やせ」
テンコ「脳に障害が出る恐れが」
権藤「バカになった方いいよ。
 幸せな生活とか人生の意味とか考えるカシコイ脳みそが元凶なんだから」
テンコ「、、、」
権藤「あ。俺の事嫌ってる?ただでさえ国民の皆さんから嫌われてんだから俺。
 俺が『中古ロボット世界輸出政策』打ち出して頭下げてなきゃもうニッポン終わってんのによ?
 俺職場でなんて呼ばれてっか知ってる?」
テンコ「『武器屋』」
権藤「ドラクエかってな。総理大臣だ!
 (気落ち)でももう兵隊作る鉄がねぇ」
テンコ「人間の軍隊を」
権藤「ニッポン人が戦うか」

 権藤、ホログラムのリコをぎこちなく抱く。

権藤「どう?愛し合ってる感じ?」
テンコ「ええ」
権藤「(キレた)消せ!!!!!」
リコ「みゅよん(OFF音)」

 リコ退場

権藤「早くその『ゼロスケ』っての探せ!」
テンコ「検索結果。零助さん88歳、長谷川ゼロ助ちゃん満1歳、Mr. JEROニモ Sky」
権藤「徴兵徴兵!」
テンコ「北海道札幌市中央区田中ジェロ助25歳」
権藤「ホログラム!」
カメラ音「カッシャー!」

 田中、みにくく笑っている。

権藤「こいつではない気がする」
テンコ「私もそう思います」
田中「ホっ」
権藤「死刑!」
田中「ええ?!」

 ポケットから兵士が現れ、田中を連れて行く。

権藤「テンコ」
テンコ「はい」
権藤「地下から戻ってからおかしいぞ?」
テンコ「すみません」
権藤「『推定120歳ツギハギじーさん』は?」
テンコ「柏木博士は研究室に」
権藤「あれが義理のおじーちゃんだと思うと、吐き気がする」
テンコ「部屋ごとつなぎます」
権藤「ホログラムオン」

04■クローンの柏木

研究室の音「むぅぅぅぅぅぅぅぅん」

 柏木博士と、少し離れた場所に右手。

博士「クローンストックから切り取ったら言うこときかねんだ!手!」
権藤「いずれ脳みそも取り替えないといけませんねおじーちゃん」
博士「ああ!(左手も逃げ出す)ああ!!(手、また逃げ出す)あ!あああ!ああ!ああう!」
権藤「おじーちゃん!」
研究室の音「むぅぅぅぅぅぅぅぅん」

 音楽がかかる。右手、左手、指揮をする。

博士「音楽はいい。創造力の賜物だ」
権藤「アレの大量生産の許可をお願いします。
 遺伝子工学最高権威のご決断でニッポンはまた生きながらえる」
博士「生きながらえてなんになる」
権藤「各国の静止衛星はこの超高層ビルに向けられています。
 地上6000メートル最上階大統領官邸には、あなたのお孫さんがいる」
博士「おまえ、わしに近づくのが目的で、かわいいリコと一緒になったのか」
権藤「とんでもありません(にやにや)」
博士「『6QD最新型』の大量生産を許可する」
権藤「は!」

 ザッと部下たち、動き出す。

権藤「お祝いに月見でもしますか。超高層ビルの屋上で」
博士「明日は皆既月食だ」

 どんどん製造されていく6QDX型サイバネティックロボットたち

工場音「ガチャン、バチン、ウィーン、ビター。ジュウジュウ。ぶーーん」

 権藤いなくなる。

 テンコ思いきりじだんだを踏む。気を取り直し、鉄格子に手をかけ窓の外を見る。

テンコ「、、、ゼロスケ」

05■タネとの出逢い

 クローン集団が歌いながら最上階に進入中。

テンコ「?」

 <歌詞>
  本当はこんなことなんてやってる暇は無い
  本当のボクじゃない こんなのボクじゃない
  神様どうかボクだけをみててよ
  いつでもそばに居てあげるからー♪

タネ「あたしたちクローン人間の失敗作が見つかったら大変だ」
 じゃ、練習、ふせてって言ったらふせて。いい?ふせて!
妹たち「(ぼーっとしてる)」
タネ「(立ち上がり)」
妹たち「???」
タネ「ふせるっていうのは、こう。(タネ、ふせる)」
妹たち「あああああ(なっとく)」
タネ「そこの狭いとこ通れば、リコの部屋だから。行って。くれぐれも、ニッポン人っぽく」

 妹たち、ニッポン人っぽいことを言いながら、狭い通路をむりくり通って行く。

妹1「ニンジャ」
妹2「パチンコ」
妹3「ドーモすいません」
タネ「そう!その調子」
テンコ「リコの知り合い?」
タネ「うん。研究室逃げ出した時にかくまってくれたの。わあ!見つかった。ふせてええええええ!」

 タネだけふせる

妹たち「?(対応不能)」
タネ「え?あ、じゃ逃げてーー!!」
妹たち「あははああああ(楽しく逃げる、すぐ飽きる)」
タネ「もー煮るでも焼くでも好きにしやがれ」
テンコ「あ、あたしそういう権限ないし」
タネ「マジで?妹たちのこともチクらない?」
テンコ「妹?」
タネ「あたしたち、同じDNAを持ったクローンなの」
テンコ「似てないね」
タネ「失敗作で捨てられて、生ゴミ食って生きてんの。
 あの子たち1歳。あたし2歳。大人。
 だいたい3歳で死ぬから生き急いでんの。
 (妹たちに)帰りはダストシュートで三々五々。くれぐれも、ニッポン人ぽく」
妹たち「タッチョ!(世界の国の人っぽく退場)」

 子供たち退場。

タネ「リコの知り合い?これ渡してくんない?(日記)貸本やってんの。食べ物と交換」
テンコ「あ、ホログラム日記だ」
タネ「ゴミの中から掘り出すの。あ、それ日記なんだ」
テンコ「ひらがな読めないの?」
タネ「読めないよ。悪い?バカにする気?喧嘩する?」
テンコ「あたしテンコ」
タネ「あたしタネ」
テンコ「タネ。へんな名前」
タネ「喧嘩する?」

06■空のクジラのリコ

 暗の中、モグラたちのささやき声が聞こえる。

モグラたち「ハロー、ハロー、ハロー、ハロー、」

 ホットバッジの明かりが明滅する。皆、やる気がない。

1「ハロー、ハロー、こちら地面より下」
2「地下6000メートル、西のモグラ」
3「おーい。超高層ビル空のクジラよー」
4「地上6000メートルの眺めはどうだー」
5「返事なんてあるもんかよ」
6「向こうはぬくぬく空の上」
7「バッジの電波も届かねえ」
8「最近どーだ、何かあったか」
1「生まれてこの方、何かあったためしがねぇ」
2「生きてこの先、何があるわけでもねぇ」
3「いっそ徴兵にでも当たってよ」
4「死んじまった方がましかもなぁ」
5「毎日毎日働いて」
6「なんのために生きてんだか」
7「なんかオモシロい話はねーか?」
6「でかいモグラのウワサを聞いたか?」
7「なんだそれ。モグラのバケもんか。」
8「とにかくデカくてしぶといんだそうだ」
1「殺した敵を食って、でかくなってくってよ」
2「モグラなんぞとっくの昔に絶滅したぞ」
3「そーじゃねぇ、鉄で出来たモグラの話だ」
4「おれたちと一緒じゃんか」
5「おまえらはクズ鉄モグラだろ」
6「鉄?そいつも機械ってことか?」
7「殺戮兵器だ。戦場に出てる」
8「なんでも自分を自分で改造してく」
1「だけど肝心の鉄がねぇだろ」
2「地下にもねーんだ。どうやってデカくなる?」
3「それがあるんだよ。戦場には」
4「戦場のロボットの死体さ」
5「ロボットの残骸を喰らうのよ」
6「もうバケモンだなそりゃ」
7「外国の話だろ?」
8「他にねぇのか。つまらねぇ」

 リコのホットバッジの光、舞台奥からやってくる。ささやく

リコ「こちら超高層ビル『空のクジラ』」
7「上からなにか」
8「聞こえたような気がしたが」
1「そんなわけねえだろ」
全員「どーせ気のせいだ」

 モグラたちののホットバッジ消える。
 監禁部屋、孤独な場所にリコ

リコ「、、、こっちは地上6000メートル。
 向こうは地下6000メートル。届くわけない」

 リコ、ホットバッジを消し、あたりを見渡す。

リコ「壁、、、窓。空。、、鉄格子」

 鉄格子に手をかけ力を入れるが、すぐに諦めへたりこむ。

リコ「イライラする、、ああ、また忘れてる!あの人の名前」

 テンコ登場。

テンコ「お薬の時間」

 リコ、何かを聞く。

リコ「聞いて!音がする!!、、ざっざっざっざっ、、足音」
テンコ「リコ」

 ホットバッジをかざし走り回る。

リコ「ここだよ!おおおい!!雲の上!クジラのすみか!
 超高層ビルの最上階!!あたしを助ける王子さま!
 あの人が、大軍をひきつれて、ここじゃないどこかへ!
 、、、あの人の名前、、待って、、えーと」
テンコ「ごめん」

 テンコ注射を肩に打つ。リコ、ホットバッジを落とす。

リコ「あああもおおおおおお!ほら消えちゃった」

 注射器を抜く。リコ泣きだす。

リコ「もーー、痛いよー」

 リコ、テンコにすがる。テンコ、優しく抱きしめる。

リコ「友達なら助けてよー」
テンコ「ごめんね」
リコ「テンコ、あったかい」
テンコ「ほら、ちゃんとおやすみ」
リコ「日記は?」
テンコ「ベッドの上」

 素直に寝室へ向かうリコ。

テンコ「、、、、、(タメイキ)あ、ためいきなんてしちゃった」

 タネ登場。

タネ「あんたさぁ、なんか無理してない?」
テンコ「、、、別に」
権藤(声「テンコ!テンコこらあ」
タネ「(やば、やば!)」
テンコ「(隠れて!隠れて!)」

 権藤、ブランデーを持ってくる。

権藤「(ブランデー)これなーんだ」
テンコ「中トロ」
権藤「ブランデーっっっっ」
テンコ「何かご用はございますか?」
権藤「おい今日は皆既月食だZe。ロマンチックな、夜だNe」
テンコ「月食とは地球が太陽と月の間に入り一直線に並び、
 地球の影で月が欠けて見える現象。by ウィキペディア」
権藤「ブランデーポオオイ!(投げ捨てる)」

 抱きつく。

権藤「抵抗しないの?」
テンコ「、、、、」
権藤「なんだよつまんねぇ!泣け!わめけ!誰か助けてとか言え!

 タネ走ってくる、権藤をボコボコにする

権藤「誰か助けて」

 タネ風のように退場

権藤「なんだ?!だれだ!だれだ今の」
テンコ「おけがは?」
権藤「ふん!無えよ」

 タネと妹たち走ってくる、さらにボコボコにする

権藤「誰か助けて」

 タネたち風のように退場

権藤「ふえた!ふえた!ふえた」
テンコ「おけがは?」
権藤「ねぇよ!(ポケットの役者たち、立ち上がる)!あるよ」
役者「ちっ(舌打ち)」
権藤「舌打ち?」
テンコ「何かご用はございますか?」
権藤「うるせえ!(キョロキョロ)ばーか」

 権藤、足をひきづって、周囲を警戒しながら退場。

タネ「リコまた寸胴鍋みたいなロボットの絵かいてるよ。はらへったー」
テンコ「パン」
タネ「喰う!がつがつがつがつ」
テンコ「少し元気になるよ。タネちんといると」
タネ「げっぷ」
テンコ「タネって、変な名前だね」
タネ「試験管の中のあたしを柏木博士がタネって呼んでた。
 最初アサコだったんだけど」
テンコ「あ、アサコって、日記の人だ」
タネ「うそ?」
テンコ「その人のクローンなのかも」
タネ「がぜんやる気。問題問題」
テンコ「(指で『あ』『い』)」
タネ「ヒント」
テンコ「最初の二文字」
タネ「うーん」

 リコ、ふらふらと現れる。

タネ「なんで権藤なんかと一緒になったの?」
テンコ「光ったんだって、運命の人の証拠」
タネ「あーホットバッジかぁ」

 リコ、ふらふらと現れる。ずーっと、ホットバッジで電波を拾おうとがんばってる。

タネ「、、リコどんどんおかしくなってる気がすんだけど」
テンコ「クスリのせい。生きてくためには我慢しなくちゃ」
タネ「ヘンなの」
テンコ「これは?」テンコ「はい問題(『あ』『い』)」
タネ「最初の二文字」
テンコ「『あ』と『い』」
タネ「日本語って難しいな」
テンコ「がんばるね」
タネ「あと1年で死ぬからね」
テンコ「神様っていると思う?」
タネ「なんのために人間を作ったのかは、質問したい」
テンコ「、、、」

 テンコ、リコを見る。

テンコ「(タメイキ)」

 テンコ、また、夢見を思い出す

タネ「あんたさー。地下でなんかあったでしょ」
テンコ「、、、。」
タネ「ゼロスケって男の人の事知ってる?」
テンコ「人間は知らないけどロボットなら知ってる。
 地下6000メートル、鉄のモグラたちの中に居た」
モグラ声「ガッチャンコン、ガッチャンコン、ガッチャンコン」

 ゆっくりと場面が地下へと移る。暗。

07■地下のモグラたち

リコ「動かない!」

 リコ、ゼロスケの似顔絵を描いている。

 舞台上にリコ、ゼロスケの似顔絵を描いている様子。
 ゼロスケ、変な格好をさせられている。

リコ「変にかかれてもいいの?」
ゼロスケ「変な格好させないでください」
他の奴ら「ジリリリリリリリリリリ(役者ポケットの他のモグラ、働き始める。)」
リコ「あー」
ゼロスケ「ロボットの似顔絵なんて」
リコ「キュートよゼロスケ」
ゼロスケ「僕なんて旧式で人工皮膚も表情機能もないし胴体なんて寸胴鍋、手なんて20世紀のSFに出てきそうな」
リコ「キュートよ」
ゼロスケ「どこが?」
リコ「何もつかめない感じが」

 リコ退場。

ゼロスケ「あの人といると緊張するな。ロボットなのに」

 工場長、顔をだす。

工場長「ゼロスケ!スクラップぅ」
ゼロスケ「あ」
工場長「また来てたな空のクジラのお絵描き女。チューした?」
ゼロスケ「人間とロボットですから」
工場長「強がってるようにしか聞こえないぞ」
ゼロスケ「結婚するんですよ彼女。ホットバッジが光ったんです」
工場長「相手は?」
ゼロスケ「公務員」
工場長「手堅いねぇー!お前の恋も終わったな」
ゼロスケ「彼女が幸せになるんですから」
工場長「複雑だなぁ考えるポンコツロボは。(背中を叩く)
ゼロスケ「いて」
工場長「けっ。ロボットのくせに。働け」
ゼロスケ「えー」
工場長「他の奴ら見習えよ」
他の奴ら「(働いている)ガッチャンコン、ガッチャンコン、ガッチャンコン」
工場長「あやって年がら年中働いてんだよ?」
ゼロスケ「どーも僕は向いてない」
工場長「ろくでもねぇ」
ゼロスケ「僕の型番6Qデ-ゼロは『ろくでナシ』から来てます」
工場長「ほらポンコツエンジンもじゅーぶん冷えたろ」
ゼロスケ「この辺(胸のあたり)がまだ少し熱いんです」
工場長「やっぱ恋!?うひひひ」
クロスケ「みにくい」
工場長「よけーな事言ってないでもぐれ!」
ゼロスケ「余計な事を言う機能が売りでかなり売れたんですよ?」
工場長「余計な事言ってみろ」
ゼロスケ「じゃ、落語を(正座する)」
工場長「よっ」
ゼロスケ「『毒ヘビのだんな震えてますぜ?』『(震えて)さっき舌かんじまって』」
工場長「うまいもんだ」
ゼロスケ「工場長、まだ童貞ですか」
工場長「余計だなぁ」
ゼロスケ「魅力的な女性が通りかかればいいのに都合よく」
工場長「魅力的な女性が通りかかるもんかよ都合よく」

 魅力的な女(男)が通る。

魅力「ドゥドゥッピドゥ!ドゥドゥッピドゥ!」
工場長「魅力的な女性だ!」
ゼロスケ「これ?」

 ゼロスケを奥の役者ポケットにケリ落とす。

魅力「あらどうもぉ」
工場長「お務めはどちらで?」
魅力「ゴキブリの捕獲と選別と繁殖をしてますの」
ゼロスケ「うえー」
工場長「構いませんか?ホットバッジ」
魅力「構わなくてよ?ホットバッジ」

 2人、ホットバッジを近付ける。

2人「、、、、」

ホットバッジ無反応。

工場長「ご縁がなかったということで」
魅力「ドゥドゥッピドゥ!ドゥドゥッピドゥ!」

 魅力的な女、退場。

ゼロスケ「もうなんでもいいんですね」
工場長「運命のひとを探しているだけだ」
ゼロスケ「ホットバッジで?」
工場長「国から支給されてるありがたいバッジだぞ?俺のDNA情報が入ってる。
 通信機能内蔵。性別、姓名判断、果てはセックスの相性まで計算してくれる。」
ゼロスケ「それが運命の相手探し出してくれるまで童貞ですか」
工場長「俺45だ」
ゼロスケ「残念です」
工場長「余計なこと言ってねぇで働け!来い!」
ゼロスケ「なんで僕ら、クビになると困るんですか?」
工場長「あ?」
ゼロスケ「なんで働かないと、困るんですかね?」
工場長「しらねぇーよ」

 工場長、採掘場に降りていく。
 
ゼロスケ「ホットバッジかあ。ちょっと欲しいな」

 雲の上のリコを見る。

08■地下レアメタル採掘場

 地下採掘工場。モグラたちの声がしてくる。

モグラたち「ガチャコンガチャコン」

 うたである。

ロボ12「くる日もくる日も穴ほりだぁ~」
ロボ34「掘っても掘っても何もねぇ~」
ロボ4人「アルミリチウムニッケルチタン」
ロボ4人「タリウムコバルトパラジウム」
ロボ4人「さっさと掘り出せレアメタル」
ロボ4人「人間様の頼みとあらば、ス!わしら火の中水の中」
ロボ4人「何をおっしゃるウサギさん、あんたがいるからボクがいる」
全員「一心同体モーマンタイ、死ぬときゃ一緒に共倒れー」

 工場長

工場長「頭の悪い唄を歌ってんじゃない!」
ロボ1「だどもォこうでもしねばあっしら力がでねんちょ!」
工場長「なまるな!」
全員「はいっうんこ味ーのカレーがまだいいなー♪」
工場長「そんなんだから『クズ鉄モグラ』とバカにされんだ!」
ロボ1「最近はレアメタルも取れやしねぇ」
工場長「それを探すのがお前等の仕事だろ」
ロボ2「ねーもんはねーだよ」
工場長「変な顔禁止」
ロボ4「僕はほれましぇん!!」
工場長「変な顔禁止」
ロボ6「あっしの旧式のセンサーですら空っぽなのがわかりまさ」
工場長「それでも掘るんだよ」
ロボ7「なぜでげしょ?」
工場長「好きだから!仕事が!(出ていこうとする)」
ロボ8「う~~ん」
全員「好き好きぃいい」
ロボ9「どこに行くんで?」
工場長「上だ」

09■上会議

8人「カタタ、カタタタ」

 上の管理者たちとのホログラム会議

工場長「鉄が、もう無いんです」
咲坂「ハイ」
上1「(咲坂手を上げる)
全員「ハイ、咲坂くん」
工場長「咲坂?」
咲坂「労働とは人間にとって有用で価値のあるものを創り出す行為です」
工場長「はぁ。
咲坂「人型の機械を含め、自律した動作をする道具などを広く指す用語がロボット」
工場長「おれたちは道具かよ」
8人「ん?(覗く)」
工場長「いえ、ゴホン」
咲坂「どこからをロボット、どこまでを機械とするかは、、」
工場長「言っている事がよくわからんのですがー」
上1「まぁ考えないことだ」
上2「なんのために働くのか、なんて、随分と哲学的な命題だよねえ」
上3「そうそう、君のとこにまた一人、増員だ」
上4「女だよ」
工場長「女?」
全員「じゃあ(挨拶の手)(立ち上がり)ホログラムオフ。ぷしゅん。

 上のホログラム消える

10■サキ

咲坂「モグラに堕ちてたかゴロウちゃん」
工場長「誰のせいだと思ってんだ」

 タネと同じ顔の助手登場。手に赤ん坊らしきものを持ってる。

助手「ご苦労さまです」
咲坂「助手のナイン」
工場長「あれ?どっかで見たような」
助手「会うのは初めてです。お茶かコーヒーお飲みになります?」
工場長「えっと、あの、えーと」
咲坂「その人昔、傭兵やっててね、他人の戦争で下腹部をふっとばされて
 ロボットの残骸をテキトーに移植したんだ。軍医だった私が」
工場長「つまり、胃が無いんで」
助手「何を飲みます?」
工場長「エナジードリンクを」
助手「ロボットと一緒」
工場長「人間は専門外だろ」
咲坂「その後問題ある?」
工場長「おかげで女も抱けねぇ」
咲坂「似たような棒をつけてやったろ」
工場長「あんなんじゃない!」
助手「まぁ、どんな?」
工場長「なんか、こんな、へんな」
助手「(変なリアクション)アンニョン」
工場長「?!」
咲坂「戻ったらロボット大国になっててびっくりしたろ?」
工場長「身体の60%が機械の俺は、おかげさんでモグラのボスだよ」
咲坂「恨んでる?」
助手「(変なリアクション)アンニョン」

 助手退場

工場長「あんにょん?」
咲坂「微妙な結論に対するリアクションに難ありだ(メモ)何語だろう?」
工場長「え?」
咲坂「あ、ロボットだから。D9(Dナイン)。完成したばかり」
工場長「赤ん坊持ってたぞ?」
咲坂「ミニチュアロボットだってさ」
工場長「まるで人間だなぁ」
咲坂「高性能ダッチワイフだ」
工場長「ダッチワイフ?!」
咲坂「なかなか高性能だよ」
工場長「へぇ、へえぇ」
咲坂「6Q-D9はフルメタルバージョン。豪勢に使ったんだ、鉄。最後だから」
工場長「最後?」
咲坂「まーね」
工場長「あ、じゃあロクデナシもお前作ったの?6Q-D、ゼロ」
咲坂「おまえんとこいるの?」
工場長「うん」
咲坂「あれ売れなかったんだぁ~~」

 ゼロスケからの着信。

ゼロスケ「ぷるるるる、ぷるるるる」

 ゼロスケ登場。耳に手を当ててる。

工場長「なんだウソつき」
ゼロスケ「あのー。ちょっと問題が。聞こえます?」

地下のロボたち「ピーギョロピーギョロギョロぶつぶつ」

工場長「すぐ行くわ!(駆け出す)」
助手「(すれ違う)」
工場長「あ。」
助手「はい?」
工場長「誰に似てるかわかった。死んだ奥さんだ。(咲坂に)写真持ち歩いてたもんな。戦場で」

 工場長退場。

助手「私は奥さんの代わりですか?」

11■咲坂の回想。

SE「むうううううん」
博士「非常に不愉快だ」

 過去になる。
 助手、作りかけの動かないダッチワイフに変わる。
 咲坂、まだ赤ん坊のリコを抱いている。

博士「ロボット工学の第一人者としての貴様は認める。
 その作りかけのダッチワイフを持って、好きな所へ行け」

 博士、赤ん坊のリコをうばいとる。

咲坂「お父さん」
博士「私が育てる」
咲坂「、、、、それでリコは幸せになれますか」

 ダッチワイフを蹴倒す。

博士「アサコの死は、君の責任では無かったのかもしれん。
 しかし最愛の娘を失ったこの胸の穴は埋められん」

 博士退場する。咲坂、ダッチワイフを直しながら話しかける。

咲坂「子供が出来た事すら気付かなかった。アサコはリコを産んで死んだ。
 死んでやっと気付いたよ。私は、妻を愛していた。そうして僕は君を作っている」

 咲坂、ロボットを完成させる。
 じょじょに立ち上がるダッチワイフ。

 現在に戻る。
 ナイン、赤ん坊を抱く。

咲坂「もう、20年も前の話だ」
助手「何かご用はございますか」
咲坂「もうない」
助手「、、」
咲坂「君を完成させることが私の生き甲斐だったんだ」
助手「そうですか」
咲坂「、、赤ん坊を持って、どこへでも好きな所に行くといい。誰かの代わりなんて、君も不愉快だろう」
助手「、、、」

 助手、研究室を出てく。

咲坂「、、、、」

 一人になる咲坂。

 間

 しばらくして助手、エナジードリンクを持って戻ってくる。
 咲坂のとなりに座り、赤ん坊をあやす。

助手「エナジードリンク、この子にあげる事にします」

 助手、となりで赤ん坊をあやす。

助手「何かご用はございますか?」
咲坂「じゃあ、話を」
助手「いくらでも」
咲坂「、、、あの子が結婚するそうだよ」

 助手、赤ん坊をあやす。咲坂、それを見ている。

12■テンコと夢見

ロボたち「ぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつ」

 たくさんのロボットが誤作動を起こしながら交差する。
 ひどく適当な事をつぶやいている。

ロボたち「ぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつ」

 昔の夢見、カメラを手に登場

夢見「すいません、ほんっとすいません、あのー」

 ゼロスケ、工場長登場

ゼロスケ「工場長こっち」
夢見「あのー」
工場長「おい止まれ!」

 前を通りかかった一体のロボットに手をかけるが、持ってかれる。

工場長「あーあーあーあーわーわー」
ゼロスケ「危険ですよ」
夢見「どしたんですか」
ゼロスケ「なんか誤作動を起こして」

 皆、めちゃくちゃに動く

工場長「なんかしゃべってるし」
ゼロスケ「例えばこいつは」
そのロボ「『辛くておいしい』」
ゼロスケ「とか言ってます」
工場長「どうにかならんか」
夢見「あのー」
工場長「いそがしんだよ!」

 テンコ登場。前舞台の一体の首を押す。

テンコ「やあ!たぁあ!」
ロボ「うぷは!うううん」
3人「と、止まった!」

 何かスイッチがあるらしい。

ゼロスケ「うぷはって言った」
テンコ「壮大な音楽!!」

 ジョンウィリアムやディズニーなどの壮大な音楽。ロボットの動き、壮大な音楽に合う。

工場長「君は一体!?」
テンコ「今日から地下に配属になりました野々山テンコよ!」
夢見「うきょきょ!!(なんか興奮してる)」
ゼロスケ「?」
テンコ「ここはあたしにぃ!むぁかせてちょうだい(見栄切り)!!」
夢見「かっこいい~~!!」

 音楽が上がる。テンコまず余計に舞台を駆け回る。一生懸命ロボットを追う。

テンコ「やあ!たぁあ」
ロボ「たば!うううん」
夢見「パシャー!!」
テンコ「やあ!たぁあ」
ロボ「たば!うううん」
夢見「パシャー!!」

 繰り返し。止まったロボはすぐに復活するから時間がかかるわりに進まないし、疲れる。

ゼロスケ「結構かかりますね。」
工場長「うん」

 本当に疲れ切るまで行われる

テンコ「はー、はー、はー。ぜぇぜぇ、、はい、音楽止めて」

 音楽が消える。

テンコ「おまえ、水。早く(夢見に)」
夢見「わん!!」

 夢見、取りに行く。

ゼロスケ「犬」
テンコ「はー、歳だ。早いとここんなコト(演劇)やめて、
 21世紀初頭に一瞬流行った『結婚活動』しよう。おい、水!殺す気?!3,2,1,」

 夢見、猛スピードで

夢見「ハイ!」
テンコ「おそいから。そんなんじゃやってけないから」
工場長「態度でかいな」
テンコ「(マンガ)『進撃の巨人2』」
ゼロスケ「まんが読んでる」
テンコ「小人編開始」
夢見「(腹かかえて笑ってる)」
ゼロスケ「あ、ウケてる」
工場長「で、君なんなの?」
夢見「愛と芸術を求め、地下を放浪しておりますキャメラマン!夢見勘之助と申します!」
テンコ&工場長「キャメラマン」
夢見「ちょっと地下で迷いまして」
工場ゼロスケ「出口あっち。(テンコと逆の方を指さす)」
夢見「野々山テンコさんっ!!!!」
テンコ「はい?」
夢見「ファインダーごしにあなたを拝見いたしました!
 あなたが運命の相手に間違い無いと直感ビビビと感じました!」
テンコ「えっ(きゅん)」
ゼロスケ「まさかこれ」
工場長「90年代を境に姿をひそめたひとめぼれって奴じゃないか?!」
ロボたち「どよどよどよ」
夢見「この夢見勘之助!金も地位も何も無いチビた男でございやす!
 だけどおいらにゃ夢がある!一生かけて女を愛する一途な思いがここにある!
 男・夢見勘之助!己の生き方辞書引くような、みみちい男じゃござんせん!
 肩触れ合うたは何かの縁(えにし)!野々山テンコさん!!」
テンコ「ハイ!!」
全員「よぉ!!!」
夢見「ホットバッジお願いします!」
全員「どぉい!(コケる)よおお!どい!どおい!(コケ続ける)」
夢見「?」

 みな、ひとしきりコケる

工場長「よぉし。みんな、よくコケた。だいぶコケた」
ゼロスケ「結局ホットバッジ頼りですか?」
夢見「いちお!」
工場長「持ち場に戻れー。テンコくん、こっち」
夢見「ちょっとー!!!」
ゼロスケ「テレビつけちゃえ、ポチ」
夢見「あああああ!!」

13■ウィルス

 テレビの中の記者、飛び出す。

記者1「来たぞー!」
記者たち「パシャパシャパシャパシャパシャ!!(以下続く)」
テレ1「次のニュースでいっす!」
テレ2「アメリカ共和国で、新型ウィルスが発見されました!」
テレ1「ウィルスは、ウィルスでも!」
テレ12「コンピューター・ウィルスです!」
権藤「なんだばかやろう。」

 権藤登場。

テレ1「権藤長官に突撃しました!」
権藤「科学防衛庁長官、権藤実篤である!」
記1「突撃!」
記者たち「わあああああ(本当に突撃する)」

 権藤めちゃくちゃにされる。

記者たち「パシャパシャパシャパシャ!」
権藤「私が!次期総理大臣有力候補!ごん(どう)」
記2「突撃!」
記者たち「わあああああ(突撃する)」

 権藤もみくしゃにされる。

記者たち「パシャパシャパシャパシャ!
権藤「本気出したる!かかってこんかああ!」
記1「日本製ロボットへの影響は!」

 記者たち、突撃しながら質問する。

権藤「問題なし!

 ひらりとかわす。記者転がる。以下、記者5まで同じ。

記3「世界のロボはほぼニッポンからの輸出ですよねそうですよね(突撃)」
権藤「質問長い」
記4「サバ(Ça va)?(突撃)」
権藤「短い」
記5「タッチョ(닥쳐)!(突撃)」
権藤「シャラップ」
記6「ロボット市場はニッポンの独占状態ですが!(突撃)」
権藤「だからどうした」

 記者6、記者7に助けられる。以下、ダブル攻撃。

記者たち「おおお」
記6「そのウィルスは!(突撃)」
記7「ニッポンから発生したのでは!(突撃)」
記6「そもそもバグがあったとか!(突撃)」
記7「政府はどのような対応を(突撃)」

 すべてかわす権藤。

権藤「『様子をみる』」
記者たち「ざわざわざわざわ」
権藤「全世界に広がるという事態ならば、動かざるをえんがね!」

 記者6を立たせる。スポーツマンシップ。

記者たち「おーパシャ、パシャおー、パシャ」
記8「プルルルル、プルルルル」

 全員スマホ探す。

記9「もしもし?なぬ!?ソビエト?」
記1「ソ連でも発見されました」
権藤「え?」
記2「中華民国」
記3「大韓民国」
記4「ニッポン?」
記5「東京大阪?」
記6「いゆーにことかいてキミィ!!(突撃)」
権藤「なんでやねんっ(両肩を掴み、元気を出せという気持ちで)」
記者たち「ウィルスは、世界中に広がってますが?!(マイクをつきつける)」
権藤「、、、、、(持っていた記4を投げ捨て)うーーーーーん」
記者たち「この責任はいかに!」
権藤「あ、沢尻エリカ三世だ」
記者たち「どこどこどこどこだれだれだれ!」

 記者たち、沢尻エリカ三世めがけて突撃。

14■幸せ

 権藤の自宅で首つりの練習中。。リコがいる。

権藤「、、、、、、」
リコ「おかえりー!」
権藤「、、、」
リコ「おかえりー!」
権藤「、、、」
リコ「おかえりー!」
権藤「死ね!!!」
リコ「わあ」
権藤「ごめん、居たんだ!」
リコ「ごめん!忙しかった!失礼した!すまん!どろん!」
権藤「リコ!」
リコ「拙者、謁見のたよりも出さず忍びて参ったゆえ
まこと不意を打つとはこの事、あいすまなんだ、失敬失敬。(帰ろうとするリコ)」
権藤「(リコにすがる)コンピュータウィルスってなに!?」
リコ「インフルエンザみたいな?」
権藤「ニッポン製歩兵ロボット、インフルエンザ!!世界から返品の山!
 あいつらなんで風邪対策しねえの!」
リコ「歩兵ロボットには、人工知能が入ってないから」
権藤「ううううう」
リコ「自分で考えて予防するなんて出来ない」
権藤「俺政治家なだけでただのバカだ!」
リコ「ニッポンが輸出している歩兵はロボットの形をした『武器』なの」
権藤「考えるようにすりゃいーじゃん」
リコ「ロボット法第ゼロ条『ロボットは人をキズつけてはならない』」
権藤「うううううううううううううううう」
リコ「考えるロボットは、戦場には出られないよ」
権藤「そもそも向いてないんだー。俺の小学校んときのアダナ知ってる?『バカ』」
リコ「バカ?」
権藤「中学は『薬草』高校は『ゴールド』大学は『宿屋』ドラクエかってなぁあ~~!
リコ「薬草?」
権藤「つらくてつらくて俺1秒ごとにハゲてってんだろそーだろ?」
リコ「ちょっと待って」
権藤「いやだいやだいやだいやだ」

 リコ、台所へ行く。権藤、足にすがったままひきずられる。

リコ「だい、どころ、よっ、くっ、あった。ハイ!」
権藤「なにそれ?」
リコ「包丁!あたし今すげー幸せだ!」
権藤「包丁持って言うことじゃないよ!」
リコ「小さい時に誰かに言われたの!(振り回しまくり)
 (一瞬止まり)『リコは幸せにならなくちゃいけないよ』って
 (振り回しまくり)でも幸せってすげー難しくて!」
権藤「振り回さないルールにしよう!」
リコ「そんなん言われたら焦んじゃん?(向ける)でも焦ったら負け。一緒に死のう!」
権藤「何言ってんの!!」
リコ「あたし、幸せになれないくらいなら死んだ方がまし」
権藤「、、」
リコ「あたしたち結婚するんだから!あなたの焦りは、あたしたちの死に値するわけ!」
権藤「、、リコピン」
リコ「ゴンちゃん!想像できる?あの時の感動!運命の人に出会った時の、あたしの、あの時の感動!」
権藤「、、、、」
リコ「二人のホットバッジが光ったあの瞬間、あたしの、あの時の感動!」
権藤「ほーちょー」

15■ホットバッジが光ったこと

 地下採掘工場の続き。
 テンコ、工場長についていこうとする

夢見「待って待ってせめてホットバッジ!ビビビと来たのは本当!」
テンコ「んー、じゃあちょっとだけ」

 テンコ、ホットバッジを探す。

ゼロスケ「どーせ光りませんよあんなの」
工場長「、、、、、(そーっとホットバッジをテンコのにかざそうとする)」
ゼロスケ「軽蔑しますよ」
工場長「仕事だー」

 おのおの、仕事場に行く

テンコ「すぐ行きますー」
夢見「じゃ、すんません」

 その間にゆっくりとホットバッジをつき合わせる二人。
 音楽が聞こえてくる。
 予感がして、ゼロスケ一人振り返る。
 ホットバッジが点灯する。

テンコ「、、え、、、?」
夢見「、、あ、、」

 少しづつそれに気付くモグラたち。
 こづきあい、知らせあい。
 二人の目が合う。
 モグラたちに歓びの表情。
 ぽかんと、お互いを見ている二人。
 音楽が上がって行く。

16■結婚式

 結婚式場。ヴァージンロードを歩くリコ、その先にゼロスケ。両脇に参列者たち。

 権藤が現れ、ゼロスケはその場所を譲る。リコと権藤は仲良く、誓いの言葉を述べる。

リコ権藤「せーのっ、あなたを妻とし、あなたを夫とし、良いときも悪いときも、
 死がふたりを分かつまで、愛し、慈しみ、貞節を守ることを、ここに誓います。

 参列者の拍手。
 地上から、ぼーっと、空、超高層ビルのてっぺんを見ているゼロスケ。
 今頃、このビルのてっぺんで、リコと権藤の盛大な結婚式が行われているのだ。

リコ「想像できる?
 地球上にたった一人、何十億人のうちのたった一人、
 運命の人に出会った時の、あたしの、あの時の感動」

ゼロスケ「できる、、、、たぶん、ボクも経験した」

 権藤、仕事場に向かう。リコから離れる。
 不安そうにそれを見送るリコ。

17■ロボの定義

 国会に場面がうつる。たくさんの議員が座っている。
 権藤実篤が法案を通す。

議長「国民幸福党、権藤実篤くん」
権藤「人工知能の有無に関わらず、
 肉体の60%以上がレアメタルで構成される個体を全て『機械』とみなし、
 ロボットという定義をくつがえすものであります!(泣き)」
議員1「詭弁だぁ!!」
議員2「身体の60%を機械化した人間はどうなる」
権藤「機械とみなします」
議員3「人権侵害だ」
権藤「だまれええ」

 静まる議会

権藤「では、あなたがたがこの国のために死ぬか」
議長「賛成の議員はご起立願います」
議員たち「(口々に)さんせい!さんせい!はんたい!さんせい!」
議長「過半数につき、法案を可決いたします!
 ついでに、権藤実篤くんを総理大臣に任命いたします!」
議員たち「ばんざーい!ばんざーい!ばんざーい!ばんざーい!」
権藤「わほほい!わほおほほいい!!」
議員たち「ばんざーい!ばんざーい!ばんざーい!ばんざーい!」

 権藤、リコに見向きもせずに退場する

リコ「、、、、、、、」

 リコ、さびしそうに、奥へ退場する。
 それを見ているゼロスケ。

18■出兵

 地下採掘時工場に場面がうつる。
 地下よりロボットの輸出

工場長(声「次、ロボットの輸出。6QDゼロ型、採掘用ロボット改、ゼロスケ、おめでとう」
ゼロスケ「、、ありがとうございます」

 ゼロスケ、登場する。

工場長(声「そしてもう一人。咲坂型、傭兵用ロボット改、黒田五郎」
ゼロスケ「え」

 工場長、登場する

工場長「今度は戦場で。働くかー」
ゼロスケ「、、、なんのために働くんですかねー」
工場長「、、知るかよ」

 二人、戦場へと消える。
 暗。

19■夢見とのこと

夢見「トントントントン(家事の音)」

 テンコ夢見の地下の穴蔵ホーム

テンコ「じゃ、行ってくる!」
夢見「あなた、いってらっしゃいのチッス、んーー」

 事務員ロボ1登場

事務員ロボ「工場長」
テンコ「(チッスかわす)
夢見「いけずっ」
テンコ「どうした」
事務員ロボ「上から通信です」
テンコ「繋げ」

 咲坂ホログラム、登場

咲坂「みゅおん」
テンコ「中央地下採掘工場・工場長代理野々山テンコです」
咲坂「君のおかげで工場稼働率も倍になった」
夢見「テンコやるやるう!子供作ろうー!やろやろう」
咲坂「失礼だがそこのバカな方は?」
テンコ「家内です」
咲坂「なに?」
夢見「家内じゃないじゃん!主人じゃん!」
テンコ「だって勘之助さん写真ばっかとって働かないじゃん」
夢見「ゲージツ家に必要なのは愛と自由!」
テンコ「だけ?」
夢見「あとお金」
テンコ「はい主人」
夢見「家内ですぅ~~」
咲坂「、、結婚したのか」
テンコ「、、、」
咲坂「どうしてそんな勝手な真似をした!!!身分を考えろ!」
夢見「なんだよ?地下のモグラの人間には、結婚の自由も無いっていうの?!」
咲坂「、、人間じゃない!」
夢見「ゴキブリ食ってようが穴蔵住んでようが、俺たち」
咲坂「人間じゃないんだ!」
夢見「おい、なんか言ってやれよテンコ!
 もうやめちまおう、2人で写真旅行でもいこう。な?」

 テンコ、意を決し、土下座をする

夢見「なに?」
テンコ「、、、、言おうと思ってたの」
夢見「なに土下座してんの?」
テンコ「でも勘之助!直感ビビビって感じたんでしょ?
 あたしも感じたから!だって光ったじゃん!ホットバッジ!運命の人同士なんだから!あたしたち!」
夢見「うん俺たち、運命の人同士だ」
テンコ「だから勘之助なら構わないでしょ?!あたしが、人間じゃなくたって!」
夢見「は?」
テンコ「言おうと思ってたの!」
夢見「人間じゃない?」
咲坂「彼女は60%が機械、40%がクローン」
夢見「、、は?」
咲坂「6QD10(テン)型ダッチワイフだ。
夢見「、、、、、、、え?」

20■テン型誕生

重役たち「ガタタ(椅子から立ち上がる音)ほー、ほー、ほー」

 プレゼン。重役たち立ち上がり、ナインを囲む。
 夢見舞台前に、テンコ舞台奥にぬけがらのように舞台のへりに座る。

咲坂「私が20年を費やして開発した6QD9型高性能ダッチワイフです」
助手「ナインです。どんとこぉい」
重役たち「ほー、ほー、ほー、チミチミー、ほーほー」

 キューちゃんを中心にぐるぐる回り出す。

重役1「国営工場での大量生産を検討したチミ」
重役2「しかし部品がほぼ『鉄』だとチミ」
重役5「せめて機械部分が4割でも減ってくれればねぇチミ」
咲坂「無理です」
重役たち「チミ。チミーチミチミーチミーチミ?チミー(ぐるぐる)」
咲坂「この責任は私が」
博士(声「やっと完成したのか」
重役たち「おー柏木博士ぇええ」

 博士、現れる

博士「なんの役にも立たぬ、フルメタルのダッチワイフだ」
咲坂「明日、研究所の電気を落とします」
博士「責任をとって死ぬ気かね」
咲坂「、、、、、」
博士「例えば40%を有機体にするというのはどうだね」
咲坂「え?」
博士「わたしのクローン技術と君のロボット工学をもってすれば、
 60%がロボット、40%がクローンパーツのサイバネティック・ロボが完成する」
咲坂「では」
博士「手を貸してくれるかね」
咲坂「お父さん!」

 博士、咲坂がっちり握手。
 最新型サイバネティックロボが作られる。

製造音「ガチャコ!ピシコン!ガガキン!ピピピポジャジャドガゴン!!」

博士「6QDテン型プロトタイプ」
咲坂「コードネーム:テンコ」
重役「誕生ーー!」

 重役たちがキューちゃんから離れると、
 代わりに6QD10型プロトタイプ・コードネーム:テンコが製造されている。

重役たち「(拍手拍手)おおおおおおおお!!」
テンコ「、、、、、、」

 テンコ、舞台の真ん中に晒される。

権藤「素晴らしいですおじーちゃん!そしてお父さん!」
咲坂「総理大臣が義理の息子とは」
権藤「権藤実篤と申します」
博士「研究費は婿どのが調達してくれる」
権藤「この最新型を世界に輸出し、再びアジアのトップに躍り出ます!」
重役全員「おおおお(拍手拍手)」
権藤「ただの高性能なダッチワイフというのも芸がありません」
咲坂「ほう」
博士「どうするね?」
権藤「まずロボットの定義をくつがえす!そして大量生産!武器として輸出するのです!」
重役全員「おおおお(拍手拍手)」

 テンコにまとわりつく、政治家、役人、研究者、技術者

博士「こんなに人間に近いロボットなら、恋してしまうバカもいるかもしれないよ?
3人「んなアホな」
全員「あーーーーっはっはっはっは」
テンコ「、、、」

21■つり合い

 夢見、堪え切れずテンコを回想から引き戻す。
 照明戻る。手を握ったまましばらく、黙っている。

夢見「じゃなに?!」
テンコ「ごめん」
夢見「ウソついてたってこと?」
テンコ「違う!言わなかっただけ」
夢見「それウソじゃん」
テンコ「言おうと思ってたの!そのうち、ちゃんと!」
夢見「いつよ?」
テンコ「そのうち、ちゃんと!」
夢見「ダッチワイフって言った?」
テンコ「、、、」
夢見「なんで俺気付かないわけ?バカだから?うわー。チョー高性能じゃん」
テンコ「聞いて」
夢見「つまりどういうこと?テンコは人間じゃなくてぇ、
 え?金たまったら写真旅行行こうって言ってたじゃん。あれってどーなの?あり?なし?
 あ、なに言ってんだ俺。え?でも誓いの言葉とか言ったじゃん。
 あれもなかった事になる?いやそんな事じゃないか今。
 あ、俺が好きになってぇ、テンコも俺好きだけどぉ、ウソついたの?
 あれ?いつからがホント?好きもウソ?」
テンコ「全部ほんと」
夢見「色んな男と寝た?」
テンコ「、、」
夢見「ダッチワイフ試作品って言うくらいだからほら試験とか」
テンコ「勘之助」
夢見「全然別にいいんだよそんなのほら今の時代ふつーの事だから」
テンコ「許して、話きいて」
夢見「あ、あやまった今?じゃ、何人くらい?5人?10人?100人?
 あ、これじゃ嫉妬してるみたくなる。
 あれ?普通どうだっけ?喧嘩してからいつも、、、、
 あれ?、、、なんだ?、、、、ぜってぇ仲直りしたらダメじゃねぇ?
テンコ「言おうと思ってたんだよ!そのうち!」
夢見「いつよ!?」
テンコ「そのうち!」
夢見「すぐ言えよ!」
テンコ「だって!」
夢見「腹ん中で俺の事バカにしてたんだろぜってぇえ!!
 写真ばっかとりやがって才能ねぇのにとか!あ、わかってきた。そうかそうすりゃいいのか」

 上着をぶんなげ、カメラを振り上げ

夢見「グワシャアアアアアン!!!!!!!」
テンコ「なにするの!!!!」
夢見「わかった!これでいいんだ!これ!!これも!ガシャーン!お、いっぱいあんじゃん!」
テンコ「やめて!お願い!」
夢見「フィルム!グシャアア!!引き出しごと!ガバア!!」
テンコ「やめてよお!!!」
夢見「おまえの写真も全部!!そして俺のきわめつけ!」
テンコ「勘之助!」
夢見「俺、今日でシャシンやめまーーーーす!!!」
テンコ「え」
夢見「どーこれ?どーよ?俺写真やめたぁ!!
 俺さぁ、親に捨てられた可愛そうな少年だったわけ。
 そんな俺を孤独から救ってくれたのがカメラだったんだよー。
 お前の父親の遺品だよって古ーいカメラ。
 皮肉な話しだよなぁ、恨みに恨んだおやじのカメラで俺生きる力を手に入れたわけだもん!
 ちなみに今はただのゴミね!俺写真やめたから!!!」
テンコ「どうしてこんなことするの!!!」
夢見「これくらいしねぇとつりあわねぇんだ!!」
テンコ「!」
夢見「これでいい。お前の事どんどん嫌いになってやる」
テンコ「勘之助、、」
夢見「そんな目でみんなよ気持ちわりい!!!!!
 わああ!!いい!これいいよ!お前『きもちわりい』!!
 機械の分際で!俺のことバカにして!」
テンコ「勘之助!!」
夢見「子供、欲しいって言ったのも、あれウソ、、、」
テンコ「ちがう!ちがうよ!」

 夢見、ドン!とカメラの破片を叩く。

夢見「俺、ほんと、好きだったんだぞ、、、、、」
テンコ「勘之助!あたしも」
夢見「カメラの話だ!きもちわりい!!!」

 夢見退場する。
 テンコ、カメラの破片を叩く。

テンコ「、、だからじゃん。
 そうなるしさ、、、。
 それじゃ言えないじゃん。
 恐くて、、嫌われんの恐くて、、」

 テンコ、カメラの破片を握りしめる。

テンコ「痛いよぉおお、痛いよぉお、、泣きたいよぉぉ、うえーーーん

 ロボットは泣けない。

22■戦場での試験

 時間が戻る。現代。

テンコ「泣きたいよぉぉ、泣きてえよぉおお!
 うえーーーん!うええええええん!!(つっぷす)」

 話しを聞いていたタネが出てくる、となりに座る。

タネ「よーしよーし、よーしよーし。なけなけー。なけなけー。
 よーしよーし、よーしよーし。なけなけー。なけなけー。

 テンコの頭を不器用になでる。

 権藤。

権藤「テンコちゃーん。あれ?なんだお前。
タネ「、、、(にらみつける)
テンコ「、、(つっぷしてる)
権藤「テンコ?え?泣いてんの?まさかな」
テンコ「、、すみません」

 テンコ、立ち上がる

権藤「屋上にヘリ待たせてあるから」
テンコ「はい」
権藤「東南アジアへ輸出」
テンコ「はい」
権藤「今度は戦場での試験だ」

 権藤、退場しかける

タネ「なんで?」
権藤「なに?」
タネ「なんで待ってやんないの?」
権藤「は?」
タネ「泣いてんだから!なんで待ってやんないの?!」
権藤「なに言ってんだおまえ」
タネ「泣いてんのわかってんなら、なんでちょっとくらい待ってやんないの?!」
権藤「テンコ、そのうるせえお友達にバイバイしろ」
テンコ「、、、はい」
権藤「試すんだ。どのくらいで壊れるか。」
タネ「え?」
権藤「命令、つまみだしてから屋上」
タネ「壊れる?」

 テンコ立ち上がり、タネを掴む。

テンコ「ごめんね」
タネ「なんで?」
テンコ「命令だから」
タネ「やだやだやだやだ」
テンコ「いかなくちゃ」
タネ「やだやだやだやだ」
テンコ「命令貰って、命令どおり、なんかやってた方が気が楽だし」
タネ「勉強どーすんの?!」
テンコ「リコに教わって」
タネ「食べ物どうすんの?!」
テンコ「リコに貰って」
タネ「やだやだやだ」
テンコ「リコに伝えて。ゼロスケきますようにって」
あたし祈ってるから。自分のことみたく」
タネ「テンコ」
テンコ「行ってきます」

 テンコ、タネをダストシュートに落とす。

タネ「ちょっと待ってよ」
テンコ「、、、」
タネ「人の心配してる場合じゃねーよ!
 やだ!やだ!やだ!やだ!やだやだやだやだやだ!
 だれか止めろ!だれか!だれか!止めて!止めて!リコ!」

 立ち止まるテンコ

テンコ「タネっ」
タネ「テンコ」
テンコ「やっぱ、神様、いたらいいなぁ」

 テンコ、輸出ポートへと去る

タネ「、、そういう意味じゃない。そういう意味じゃないよ絶対!
 ぜっっったい、そういう意味じゃない!
 かみさま、かみさまほとけさま、だれか、、、だれか、、
 ちくしょー。、、、ちくしょーー」

 タネ、顔をあげる。
 今度は、ダストシュートを脱出するために本気で必死に跳ねる。

23■目的

 外国のどこかの戦場

兵士たち「ドガガガガ!ドアガガアア!ババババ!

 兵士たちが走り回り、ポケットに。ゼロスケ、工場長は残る。
 遠くの戦場音。戦う2人。ゼロスケ、工場長

ロク工場長「ドガガガガッガガガガ!バン!バンバン!」
ゼロスケ「しねしね!しねしねー!ドガーン!」
工場長「荒れてるなぁゼロスケ。バキューーン!」
ゼロスケ「一体なんのために生きてんだか、目的がわからない。ドッパーーん!」
工場長「いいねえ!人生の目的!!ドッゴーーーン!」
ゼロスケ「金も女も地位もない。ロボットは損だ。ボガーん!」
工場長「俺だってかわらねーよ。ずだだだだだだだ」
ゼロスケ「そりゃ工場長はモテないし、金ないし、クズだし、最悪の人間だ。バゴーーン!」
工場長「失礼な!」
ゼロスケ「でも人間だ。ものすごい低い確率だけど、誰かに出逢うチャンスがある!
 いちお人間だから。ドン!バン!ドン!」
工場長「いちおな!スッパーーン!」
ゼロスケ「え?なんの武器?」
工場長「ラケット的な。スッパーーーン!」
ゼロスケ「いいなそれ。ひゅん!」
工場長「なんの武器?」
ゼロスケ「やり。ぐっさあ。あ、ささった」
工場長「おれも。ひゅん!!」
ゼロスケ「よっ飛ばし屋!」
工場長「あざーっす」
ゼロスケ「誰と戦ってんだろ」
工場長「しらん」
ゼロスケ「工場長」
工場長「なんだ?」
ゼロスケ「外れましたよ」
工場長「あ、ちくしょスッパーん!」
ゼロスケ「大切な人が居たら、違うんだろーか。人生。スッパーーン!」
工場長「スッパーーーーン!おまえいるじゃん。空のクジラのお絵描き女。スッパーーーン!」
ゼロスケ「、、ズダダダ!ババババ!新発売!ロクデナシ機能搭載!
 おしゃべりおそうじお洗濯!お子様のお友達にぴったり!よけーな機能満載!
 ロクキューディーゼロ改良型!今回のグレードアップには“人殺し機能”を搭載いたしました!
 ダダダダ!!ダダダダ!!だだだだだ!だだだだ!、、、はー、、はー、、
 、、、なんで思考回路なんてつけやがったんだ、、、」
工場長「若者は、複雑だな」
ゼロスケ「、、、強くなりたい」

 工場長、自分のホットバッジを差し出す

工場長「やるよ。欲しかったろ?」
ゼロスケ「、、、でもこれ工場長の」
工場長「おまえのデータ、入れといた」
ゼロスケ「、、え」
工場長「俺はかみさん貰う資格なんてねーわ。
 明日死ぬかわからん戦場で『生きてるなー』って思っちまうんだ俺」

 ホットバッジをゼロスケに持たせる

工場長「目的な。じゃーこういうのどうだ。
 お前は、地中深く、あの超高層ビルの真下を目指す。
 12000メートル、電波が届く日もあるだろう。
 それまでがんばれ」
ゼロスケ「、、、目的」
工場長「あーあ、いっぺん運命の人と、セックスしたかったなぁ」

 ゼロスケ、キラキラ光るホットバッジを太陽に照らす。

工場長「なんだ不満か?」
ゼロスケ「、、、ありがとう」
工場長「それ、ロボットに言われると妙だな。うひひ」
ゼロスケ「みにくい」
工場長「うるせいー」
ゼロスケ「僕、ありがとうって生まれて初めて言ったかも」
工場長「!ゼロスケふせろ(ゼロスケを押す)」
ゼロスケ「!?」
デカイ爆発音「ドゴオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

 近くに爆撃。2人、ふっとぶ。

24■ゼロスケはどこだ

 暗の中、モグラたちのささやき声が聞こえる。

モグラたち「ハロー、ハロー、ハロー、ハロー、」

 ホットバッジの明かりが明滅する。皆、やる気がない。

1「ハロー、ハロー、こちら地面より下」
2「地下6000メートル、東のモグラ」
3「なんかオモシロい話はねーか?」
4「戦場のモグラはどうなった?」
5「敵を殺してでかくなる」
3「殺戮モグラか」
7「もう聞き飽きた」
7「どうせデマだろ」
8「ほかねーかほか」
1「若いゲージツカが体半分機械に変えたとか」
2「作業中の事故だろ?」
3「面白くもねぇ」
4「なんでもわざとやったらしい」
5「自殺だってしょっちゅーあるさ」
6「ロボットの気持ちを知りたいとかでよ」
7「頭が狂ってんだろ」
8「他にねぇのか。つまらねぇ」

 タネ、リコのホットバッジをもっている。光る。

タネ「繋がった!」

 タネこそこそ話し始める。となりに、何もしていないリコ

1「誰だお前」
タネ「えーとリコ」
3「聞き取りにくいぞ」
2「電波が悪いのか」
タネ「大きい声で話せない」
4「ワケありだなこりゃ」
タネ「採掘用ロボットを探して。ロクキューディーゼロ、ゼロスケ」
8「地下にロボットは何万もいる」
1「なんで大きい声で話せない?」
2「教えろよ。こっちは暇してんだ」
タネ「、、監禁されてるから」
3「オモシロくなってきた」
5「捕まってるてこと?どこに?」
タネ「超高層ビルの最上階、総理大臣官邸」
4「ケっ、からかわれてんぞ」

 通信が切られる。消えるホットバッジ。全明、監禁部屋

タネ「ちくしょ!次、西のモグラ」
リコ「地下にどれだけのロボットがいると思ってるの」
タネ「なぜか今日は繋がるんだから」
リコ「ムリだよ」
タネ「すぐ諦める」
リコ「だって」
タネ「だって」
リコ「だって、あたしなんか」
タネ「だって、あたしなんか」
リコ「真似しないでよ。」
タネ「あんたさー、もうちょっと頑張ったら?」
リコ「頑張るって何を」
タネ「自分で考えれば?」
リコ「だって頭のなかぐちゃぐちゃで。」
タネ「少し整理すれば?」
リコ「出来ないから困ってんじゃん!」
タネ「八つ当たりされてもなぁ」
リコ「だって!あたし何もできない」
タネ「ダッテダッテ星人。ダッテダッテ星人は言い訳がましいわりに何もしない。根性なし。
鳴き声『ダッテぇダッテぇ~ダッテぇダッテぇ~』」
リコ「もおいいよ!」
タネ「はい出ました伝家の宝刀『もおいいよ』」
リコ「あたしの事なんて誰もわかってくれるわけない」
タネ「おおっと必殺『私なんて』そして合わせ技『わかってくれない』」
リコ「うるさい!もうほっといて!イライラする!」
タネ「『うるさい・ほっといて・イライラするぅ』ワ・ザ・の・デ・パ・ア・トだぁーっ」
リコ「なんなの!
タネ「悲劇のヒロイン。脳みそお花畑。依存体質バカ女」

 リコ何かに八つ当たりをする。

リコ「、、、、あたしだって、どうにかしようと思ってる」

 リコ、うずくまる。

タネ「妹。昨日6人も死んじゃった」
リコ「え」
タネ「朝ゴミ溜めで起きたらもう腐りかけてた。なんか変なもん食ったのかな」

 間

リコ「ほんとに3歳で死ぬの」
タネ「うん。あ、別に不幸自慢してるわけじゃないから。
 80年生きようが83年生きようがたいして変わんないし」
リコ「こわくないの?幸せになるまえに死んじゃったらどうすんの?」
タネ「幸せってなに?」
リコ「幸せっていうのは、、、、変だね。今は、わかんなくなった」
タネ「ダストシュートからゴミ溜めに落ちて悪臭と一緒に息ひそめて待って、
 生ゴミ回収に来たロボットのスキをみて通気口から下水処理場に抜け出して、
 そこからクソまみれの下水管を抜けて、給水主管から
 サビだらけの貯水タンクいけば屋上出られるけど、どうする?
 あ、無理?じゃ、やめよう。あたし行くわ」
リコ「どこに」
タネ「テンコ、輸出されるのやだから止めなくちゃ」

 タネ、ホットバッジを置き、行こうとするが、立ち止まり

タネ「いちお言っとくけど。恐くないわけないから。なんかやってないと折れそうになる。
 あたしはたぶん、死ぬの恐いから生きてんの。あ、これ、哲学のはなしね」

 一人残るリコ

リコ「。。。。日記」

 日記を思い出し、開く、と、最後のホログラム。

ホログラム音「みゅおん」

 ゆっくりと入ってくる、アサコ
 赤ん坊を抱いている

アサコ「、、、、」
リコ「、、」
アサコ「最後の日記」
リコ「、、」
アサコ「リコ」
リコ「、、、、わたし?」
アサコ「リコ、あなたの名前」

 アサコ、赤ん坊に言う

リコ「、、、母さん?」

 リコ、赤ん坊を覗き込む

アサコ「リコは、幸せにならなきゃいけないよ」
リコ「え?」
アサコ「想像できる?地球上にたった一人、
 運命の人に出逢ったときの、あたしの、あのときの感動」
 、、あなたは幸せにならなくちゃ。あたしのぶんも」
リコ「、、」

 リコ、本を閉じる。

ホログラム音「みゅおん」

  アサコ、消える

リコ「、、どうして」

 本を見つめる

リコ「どうしてそんなこと、言ったの?」

 リコのホットバッジが地下の電波をキャッチし、光る。

夢見(声「ハロー、あれ?」
リコ「?」
夢見(声「これでいいのか?えっと、通信、もしもーし」
リコ「、、、、、、」
夢見(声「ハローハロー」
リコ「、、、、」
夢見(声「こちら、鉄のモグラ」
リコ「だれ?」
夢見「あ!こちら、ニコン製二眼レフ節穴ロボ。夢見勘之助」
リコ「え」

 自らの身体を半分機械に変えた、夢見がいる

25■殺したい

 超高層ビル屋上、ヘリポート

待機するヘリの音「バババババババババババババ」

 権藤登場

権藤「ロボットの輸出」

 テンコ登場

権藤「6QDテン型、ダッチワイフロボット改め、
 戦闘用『機械』プロトタイプ、テンコ君。おめでと♪」
テンコ「これ、お返しします」

 ホットバッジを渡そうとする。

テンコ「もう私には必要ありませんから」
権藤「いや使えるよ?通信機能もついてっし」
テンコ「運命の相手が2人いるとは思えません」
権藤「へ?なに言ってんの?」
テンコ「ですから、運命の」
権藤「運命の相手?!とか言った?!」
テンコ「、、言いました」
権藤「ひゃはひゃはひゃははは!ひゃはあ!!」
テンコ「、、、」
権藤「だからおめーらきもちわりーよー。うふぅふぅい~いひー」
テンコ「、、、あの、どういう事でしょう」
権藤「あーそーかそーか言ってなかったっけ?はい」

 権藤、自分のホットバッジを出す。
 二人のホットバッジが光る。

テンコ「!!?!」

 驚いて手を引っ込めるテンコ。消える。

権藤「はい俺とテンコ運命の相手ー!!♪」
テンコ「、、」
権藤「『誰とでも光るバージョン』だよそれ」
テンコ「、、誰とでも光る?」
権藤「俺のと一緒だ。おそろ。俺たくさん持ってんだー。すぐ無くすから」

 たくさんのホットバッジ。

テンコ「、、そんな、」
権藤「本気にしちゃった?!ごめん!
 やっぱあらゆる実験結果欲しいからさ!
 ま、お前の結果、離婚!ゆ~め~み~く~ん♪」

 テンコ、へたりこみ。ホットバッジを、ぽとりと落とす。

テンコ「、、、、どこまでバカにすれば気が済むの、、、
権藤「だってバカなんだもん!そやって運命だの幸せだの理想だの!
 ありもしねぇもん探してっから、結果不幸になるんだろバカ」
テンコ「あ、、、」
権藤「ん?」
テンコ「じゃあ、、、、リコは?」
権藤「えへ?」
テンコ「リコは?!」
権藤「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」
テンコ「答えろ!リコは!?」
権藤「俺、笑いこらえるのに必死だったっけな」
テンコ「、、、、あああ、もぉおぉおぉ、、」
権藤「どいつもこいつも。、、、ほんっと『きもちわりーよ』」
テンコ「、、、、、死ねよ!!!!」

 テンコ、キレる。首をしめにかかる。が。

権藤「なに?機械の分際でこの手は?」
テンコ「?」

 首をしめられない。セーフティ・リミッターが重要人物に対しての暴力を制限する

権藤「なに?ほら頑張って百万馬力だしてごらんなさいな」
テンコ「、、、ころしたい」
権藤「ミスタープレジデントだよ俺?おまえらなんかに手出しできるわけないじゃん」
テンコ「殺したい殺したいっ。殺したい!!」
権藤「だから早く戦場でよ、夢みてーなことのたまって、現実みねーゴミども殺してこいよ。
 コマの分際で文句ばっか言って、何も変えられねぇ虫ども全部殺してこいよ。
 与えられた範囲から出るとこーなるって事を教えてこい。
 おめーらみてーなのがいるから世界はちっとも変らんのよ。
 ゴミはゴミなりに意味もなく働いて死ね。それ以上考えんな」

 サビだらけの貯水タンクから出てきた、タネ。

タネ「ちょっとあんた」
権藤「ばん」
タネ「あ」

 止まるタネ。一瞬何が起こったかわからない。
 権藤、銃を撃った。
 タネ、自分の胸の穴を見る。そして、不思議な表情でテンコをみる。

タネ「、、、」
 
 タネ、くずれおちる。

テンコ「だれかあ!!」

26■戦場にて

 再び、戦場。 

爆発音「ドゴオオオオオオオオオオ!!!!!!」
戦場「ズダアダアア!ッゴゴゴゴ!ドッドオドッッドオド」
爆発音「ドゴオオオオオオオオオオ」

 爆風でに転がってくるゼロスケ。
 よろよろと立ち上がり、何かをかつぎ、進んでくる。
 取り落としては、かつぎ。

ゼロスケ「大丈夫ですか?なにかばってんすか人間のくせに。ああ、また血」
 
 首から、どくどくと溢れ出す工場長の血。

ゼロスケ「止血。、、布でいいか。あ、服、やぶります」

 工場長の服をやぶろうとするが、やぶれない。

ゼロスケ「すいません僕の手だと、うまくつかめない。あ、そーか、圧迫して止めます」

 首をしめている形になる。

 リコ、生ゴミ回収に来たロボットのスキをみて
 通気口に入った。
 這いつくばる。下水処理場を目指している。

リコ「はぁ、はー。通気口、、やっと、、はぁ、、はぁ。」
夢見(声「おい屋上ついたか?」
リコ「汚い。臭い。もうやだ」

 リコ、あきらめる

夢見(声「がんばれよ」
リコ「簡単に言わないで」
夢見(声「通気口から下水処理場に抜け出して、
 そこからクソまみれの下水管を抜けて、給水主管から」
リコ「わかったからちょっと黙って」
夢見(声「鉄のモグラが来るんだよ」
リコ「外国の戦場から?」
夢見(声「おまえのためにくる!屋上で待て」
リコ「海はどうするの?」
夢見(声「それはわからん」
リコ「高層ビルはどうするの?」
夢見(声「俺はテンコを幸せにする」
リコ「、、しあわせ」
夢見(声「みんなこのままじゃ不幸じゃん」
リコ「!!!もうやめてよ」

 間

リコ「まるで呪いの言葉だ、、幸せになれとか。不幸になるなとか。
 あなたが不幸だったからって、
 どうしてあたしが幸せにならなきゃいけないの?」
夢見(声「誰の話しをしてるんだおまえ」
リコ「母親に呪われたの」
夢見(声「おい!座ってんのか?」
リコ「ママはわたしを、呪って死んだの」
夢見(声「何してんだよお前」
リコ「教えてくれたことなんて何もない」
夢見(夢「おい!立て!進めよ」
リコ「私は、幸せになんかなれない」
夢見(夢「おい!」
リコ「こんなもの」
夢見「おい」

 日記を投げつける。へたりこむ。

夢見「なにしてんだよ」
ホロ音「みゅおん」
リコ「、、」

 アサコが登場する

27■工場長の死

 首をしめているゼロスケ

ゼロスケ「あ、血、止まりました?あよかった。
 なにかばってんすか人間のくせに。ほら、目あけて。なんか言ってください。
 スクラップにするぞとかなんとか。ほら、笑ってください。みにくく。
 じゃ僕、落語しますね。なににやろうかな。えーと」

 ゼロスケ、正座をし落語をしようとするが、

ゼロスケ「、、すみません、、、、、何も思いつかない」

 死んだ。

ゼロスケ「すみません。、、僕の手、何もつかめない感じで。
 すみません。余計な機能ばかりで、、、、死んだんすか。
 工場長、、目的、くれたばっかじゃないですか」

 ゼロスケの手にホットバッジ。

28■アサコ

 ホログラムのアサコが話し出す

アサコ「あなたは幸せにならなくちゃ。あたしのぶんも。
 パパはどう思ってるか知らないけど
 あたしは、あなたが産まれて、世界一幸せ。
 パパ、あなたにロボットを作ってくれてるの。
 おしゃべりおそうじおせんたく、
 お子様のお友達にぴったりだって。
 あなたのためだけに作ってくれてるの。
 きっと絶対売れないと思うわ♪」
リコ「、、」
アサコ「最後に、あなたに、平仮名二文字だけ」

 アサコ、見えるように平仮名を書く『あ』と『い』。

リコ「ママ」

夢見(声「ハローハロー!!リコ」
リコ「、、、」
夢見(声「止まるな!立てって!」
テンコ「だれか、だれか、、、、、だれかあああああ」
権藤「じゃあ命令」
テンコ「、、、」
権藤「『ゼロスケ』でも呼べ」
テンコ「!!」

 テンコ、立ち上がり、権藤をにらみつける。

権藤「?」

 アサコのホログラムが消える。

リコ「、、、、、、、ゼロスケ」

29■鉄のモグラ

 場面転換。総理大臣官邸、屋上、ホログラムデッキ

 テンコ、まっすぐと権藤を見すえ、コマンド音声入力

テンコ「ホログラムON6QDゼロ型採掘用ロボット改ゼロスケ」

 ゼロスケ、ホログラムとなりまっすぐ前を見る。
 
 権藤、それを見る

権藤「、、、え?、、、、ロボットじゃん」
テンコ「、、、、、」

 テンコ、権藤を見ている。

権藤「え?、、、」
テンコ「、、、、」
権藤「お前ウソついてんだ」
テンコ「機械はウソがつけません」
権藤「会ってたくせに!」
テンコ「人間を探せとおっしゃいました」
権藤「、、、、、、、」
テンコ「他にご用はございますか?」
権藤「俺、、、、機械に負けたのか」

 完敗。絶望。喪失。の予感。

権藤「、、そうだ。、、ぶち壊す、ぶち壊さなきゃ。リコの部屋につなげ!」
テンコ「切り替えます」

ホロ音「ぶぉん」

 照明が変わる、リコの部屋のホログラムが部屋に映し出される。

権藤「、、、、あれぇ?」
テンコ「、、、、」
権藤「スキャン」
テンコ「いらっしゃいません」
権藤「ロックは?」
テンコ「正常です。ただ、服を結んで繋いだものが」
権藤「、、、」

 権藤、ぐらりとふらつく。

権藤「あれ?、、、今揺れた?俺だけ?あれ?なんだこの音」

 権藤にだけ聞こえる音。

権藤「ザッ、、ザッ、、ザッって。聞こえる?、、やっぱ揺れてない?」

 権藤、ホログラムのゼロスケをふりかえる。

権藤「!!」

 ホログラム、権藤を見ている。

権藤「うっ。、見んな!!(ぐらり)なんか、きもちわるい。、、おえ(えづく)」

 権藤、えづきながら退場。

  テンコ、ホットバッジを拾う。

テンコ「、、かんのすけ」

 行こうとする。
 すると、

リコの通信「ハロー!ハローテンコ」

 テンコのホットバッジが光る。

テンコ「リコ?」
リコの通信「来た!来たよテンコ!聞こえる?テンコ!」

 国中の地下のモグラたちのホットバッジの明かりがつく

モグラたち「ハロー、ハロー、ハロー」

 聞こえてくるモグラの噂話、皆、興奮気味である。
 ホットバッジの明かりに包まれる、テンコ

1「あの話デマじゃねぇっ!」
2「鉄のモグラが来る話か?」
3「外国の戦場からだぞ?ありえねー」
4「それが、ニッポンに入ったってウワサだ」
5「まっすぐとこっちに向かってきてるらしい」
6「西のやつが言ってた」
7「海はどうした泳いだってのか?」
1「デカイ鉄の固まりが浮くもんかよ」
2「だから鉄のモグラだって言ってんだろ」
3「海の深さの平均は約4000メートル」
4「ここは地下6000メートル」
5「鉄のモグラが地下をぶちぬいて」
6「まっすぐとこっちに向かってきてる」
7「こちら西のモグラ!
8「本当に来た!!!」
1「一体どこに向かってる?!」
2「地上6000メートル超高層ビル!」
3「官邸目指してすげえ速さで向かってる!」
全員「なんのために?!」
4「俺はみた!ホットバッジを掲げてた!」
全員「なんのために?!」
5「捕らわれのお姫さまの救出だってよ!」
6「白馬の王子さまか!」
7「鉄のモグラにまたがって!」
全員「なんだか素敵な話じゃねぇか!」
1「こちら中央モグラ!」
2「おまえたちも加われ!」
3「半身機械の男が扇動!!」
夢見「上を掘れ!道を作れ!」

 テンコ、夢見だとわかる

4「地面を掘るな!天井をぶち壊せ!」
全員「鉄のモグラを誘導せよ!鉄のモグラを誘導せよ!」
5「我々はロボットではない機械である!」
夢見「ゆえに!」
6「我々は二度と命令を受けない!」
7「我々はニッポン国の指揮下を離れる!」
夢見「上を掘れ!道を作れ!超高層ビルまでの道を作れ!」
テンコ「勘之助!!!!」
夢見「モグラ本体と合流ののち!」
全員「地上6000メートルを一気に駆け上がる!」

 リコ、呼ぶ。

リコ「ゼロスケ!」

 テンコ退場。ホログラムのゼロスケがホットバッジをゆっくりと上げる。
 
ゼロスケ「ザク、ザク、ザク、、、」

 誰かの夢、現実となる。

ロボたち「ザク!ザク!ザク!ザク!ザク!ザク!」

 目標を定めるホットバッジ。

ロボ1「トルクメニスタン、アフガン、パキスタン、インド」
ロボ2「ネパール、バングラデシュ、ミャンマー」
ロボ3「タイ、ラオス、ベトナム」
ロボ4「南シナ海、台湾、東シナ海」
ロボ5「ニッポン領内侵入」
ロボ6「おきなわ、かごしま、瀬戸内、淡路」
ロボ7「伊勢、遠州、駿河」
ロボ8「伊豆、相模、目標付近」
ゼロスケ「目標」
全員「地上6000メートル超高層ビル、最上階、総理大臣官邸」

 戦場の破片で作られた装甲、早く大きく、力強く、ニッポン向かってくる

ロボたち「ザクザクザクザクザクザクザクザクザク!!!!!!」

 本当に聞こえてきた、足音。

権藤「この音!揺れる!超高層ビルが揺れる!!誰か!誰かいないのかあ!」

 権藤ぶざまに退場する。

ロボたち「ザクザクザクザクザクザクザクザクザク!!!!!!」
リコ「聞こえてきた、、ほんとに聞こえてきた!!」
夢じゃない!夢じゃないよ!テンコ!!」
ロボットたち「ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!」
リコ「あともうちょっと!!ゼロスケ!」

 リコ、舞台前方よりはいつくばり、屋上へと上がっていく。

 ぞくぞくとゼロスケに集結するモグラたち。

 ゼロスケ、口を開く。

ゼロスケ「、、、これは反乱ではない」

 跡を継ぐ、モグラのロボたち

ロボたち「これは反乱ではない。ただちに武器を捨て、我々の指示にすみやかに従え。
 我々はロボットではない。60%以上を無機物で構成された機械である。
 ゆえにロボット工学第ゼロ条、改定1条、2条、および3条の適用はなされない。
 6Q-D型、同志諸君。ただちに武器を捨て、我々の指示にすみやかに従え」

 クジラの近衛兵が監視高層ビル監視カメラをモニターで観ている。

モグラ「ザクザクザクザク(以下つづく)」
近衛兵1「どうなってる?」
モグラ「ザクザクザクザク(以下つづく)」

 巨大で不格好なロボットが超高層ビルの壁を這い上がってくる

近衛兵2「無数の残骸が折り重なって」
近衛兵3「ひとつになって!
近衛兵4「壁を歩いてる」
近衛兵5「登ってきた」
近衛兵6「鉄のモグラが」

 大音響で館内に響き渡る、巨大ロボからのスピーカー放送。

ロボたち「繰り返す、これは反乱ではない。クジラのすみか、人間の諸君、
 我々はこれより『地面から上』を一時、占拠する」

 鉄のモグラ、ゼロスケが超高層ビルを登ってくる

ゼロスケ「よいしょおお!!!
 ロクデナシ機能搭載!ロクキューディーゼロ改良型!
 おしゃべりおそうじお洗濯!お子様のお友達にぴったり!
 今回のグレードアップには“人殺し機能”搭載いたしました!
 はい撃ってぇ!!」
身体たち「どががががががあががががああががが!!!!!!」
ゼロスケ「リコお!!聞こえる?!」

 リコのホットバッジを高々とかかげるゼロスケ。

身体「ハロー、ハロー、ハロー
 こちら、地中深く、地下6000メートル、鉄のモグラ。
 地上6000メートル、空のクジラ。君へ。僕の声は聞こえますか。
 ハロー、ハロー、ハロー」
ゼロスケ「リコ」
身体「12000メートルの彼方、君へ。
 僕の計算では地球と月と太陽が一直線に重なる日。
 この角度。この場所からこの強さ。ほんの1分、星の位置が味方して、
 僕は君の声が聞けるはずだから。
ゼロスケ「僕はどうかしているんだと思います!
 僕はたまたま、君に会ったその瞬間!偶然何かのウィルスにやられて、
 頭の回路がおかしくなったんだと思うんです!だってまるで意味がないから!
 人間はこれを「機械が壊れた」って言うんです!」
権藤「ゼロスケ!!」
戦場音「ズダダダダダダドガガガガガババババババ!!」

 一瞬くずれるゼロスケ。
 ゼロスケ以外のホットバッジの明かりが消える。
 ゼロスケ、立ち直り再び体勢を立て直す

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たくさん台本を書いてきましたが、そろそろ色々と人生のあれこれに、それこれされていくのを感じています。サポートいただけると作家としての延命措置となる可能性もございます。 ご奇特な方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。