象に釘

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<演劇台本>
・許可なく上演コピー配布することを禁じます。
・許可については別記
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『象に釘』脚本すがの公

◆登場人物

ヒト=記憶があいまい
ゾウ=長くそこに存在するうちに自分を神だと思うように。

◆舞台

屋根裏部屋。机。イス。手すり白い紙、ペン、インク、紙の束(本)。
天窓、そして天扉。

◆設定

 たぶん天国や地獄へ行く前の場なのだろうけど、ヒトが来て、ゾウとなって、もう一人ヒトが来る。
 それがどうやら、ずっと繰り返されている。
 ゾウは初めはメモ書きだった神の束を大事にしている。
 「ソウに釘を打てば、この繰り返しは止まるんじゃないか」
 という仮説が立っているらしい。
 だけど、なぜかゾウがヒトを追い込むことばかりが起きる。
 この世界から抜け出して、次の段階に行きたいが、
 なかなかうまくいかなくて、ゾウはかなりイラついている。
 学習するうちにルールが見えてくる。
 ルール1:ゾウがヒトにクギを刺すと、立場が入れ替わり最初に戻る。
 ルール2:想像したことは起こる。
 ルール3:絶望すると存在が消えて、また、産まれてくる。

01■戦象

 天窓からさす明かりの中、ヒトが製本される前の紙の束を持っている。
 ヒトは女性である。

ヒト:「・戦象(せんぞう)。戦うゾウ。紀元前331年の地中海、ガウガメラ戦争において初めて戦争に投入された。象の運用の起源は紀元前1100年ごろといわれ、それをたたえたサンスクリット語の賛歌が残っている。」

次のページをめくる。

ヒト:「象は本気を出すと40キロで走る。戦場では真ん中の列に配置され、敵陣へ突撃した。しかし、方向転換や急停止は難しかった。轟音や悪臭や火が苦手だったので、ローマ軍は豚に火をくくりつけて放ち、ゾウを混乱させた。」

次のページをめくる
    
ヒト:「制御を失った象は暴走し、味方へも被害を与えるため、象使いはすぐに象を殺した。戦象の急所にはあらかじめ大きな釘が取り付けられており、それをヒトが木槌で叩くことでゾウを殺した。」

02■ゾウとヒト

全体の明かりになると、象がいる。
ゾウは象のしるしの大きな釘のネックレスをしている。
ゾウは男性である。

ヒト:で、何でしたっけ?
ゾウ:だから!(興奮している)もう難しく考えるのはやめましょう。
 スパッと決めちまいましょう。決断するんです。
ヒト:簡単に言わないでください。
ゾウ:簡単になんていってません!難しく考えるのをやめましょう、そう言ってるんです。
ヒト:どう違うんですかそれ。
ゾウ:つまり。
ヒト:ええ
ゾウ:いや。やめましょう。こうして、あらゆる話は横道にそれ、いつのまにか人生の目的を見失うんです。
ヒト:大げさ
ゾウ:それ読んだんだろう。
ヒト:読みました。
ゾウ:ならわかるだろう!目的がある!それは人生の目的である!
ヒト:読んだけど理解できたかどうか。
ゾウ:そこに書いてあることが全てだ。他に道しるべとなるものはない!
ヒト:あなたの言葉の中になにかあるかも
ゾウ:何が。
ヒト:あれを理解するためのヒントが。
ゾウ:そんな訳ないですから!
ヒト:どうして?
ゾウ:私もあなたと同じようにココに来ました。あなたと同じように手がかりを求めました。
ヒト:誰に
ゾウ:私の前の象にです。
ヒト:あなたの前に象が居たんですね。
ゾウ:そうです。
ヒト:あなた
ゾウ:象です
ヒト:ゾウが二匹
ゾウ:ちがいます
ヒト:でもだって
ゾウ:その時私はゾウじゃなかった。
ヒト:なんだったんですか
ゾウ:ヒトです
ヒト:ヒト
ゾウ:ただのヒトです。
ヒト:今は
ゾウ:ゾウです
ヒト:どうしちゃったんですか?
ゾウ:え?
ヒト:どうしてあなたは象になっちゃったんですか?
ゾウ:つまり。
ヒト:どうしてヒトがゾウになるんですか?
ゾウ:つまり
ヒト:あなたの前の象はどこに行ったんですか?
ゾウ:だからやめましょう。
ヒト:え?
ゾウ:こうしてあなたと二人、もうかれこれ何度も何度も目的を見失い、事態は進展しません。
 そうしていつのまにか、人生の目的を見失うんです。
ヒト:大げさ
ゾウ:それ読んだんだろう!ならわかるだろう!目的がある!それは人生の目的である!
ヒト:あ、デジャヴュ
ゾウ:あなたは頭が悪いな!

 ヒト、黙る。

ゾウ:、、、、、?
ヒト:、、、、、。
ゾウ:怒ったんですか
ヒト:(うなづく)
ゾウ:怒った。
ヒト:(うなづく)
ゾウ:そうか。参ったな。
ヒト:、、、、
ゾウ:まだ怒ってますか
ヒト:(うなづく)
ゾウ:どのくらいかかりますか。時間で決めませんか。一分、三分。え?五分?!
ヒト:無茶言わないで下さい!
ゾウ:じゃあ一生そのまま怒り続けるんですか?違うでしょう?いずれ機嫌が直るでしょう?
 だったら早いにこしたことはない!一分!ヨーイドン
ヒト:そんなに簡単に言わないでください!
ゾウ:どうすればいいんです
ヒト:謝ってください
ゾウ:何を?!
ヒト:あなた、私に、頭が悪いって言いました。
ゾウ:そうです。そしたらあなた、怒りました。
ヒト:謝ってください
ゾウ:だから何を?
ヒト:私に頭が悪いって言った事をです。
ゾウ:どうして?!あなたの頭が悪いのに?!
ヒト:ひどい!

 ヒト、黙る。

ゾウ:あれ?まさか。まさかと思いますけど、また怒ったんですか?
ヒト:(うなづく)
ゾウ:参ったな。こりゃ二分はかかるぞ。
ヒト:もっとかかります!
ゾウ:謝ればいいんですか?
ヒト:そうです。
ゾウ:わかりましたゴメンナサイ
ヒト:そんなのではだめです。ちゃんと。
ゾウ:、、、、あなたに頭が悪いと言ってごめんなさい。謝ります。
ヒト:はい。
ゾウ:これで良いんですね。機嫌直りました?
ヒト:ええ
ゾウ:まったく心がこもっていないのに簡単な人だ。
ヒト:どうして余計な事言うんですか!
ゾウ:だって誰がどう見てもそうだからバカバカしくて
ヒト:思ったことをなんでも口にするのやめてください!
ゾウ:そんな。難しいな。思ってないことを口にするなんて無理じゃないですか
ヒト:あなたとは話になりません。
ゾウ:よし。じゃあ百歩譲って、あなたはそのまま一生ぷんぷん怒って居ても良いことにしましょう。
 私はもう止めません。
ヒト:許可される筋合いは無いです。
ゾウ:とにかく話を進めます。
ヒト:で、何でしたっけ?
ゾウ:「決めましょう。決断するんです」そういう話です。
ヒト:あー、忘れてた。
ゾウ:難しく考えるわけでもなく、簡単に言うわけでもなく。
 だとすればどうでしょう?いっそのこと、何も考えずに決めてしまうんです。
ヒト:何も考えずに決める?
ゾウ:そう、何も考えずに決める。どうですか。
ヒト:、、新しい。
ゾウ:そうでしょう。では、さっそくやってみましょう。
ヒト:はい。

ヒト、「何も考えない」ということをやってみる。

ヒト:、、、、、、、、、、
ゾウ:、、、、、、、、、、
ヒト:、、、、、、、、、、
ゾウ:、、、、、、、、、、
ヒト:、、、、、、、、、、
ゾウ:、、、、、、、、、、真面目にやってます?
ヒト:やってます。
ゾウ:なんかバカみたいでしたけど
ヒト:え!
ゾウ:まあいいんです。何も考えないように行為の末、人はあーなるんです。
 あなたがバカなわけじゃない。そう見えただけです。
ヒト:ですかね。
ゾウ:決まりましたか?
ヒト:全然。
ゾウ:バカじゃないですか?!
ヒト:違うって言ったのに!
ゾウ:「何も決断しない!これこそ、バカなせる技である!」
ヒト:何ですかそれ。
ゾウ:54ページ中段!
ヒト:え?
ゾウ:読んだんだろう?あなたは頭が悪いうえに、バカだな!
ヒト:ひどい!
ゾウ:時間はいくらだってあります。
 だけどいつまでもこうして2人このまま同じことを繰り返すってのはあまりにも芸がない。
 そう思わないですか?
ゾウ:繰り返す?
ゾウ:繰り返してます!さあ!決断するんです!
ヒト:どうしてそう、急かすんですか。
ゾウ:急かすだなんて!!

ゾウ、突然、絶望する(何かの行為をする。例えば床を蹴ったり、地団駄を踏んだり)。

ヒト:どうしちゃったんですか?
ゾウ:あなたはココに来たばかりかもしませんが!!私はもうかれこれ、どのくらいいるのかわかりません!!
ヒト:、、、、
ゾウ:もう、うんざりなんです。
 毎日毎日あてどなく、同じ事を、繰り返しています。
 くる日もくる日もまるで、永遠に続くような気がします。
 そりゃあたまにはそれなりに、例えば七日に一遍くらいはいつもと違う日もあります。
 でもそれも最初だけです。すぐに飽きる。
 「どうしてここに私は居るのだろう」
 あなたもすぐに私と同じことを思うようになります。
ヒト:「どうしてここに私は居るのだろう」
ゾウ:大丈夫です。全部それに書いてある。
ヒト:これ
ゾウ:128ページ上段。
 「今、私はここに確かに居て、このようなことをやることになっている」
 これは、私があなたという存在を通すから確認できることであって、
 もしも他者という存在を失えば誰しも、その存在すら、怪しくなる。
 でも大丈夫です。存在なんて、そんなもんです。
ヒト:大丈夫ですか
ゾウ:大丈夫です。
ヒト:あなたは大丈夫ですか
ゾウ:わたしは大丈夫です。
ヒト:酔っぱらいに大丈夫かって聞いたらかならず
ゾウ:大丈夫です
ヒト:っていいますよね
ゾウ:そうですか
ヒト:頭がおかしくなりそうです。
ゾウ:129ページ中段「例えば頭がおかしいという言葉は頭がおかしくない人間が存在するという前提で存在します」。わかりますか?
ヒト:わかりたくないです。
ゾウ:納豆は腐敗していません、発酵しています!これは、人間が使い分けただけでバケ学的にはどっちも同じです。別の生命体が大豆を食い繁殖を始めたということです!そんなことはどうでもいい!さぁ決断してください!

と、ゾウは象の印の大きなクギと木槌をヒトに渡そうとする。

ヒト:ひぃ!だからちょっと待ってくださいって!考えさせて!
ゾウ:あれやこれや考えているうちに人生は過ぎていきます。決断し、行動をしましょう!
 これはチャンスです。過去に自分で決断して行動をしたと思えたことがどれほどありましたか
ヒト:それを聞きますか私に!
ゾウ:お願いします!どうかこれで!どうかこのクギと木槌で!私の急所を打ち抜いてください!!
ヒト:嫌だーーーーー!!!
ゾウ:私の決心は固いですよ!?私は次の段階に行きたいんです。毎日毎日、ここでこうして、ひたすら待ち続けるなんてもうまっぴらごめんなんです。あなたは私を解放するために、私の後にここに来たんです。
ヒト:わけがわかりません
ゾウ:わからんでよろしい!やってみましょう何事も!
 あなたの人生だって、やってみなけりゃわからない事だらけだったでしょう
ヒト:だから!私には記憶がないんです!!
ゾウ:きっと取り戻せる!!きっと!!私の急所をクギで打ち抜けば取り戻せる!
ヒト:頭がおかしい!!おかしくなる!!
ゾウ:さあ!さあ!言う事を聞きなさい!ほら!ほうら!ほら!ウヘヘヘヘヘ
ヒト:助けてください誰か!!
ゾウ:助けを求めているのは私だ!あなたじゃない!!
ヒト:助けて!助けて!
ゾウ:言うことを聞けぇ!貴様!!
ヒト:殺される!殺される!
ゾウ:だまれ!そんなつもりじゃない!黙れ!
ヒト:殺される!殺される!
ゾウ:静かに!

ゾウ、つい、ヒトに釘を打つ。

ゾウ:しまった!間違った!

 ゾウ、慌てて本を開く。

ゾウ:ルール1、ゾウがヒトにクギを刺すと、立場が入れ替わり、最初に戻る。

 暗

03■死のこと
    
 女性が本を読んでいる

象がマッチをすり、ろうそくに火をつける。
日記のようなものを読み始める。

ゾウ:私は長い間戦ってきたように思います。いつのまにか、キバもすり減り、
 足も細く耳も聞こえなくなりました。
 「いつか来る」とは思っていましたが、
 いざこういう時が来るとなると、
 なんとなくその話題を避けるうちに、
 時間が過ぎてくれることを待っているような、
 そういったズルさやら、往生際の悪さやら、
 自分の醜い所がつい表に出てしまって、
 どうも決まりの悪い毎日を無作為に送ってしまっているようです。
 元来、戦うことなどに興味も無かったはずの私が、
 なぜこんなことをすることになっているのか。
 だれかに戦えと言われたのか、
 それとも、何かの必要や目的があって、自ら武器を手にしたのか、
 もう随分昔のことで忘れてしまっているようです。
 そろそろ戦うのをやめようと、
 自分で決めるというのも出来るわけも無く、
 他の何か大きな流れによって
 もうやめねばなるまいと思うことにしたように感じます。
 ともあれこうして、
 その時が訪れることを覚悟して、
 心おだやかに1人、
 その扉が開くことも待っていられるのだという自分も発見し、
 驚き、そして、それも悪くないと思える、自分もいることにはいるのです。

04■繰り返し1

 ゾウは女性になる。ヒトが男性になる。
ゾウ、ろうそくの火をランタンに移す。

ゾウ:かなり前に流行ったって書いてあります。33ページ。
 一見普通の本なんですけど、
 たくさんのパラグラフ、ひとかたまりの文章に分かれていて、番号がふってあります。
 パラグラフの最後には必ず選択枝があるんです。やってみます?
ヒト:、、、、
ゾウ:34ページ。例えば、あなたの目の前にはモンスターが2匹、こん棒を構えて睨んでいます。
 どうする?戦う?逃げる?仲良くする?
ヒト:、、、、、、
ゾウ:どうします?
ヒト:、、、戦う。
ゾウ:パラグラフの24。、、あー残念。『右のモンスターはあなたの右足を、左のモンスターはあなたの左のほっぺたを、ガリガリかじり始めた。夜明けまでには、あなたの身体も消化されるだろう。』BAD END
ヒト:青い。、、、血?

 ヒトの服に青い血のような染みがついている。

ゾウ:(ページをめくる)あ、あった。青い血の生き物。カブトガニ。知ってます?カブトガニ。
 丸くてトゲあって虫っぽい。地球外生命体のような。南の国の浜辺に甲羅がズラリと並んで。
 食べられます。太古の生き物ですって。何万年も進化もせずに生き残ってる。
ヒト:ケガはしていないと思うんだが。
ゾウ:青いんですか?血。
ヒト:血って青、だっけね?
ゾウ:質問ですか?
ヒト:だれ?
ゾウ:ゾウ?
ヒト:ゾウ?
ゾウ:ゾウです。
ヒト:そんなだっけな。象。
ゾウ:最後に象を見たのは?
ヒト:いつだっけな。
ゾウ:忘れちゃったんですか
ヒト:象?
ゾウ:ええ
ヒト:覚えてないな。象。なんか、もっと、特徴無かったっけ。象。
ゾウ:、、、あいまいなんですね。やっぱり。
ヒト:やっぱり?
ゾウ:ええ、やっぱり。
ヒト:、、ここどこ?
ゾウ:どこに見えますか
ヒト:屋根裏部屋
ゾウ:そう見えてるなら、そうなんですよきっと
ヒト:ここどこだ?
ゾウ:それ二回目です。
ヒト:いや、どこの屋根裏だ?
ゾウ:わかんないんです。
ヒト:いつからここにいる?
ゾウ:さっき私と会話をはじめた頃から。ですかね
ヒト:時計、時計は?
ゾウ:あります。一応。でも。(時計のある方向を見る)
ヒト:あれが時計?!あんなもん時計じゃない。時計っていうのはもっとこう、なんだ、えーと、ほら
 、、、あれ?時計の針ってのは何本だったかな?三本?四本?
ゾウ:さあどうでしたっけ
ヒト:二本。二本だ。たぶん、おそらく。
ゾウ:あいまいなんですねえ
ヒト:寝て、起きたばかりで、頭がぼんやりしているのかと思ったけど、どうもそうじゃない。寝てた?
ゾウ:さぁ
ヒト:恐ろしい事に気がつきました。
ゾウ:どうぞ。
ヒト:自分の名前というものがあったように思うんだけど、少しも思い出せない。
 それどころか、もう、もともと無かったんじゃないかとすら思いはじめている。
 あんた、名前を知らないか?
ゾウ:あんた
ヒト:あんた。知らないかあんた。
ゾウ:知らないんです。わたし。
ヒト:それは、ろうそく。あれは窓。外は月、、あんたは、、
ゾウ:ゾウです。あんたって呼ぶのやめてください。
ヒト:ペン、インク、テーブル、イス、カベ。他の名前は全て思い出せる。
 自分の事だけがわからない。そういう感じ。
ゾウ:(ニコニコしている)
ヒト:なんか嬉しそうだ。
ゾウ:久しぶりにヒトとしゃべってるから。
ヒト:ヒト。ヒトか。象じゃない。合ってる?私はヒトだ。ゾウじゃない。だろ?あんたはゾウ。
ゾウ:先輩。
ヒト:え?
ゾウ:いちお、ここでは先輩だから。あんたって呼ぶのやめてください。やめてくれる?
ヒト:チッ(舌打ち)
ゾウ:は?!
ヒト:いやいや!申し訳ない。先輩。
 教えてください。先輩。ここはどこで。ボクは誰で何がどうなってこんなことになってるんですか
ゾウ:質問は一つずつお願いします。あ。一つずつにしてくれる?
ヒト:チッ(舌打ち)
ゾウ:舌打ち?舌打ちしてくれている?
ヒト:いやいや!申し訳ない。先輩!舌打ちじゃありません。なんかこう。変で。口が。
ゾウ:口が。
ヒト:では先輩、ひとつめの質問から答えていただけますか
ゾウ:一つ目の質問は
ヒト:「ここはどこですか?」
ゾウ:違います。
ヒト:え
ゾウ:一番最初はこうです。あなたがボーーッとした顔で私の話を聞いていて、
 「青い、、血?」とかがボーーッとした顔で言って、
 その後に「ケガはしていないと思うんだが」ってボーーッとした顔で
ヒト:やめてくれないかそれ
ゾウ:そして私が「青いんですか?血?」って聞いたところ、あなたが
ヒト:あ、「血って青だっけね?」
ゾウ:それが一つ目の質問でした。
ヒト:ずいぶん戻ったな。
ゾウ:答えなくていいなら別に。
ヒト:いやいや先輩お願いします。質問。血って青ですか?
ゾウ:答え。人間なら血は赤です。カブトガニなら、血は青です。
ヒト:つまり
ゾウ:あなたがヒトではなくカブトガニである可能性が出てきました。
ヒト:まさかだな!
ゾウ:しかし、あなたはケガをしていません
ヒト:となると
ゾウ:カブトガニの返り血かもしれません
ヒト:つまり
ゾウ:あなたはカブトガニを殺したのではないですか!
ヒト:、、、、、
ゾウ:、、、、
ヒト:、、なんでだ
ゾウ:食べたり
ヒト:食べない!
ゾウ:じゃあカブトガニだ
ヒト:キズ口は?
ゾウ:ふさがったんじゃない?
ヒト:出鱈目なこと言いやがって!
ゾウ:せっかく答えを出しても気に入ったものしか受け入れないなら
 初めから真面目に答える必要はんてないもの
ヒト:、、、、、わるかった。おちつく。許してくれ。たのむ。言うことを聞く。あなたは私の先輩だ。
ゾウ:わかりました。
ヒト:少し、時間をくれ。時計。
ゾウ:(指をさす)
ヒト:あれが時計か?!あんなものぅ!時計じゃない!!
 、、、、悪かった。落ち着く。許してくれ。頼む。言うことを聞く。あなたは私の先輩だ。
 でも混乱しているんだ。

 ゾウ、本の中のカブトガニの絵を見せる

ゾウ:これです
ヒト:え
ゾウ:カブトガニ
ヒト:下手?
ゾウ:私ではないです。書いたの。
ヒト:、、、似てる?
ゾウ:いえ
ヒト:よかった
ゾウ:体内では白いんですけど酸化すると青くなるんですって。外に流れ出たら。
ヒト:なに?
ゾウ:カブトガニの血
ヒト:、、、
ゾウ:神様を信じますか?
ヒト:信じない。
ゾウ:あ、即答。
ヒト:本当だ。これだけは自信がある。もう一度聞いてくれ。
ゾウ:神様を信じる?
ヒト:信じない!もう一度!
ゾウ:神様を
ヒト:信じない!もっかい!
ゾウ:神様
ヒト:信じない!自信がある!私は神を信じない!気持ちいい!!気持ちいい!!
ゾウ:魂とか。
ヒト:信じない!気持ちいい!
ゾウ:死後の世界とかも
ヒト:信じない!信じないぞ!うおおおう!気持ちいい!
ゾウ:はぁ(タメイキ)
ヒト:、、、あれ?
ゾウ:お。
ヒト:死んだんじゃないか、私は。
ゾウ:、、おおおおう
ヒト:、、、ここ、死後の世界か。、、、そうなのか。
ゾウ:信じないんじゃなかったですか?死後の世界
ヒト:信じないよ
ゾウ:じゃ、違うんじゃないですか。
ヒト:でも君、感心していた。私の、、洞察力に。
ゾウ:洞察力。
ヒト:「、、おおおおう」
ゾウ:あーーそれか。感心て。
ヒト:君の方がここに先にいるんだから、だから先輩なんだから、
 君が持っている情報を、あてにするのは当たり前だ。
ゾウ:なるほど
ヒト:現に君は、その紙の束を当てにしている。
ゾウ:そうなんですよ。困ったことに。
ヒト:どういう意味だ?なんだか君の言葉はしばしに、なにか重要なヒントがあるような気がしてきた。
ゾウ:いやいやいやいや
ヒト:つまりあなた。天使ですね
ゾウ:突然なんですか?
ヒト:死んで最初に会うとすれば、天使じゃないか。
ゾウ:初めて言われました。
ヒト:女だし。天使だ。
ゾウ:女?
ヒト:女だろ?
ゾウ:みえますか?
ヒト:え?ちがう?
ゾウ:でも私、ゾウですけど。
ヒト:なるほど、、、
ゾウ:ええ
ヒト:メスの象の天使。
ゾウ:いる?
ヒト:あ!いる!象の顔の神様!ちょっと色っぽくてピンクノ!なんていったかな。
ゾウ:そういうことは覚えてるんですね
ヒト:あ、ほんとだ。

ゾウ、本をめくる。

ゾウ:インドのゾウの神様、ガネーシャ。頭が象。乗り物はネズミ。
 ずる賢く、かんしゃく持ち、嫉妬深い、キバの片方が折れている。
ヒト:日本じゃ「聖天さん」大聖歓喜天(だいしょうかんぎてん)と呼ばれていたんです。えへん。
ゾウ:へー。

ゾウ、本に書き足す。

ゾウ:「大聖歓喜天」
ヒト:その紙の束は?
ゾウ:覚え書きです。
ヒト:ずいぶんある。
ゾウ:私が来る前からありますから。

ゾウ、本をしまう。

ヒト:で、つまりあなた。インドのゾウの神さま。メスの。先輩。
ゾウ:もう何がなんだかですね
ヒト:いいですか?暫定的に。
ゾウ:暫定的ってどういう意味ですか?
ヒト:とりあえずとか当面とか
ゾウ:へー
ヒト:率直に伺います。私は天国行きですか?
ゾウ:は?
ヒト:私は極楽行きですか?
ゾウ:え?
ヒト:地獄行きなんてことはないでしょうね
ゾウ:私が決めるんですか
ヒト:だってメスの神様でしょう、先輩。暫定的に。
ゾウ:じゃあ、決めますよ。
ヒト:どうぞ
ゾウ:じごく
ヒト:このやろう!
ゾウ:口が悪い
ヒト:口が悪いと地獄へ行くのか!
ゾウ:うるさい
ヒト:うるさかったら地獄へ行くのか!
ゾウ:暫定的に
ヒト:貴様に何の権利がある!!
ゾウ:自分で言い出したのに
ヒト:撤回する!!ハイ暫定終了!!
ゾウ:勝手だ
ヒト:もういい!自分で決める!!あ。そうだ、自分で決めるぞ!
ゾウ:自分で?
ヒト:天国行きか、地獄へ行きか、そのくらい自分で決めてやる!
ゾウ:、、、、スゴーイ
ヒト:黙れ!今決めているところだ!
ゾウ:(口チャックする)

 ヒト、考えている

ヒト:困った。
ゾウ:、、、?
ヒト:記憶がない
ゾウ:(ニコニコ)
ヒト:自分が善人だったのか悪人だったのかを知るための生前の記憶がない
ゾウ:あーー。困りましたね(ニコニコ)
ヒト:困った。どうしよう
ゾウ:どうしましょうね(ニコニコ)
ヒト:おい!人が困ってるのにニコニコするな!
ゾウ:あきらめますか
ヒト:あきらめない!私は、次の段階に行きたいんだ!
 こんな屋根裏で死んでたまるか!
ゾウ:すでに死んでんじゃなかったっけ?
ヒト:そんなこと済んだことだ。前進あるのみ。私は天国で生きるんだ。
ゾウ:言ってることがめちゃくちゃですね
ヒト:!!わかったぞ
ゾウ:ポジティブな人だなぁ
ヒト:試練なんじゃないか?これは。
ゾウ:、、、
ヒト:試されているんだ。神に。
ゾウ:、、おおおおう、、
ヒト:感心しているな?
ゾウ:ある意味、感心しています。
ヒト:そうい言えば先輩。あんた最初に言っていたな選択肢がどうの!
ゾウ:あれは
ヒト:あれがヒントだったんだ!
ゾウ:あれはひまつぶしに
ヒト:これはゲームだ。
ゾウ:、、、
ヒト:この屋根裏からどう抜け出すかを神に試されているんだ。どうだこの洞察力!
ゾウ:おおおおう(拍手パチパチパチパチ)
ヒト:感心の上に拍手までありがとう
ゾウ:もう尊敬することにしました。
ヒト:なぜ屋根裏なのか。これが全ての出発点となる。君、屋根裏の定義を。
ゾウ:屋根裏とは(本を開く)「屋根の裏側。天井板の上」
ヒト:なるほど、屋根の裏側、天井板の上。つまりこういうことだ。
 我々は屋根の裏側におり。天井板の上に乗っている!
ゾウ:そのままですがそのとおりです
ヒト:屋根には天窓がある。外には月。天井へは階段で昇。階下には部屋が見える。
 一見!この二つのどちらかが脱出口にも思える。しかし神の試練はそのように簡単であるはずがない!
 つまり!これらは全て幻だ。

 照明不思議な色
 SE不思議な音

ヒト:見たか今の不思議な光!聞いたか今の不思議な音!
ゾウ:見ました!聞きました!
ヒト:私が思うに、窓の外は異空間と化しておる。
 まるで宇宙空間のような時空の歪みのような
 まるでサルバドール・ダリや藤子F不二雄の描く世界のような
ゾウ:本当だ。本当によくある感じの異次元!
ヒト:階下には地獄が広がっているはずだ。
ゾウ:ヒッ!
ヒト:鬼どもが人を血の池に溺れさせ、針の山を歩かせていることだろう
ゾウ:本当だ。まるで絵に描いたような地獄
 とても、なんというか紋切り型の地獄!
ヒト:紋切り型?
ゾウ:判で押したような地獄です!
ヒト:出口はどちらでもない。
ゾウ:じゃあ、どこにあるんですか?
ヒト:よく見ろ。
ゾウ:え
ヒト:こんなの、見たことあるか?

 上を指差す。天井に扉がある。

ヒト:屋根に扉がある
ゾウ:、、見たことない

 本当に、扉が屋根にくっついている。

ヒト:これが所謂、天国への扉だ。
ゾウ:つまり
ヒト:ヘブンズドア。
ゾウ:、、、、なるほどぉ(と、ヒトの顔を見る)
ヒト:なぜ私を見る。ドアは上だ。
ゾウ:いや。よく思いついたなぁと思って。
ヒト:どういう意味だ。
ゾウ:ルール2。いや、続けてください
ヒト:?ルール?
ゾウ:ヘブンズドア
ヒト:屋根裏の屋根の裏に扉がある。
 ここから私に天国へ来いと、主は言っておられる。
 私は試練をクリアしたのだ。
ゾウ:本当に天国へ続いてるんですか?
ヒト:当たり前じゃないか。私が地獄へ行く人間に見えるかね?
 確かに君には暴言を浴びせた。ただ私は本来はこのように清い人間なのだ。
 さっきはちょっと混乱していたからな。
ゾウ:何かのワナじゃないですか?
ヒト:ワナ?どうして神が私をワナにかける必要があるんだい?
ゾウ:なんか小さいし。
ヒト:、、しかし、扉だ。
ゾウ:(本をめくる)イタリアのフィレンツェ、サンジョバンニ洗礼堂のは、
 もっとでかくて、もっと重厚でかっこいいですよ。金色で。
ヒト:それは人間が作ったレプリカです。
ゾウ:初期ルネサンスの彫刻家・金細工師、ロレンツォギベルティさんが27年かけて製作「天国への門」
ヒト:そっちは「もん」!!こっちは「とびら」!!一緒にしないでいただきたい。
ゾウ:あれは
ヒト:ヘブンズドアです。神が作った。
ゾウ:神は?
ヒト:いない。
ゾウ:え?
ヒト:いる!
ゾウ:ずるい。
ヒト:ずるくない。今日から信じました。
ゾウ:バチが当たるんじゃないですか?
ヒト:バチ?
ゾウ:想像してください。バチ。

 二人、想像する。

ヒト:いやいかん、そんなバカな
ゾウ:何を想像しましたか?
ヒト:別に何も。
 では私は天国へと旅立ちます。
 ご婦人よ。短い間でしたが大変お世話になりました。

椅子を持って来て、乗る。

ヒト:いざさらば。もう、お会いすることは無いでしょう。
 私はこんなに安らかな気持ちになったのは、生まれて初めてのことかもしれない。覚えてないけど。
 ああ、死んでからこのような気持ちになるだなんて。
 人間というものは、どうしてこう、おろかなのでしょうか。アーメン。

扉をあける。バラバラと落ちてくる多量の石コロ。

ヒト:わー!
ゾウ:わー!

ヒト、倒れる。そのまま、ぴくりともしない

ゾウ:(本を読む)ルール2。想像したことは、起こる。
ヒト:(寝たまま)どうせ『無神論者には天国なんて用意されていない』そういうことだろ、、。
ゾウ:あ、生きてた。
ヒト:たぶん。おそらく。そうらしい
ゾウ:あいまいなんですね
ヒト:あいまいにしときたかったらしい。たぶん。おそらく。
ゾウ:理屈は通ってたのに。
ヒト:へ理屈だ。どうせ何も覚えちゃいないんだ。思いつく事も平凡でつまらない。
 どうせ誰かが考えたことだ。すがるものなんて何もない。絶望。
ゾウ:え?落ち込んだんですか?
ヒト:落ち込んだね。
ゾウ:え!まずい!落ち込まないで下さい!
ヒト:善人なのか悪人か。人間なのか、なんなのか。
ゾウ:待ってください!落ち込むとまずいんです!
ヒト:オスなのかメスなのか。はたまたこれは夢まぼろしか。
ゾウ:落ち込むとほら!
ヒト:どうしてここに私はいるのだろう。いや待てよ?
ゾウ:ああまずい
ヒト:そもそもここに私は本当にいるのかしら。
ゾウ:またかー
ヒト:あれ?体が勝手に。あれ?これ体なのか?
ゾウ:そこ!壁!
ヒト:え?壁?どこに?ここ?これが壁?壁に見えるだけじゃなくて?
 あれ?壁を私は通り抜けていくな。どうしてまた。
 おや?あんたがどんどん遠ざかるぞ。先輩~~

ヒト、客席の方向へいなくなる。

ゾウ:ああ。今度こそと思ったのに。一体いつまで、ここに私はいるのやら。

 ゾウは、また次のヒトが来るのを待っている。

05■繰り返し2

 ゾウは女性のまま。ヒトがいる。ヒトに青い血はついていない。

ゾウ:かなり前に流行ったって書いてあります。33ページ。
 一見普通の本なんですけど
 たくさんのパラグラフ、ひとかたまりの文章に分かれていて、番号がふってあります。
 パラグラフの最後には必ず選択枝があるんです。34ページ。
 あなたの目の前にはモンスターが2匹、こん棒を構えて睨んでいます。
 どうする?戦う?逃げる?仲良くする?どうします?
ヒト:仲良くする。
ゾウ:パラグラフの26。『右のモンスターと親友になった。左のモンスターが嫉妬した。左のモンスターから痛恨の一撃。あなたの肉は左のモンスターの胃の中に、あなたの骨は親友のゴブリンの首飾りに』BAD END
ヒト:おれ、死んだのかな。
ゾウ:おおおおう(パチパチパチ)
ヒト:え?
ゾウ:今回、展開の早さがすごい
ヒト:ここ、死後の世界
ゾウ:神様は?
ヒト:信じてなかったけど、ここまで何もわかんないとさすがに。
ゾウ:期待できそうかも!
ヒト:俺のこと知ってる?
ゾウ:うーん、知ってるっちゃあ、知ってる。
ヒト:さっきから、なんていうの、デジャヴュ
ゾウ:デジャヴュ!既視感!すでに見た感じ!(本)
ヒト:前にここ、来たことがあるような気がするし、あんたとも話したことがあるような気がする。
ゾウ:あんた。
ヒト:あんた、味方?あったことある?
ゾウ:あるある、たぶんある
ヒト:屋根裏部屋?
ゾウ:そう見えるならそうなんですきっと!
ヒト:いつからここに
ゾウ:さっき私と会話を始めた頃から!ですかね!♪
ヒト:あれが時計?!
ゾウ:どうでしたっけ
ヒト:変な時計だけどあれも時計なのだろう。
ゾウ:とうとう全てを受け入れるヒトが来た!
ヒト:なんのはなし?
ゾウ:時間はいくらだってあります。だけどいつまでもこうして2人このまま同じことを繰り返すってのはあまりにも芸がない!そう思いませんか?
ヒト:同じこと?繰り返す?
ゾウ:もう、うんざりなんです。

ゾウは象の印を人に持たせようとする。

ヒト:それ、なに?
ゾウ:象印です。
ヒト:ゾウジルシ?
ゾウ:私が象であるという印です。
ヒト:どっかで聞いた音だ。
ゾウ:間違いなくデジャヴですきっと!
ヒト:あんた大丈夫ですか
ゾウ:大丈夫ですです!あんたって呼ぶのやめてちょうだい!!
ヒト:え
ゾウ:129ページ中段「例えば頭がおかしいという言葉は頭がおかしくない人間が存在するという前提で存在します」。わかりますか?納豆は腐敗していません発酵しています!これは人間が使い分けただけでバケ学的にはどっちも同じで別の生命体が大豆を喰らい繁殖を始めたということです!むしゃむしゃむしゃむしゃあ!
ヒト:、、、、、。
ゾウ:むしゃあ!そんなことはどうでもいい!さあ!決断してください!
ヒト:これで何をすれってんだ!!
ゾウ:お願いします。どうかこれで、どうかこのクギと木槌で!!私の急所をつらぬいて!
ヒト:あなたの急所をつらぬくんですか?!
ゾウ:さあもうやっちゃいましょう!!スコンと一発!!打ち抜いてしまいましょう!!うらみっこなしです!!
ヒト:わけが
ゾウ:わからんでよろしい!あなたの人生だってやってみなきゃわからない事だらけだった
ヒト:あれ?!記憶がない!
ゾウ:さあ!!言う事を聞きなさい!ほうら!うへへうへへ
ヒト:助けてくれ!
ゾウ:助けを求めているのは私です!貴様!
ヒト:殺される殺されるー!
ゾウ:だまれ!
ヒト:殺される殺されるー!
ゾウ:しずかに!

 ゾウ、つい、ヒトに釘を打つ

ゾウ:しまった、、ルール1、ゾウがヒトにクギを刺すと、立場が入れ替わり、最初に戻る。
 たぶん、また間違った、、、ああ

 落胆。

06■最初

 ゾウは男性である。
また新しいゾウ、日記のようなものを読みはじめる。

ゾウ:「戦象(せんぞう)戦うゾウ。紀元前331年の地中海においてガウガメラ戦争において、初めて戦争に、、、、、」、、ゾウ。

次のページへ

ゾウ:「ローマ軍は、豚に火をくくりつけて戦場に放ち、戦象を混乱させた。」、、、ゾウ。

次のページへ

ゾウ:「戦象の急所にはあらかじめ大きな釘、、」、、、ゾウ。

次のページへ

ゾウ:「インドのゾウの神様、ガネーシャ。頭が象、、、」、、またゾウ。

次のページに行こうとすると、書き足したような一文をみつける。

ゾウ:?書き足し?「日本では、「聖天さん」と呼ばれた。大聖歓喜天。」

さらにパラパラとめくる。

ゾウ:あ、ここも「元来戦うことなど興味も無かったはずの私が、誰かに戦えと言われたのか、それとも、、」
 だれが書いたのかなあ。

ろうそくの火をランタンに移す。
明るくなる。他には誰もいない。

ゾウ:、、、一人。

ペン。インク。白い紙。

ゾウ:これ、僕のかなあ。

 首にかかっているクギをさわる

ゾウ:釘。これは僕のだな。あ。

 本に戻る


ゾウ:「戦ゾウの急所には、あらかじめ大きな釘が取り付けられて、
 それをヒトが木槌で叩くことでゾウを殺した」、、、釘、木槌(触る)、、僕は、、

 ペンにもどる。インク

ゾウ:あ、青い。えーと、名前。あれ?自分の名前、
 他の名前は思い出せるのに。あ、何か重要なヒントがあるかも。あれに。

 本。

ゾウ:、、、、、「北メソポタミアでは、スルタンが『この者は有罪だ』と言うと、ゾウはそのヒトを長い唇で投げ上げて殺した」

別のページ

ゾウ:「ゾウはその歯をヒトに突き立てても殺す」へぇ、、あ。また書き足し、、、『ワタシハ、象』

ペンで「 象 」と書く

ゾウ:ゾウ、、、
 、、うん。名前があった方が、(うんうん)いいかもしれない。

部屋を探索しはじめる。ゴミ箱を発見。

ゾウ:ゴミ箱

 中には、、まず石。

ゾウ:石?、、ゴミ?


さらに、紙ゴミがまるめてある。

ゾウ:あ。

罪悪感もありつつ、拾って、開く。

ゾウ:?(お客には見えない)、、、、象。なんだこれ。あ、これだ。クギ。じゃあこれは、木槌。
 、、これは、、あ、ヒトか。ふーん。
 あれ?
 誰か来るのかな。

 またゴミを丸めて捨てる。学習は続く。時間が経つ。

07■ヒトが来る

壁を通ってヒトが来る。青い血がついている。

ヒト:(ボーーーッとしている)
ゾウ:、、、。すごい。壁から生まれた。あれ?会ったことある気がする。 こんにちわ。あ。青い。
 もしもし。、、生まればかりでぼんやりしているんだな。
 、、、ともあれ、これは事件だ。僕も書き足そう。アレに。

象、書きとめに行く

ゾウ:「かべから生まれる、青い血の、ヒト?ヒトだよな」
ヒト:わ!!びっくりした
ゾウ:びっくりした。
ヒト:、、あれ?こんにちは
ゾウ:こんにちは
ヒト:初めて会いました?
ゾウ:いや。なんだか、会ったことあると気がするんだよ。
ヒト:そう。この部屋も、見覚えがあるような。
ゾウ:君も?
ヒト:ええ
ゾウ:そう
ヒト:あなたは?
ゾウ:ゾウ。
ヒト:そんなんでしたっけ。象。
ゾウ:あなたも忘れてますか。
ヒト:もっと特徴なかったでしたっけ象。
ゾウ:あいまいなんですよ
ヒト:あいまい
ゾウ:本当のゾウがどうかはあいまいなんです。あの紙の束に書いてあること以外は。
ヒト:それ?
ゾウ:僕、一人でかなり長い時ここにいたから、象じゃないよりは象の方がいいかなって。
ヒト:象じゃないよりは
ゾウ:象の方が。
ヒト:あー
ゾウ:自分で決めたんです。あれにも書いてたし。
ヒト:あー。決めていんですね。自分で。名前。
ゾウ:たぶん。あなたどうします?名前。
ヒト:あれ?名前。
ゾウ:あ、そうか。
ヒト:私、名前、なかったでしたっけ。
ゾウ:覚えてないんですよ。
ヒト:ほんとだ。
ゾウ:これ、不思議なんでしょうね。
ヒト:たぶん、これは、普通じゃない感じするなあ。
ゾウ:はいー。
ヒト:あー。
ゾウ:(にこにこ)
ヒト:、、、、、、
ゾウ:(にこにこ)
ヒト:、、、、、、
ゾウ:(ニコッ)
ヒト:、、、、、、
ヒト:あの
ゾウ:はい?
ヒト:こんな感じですか?
ゾウ:こんな感じ?え?どんな感じ ?
ヒト:過ごし方、というか
ゾウ:過ごし方?
ヒト:ここでの
ゾウ:あー過ごし方。
ヒト:はい
ゾウ:いや、僕も正しい過ごし方とかわかんないです。全然。
ヒト:特に、やる事、ない感じですか?
ゾウ:!!(ショック)、、、そう言えば、そうですね。
ヒト:今、思ったんですか?
ゾウ:いや、今までは、待ってたから。
ヒト:だれを?
ゾウ:ヒト。
ヒト:ヒト。
ゾウ:たぶん、あなたを。
ヒト:あー
ゾウ:なんか、やりますか。
ヒト:え
ゾウ:あー、なんか用意しとけば良かったな。あんなに一人でいたのに。何もしてなかった。
ヒト:あ、すみませんなんか。余計なこと言って。
ゾウ:いやすみません。考えます。なんか(そわそわ)
ヒト:いや、お構い無く。
ゾウ:あ、そっか!

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たくさん台本を書いてきましたが、そろそろ色々と人生のあれこれに、それこれされていくのを感じています。サポートいただけると作家としての延命措置となる可能性もございます。 ご奇特な方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。