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「そろそろ左派は〈経済〉を語ろう」著 ブレイディみかこ 松尾匡 北田暁大

久しぶりに一冊読みきった。対談形式で読みやすかったこともある。
元々、なぜ日本の野党は経済政策の無策を批判されているのだろう?という思いがあった。立件民主党の政策などを調べたが、アベノミクスに比肩するほどのパッケージ政策は見受けられず、どちらかというと多文化主義的なリベラル政策に終始しているように見えた。

それはとてもいいことだ。必要不可欠なことだが、では市井の人々がそれによって英国や米国のような二大政党制が可能になるまでに野党を支持できるかというと、残念ながら足りないのではないかと思った。民主は経済に弱いと言われる、それが日本の左派の不幸であり、そもそも日本において再分配に力を入れるボトムアップ型の政党があると言えるか、微妙なところである。

まぁそういった意識から読み初めた本書だが、内容として序盤にケインズ経済学的な見地が豊富に取り扱われており、供給能力が最大活用されない中で、需要を押し上げて行くことによる経済成長の達成について記載がされていた。
実際にはこうした問題は人口の増減の影響も大きいはずで、今後経済規模を保つ上でいかにマンパワーを確保していくのか?という問題にほとんど触れられていなかったのは、やや玉にキズか。
そういう意味では、またしても、不妊治療の保証などといった人口増加政策に舵を切ったのが自民党ということで、なんとも言えない感じなのだが。

加えて、重要な指摘であったのが、下部構造だけでなく上部構造も大事だよね、という考え方がいつのまにか上部構造ばかりが指摘されるようになり、労働党等の代表的な左派政党がリベラルな政策ばかりを前面に押し出すようになってしまったという事。
これは日本でも全くそうで、元々俺が感じていた不満がまさに凝縮されていた。

下部構造を一度しっかり考え直し、学び直す必要があるように感じる。つまり、経済の面からいかに民主主義を達成するのか、である。
具体的には、どのように政策として立案するか、さらに言えば豊かさからこぼれ落ちてしまった階級の人々に、いかに再起の機会を提供できる社会であるのか?という事。
現状では、日本においては英国のように「学び直し」の機会はほとんど提供されていない。セーフティネットとしての生活保護は保証されているが、それでは不十分なはずだ。

上部構造の問題点の勉強も必要だが、ではそれを解決するとなると結局下部構造を改善するしかない部分が大きいのだと思う。

次の読書にしっかりつなげていこう。

・アマルティア・セン 社会保障によりどう階級ごとに平等を達成するのか、平等とは何か
・ポール・クルーグマン「そして日本経済が世界の希望になる」法人減税と経済成長との無関係性について
・トマ・ピケティ「20世紀の資本論」
・スチュアート・ホランド「Beyond Austerity 」
・ケインズ「雇用、利子および貨幣の一般理論」
・ケン・ローチ「1945年の精神」
・ジャスティン・ゲスト「the new minority」
・岩井克人「不均衡動学の理論」流動性選好について
・北田暁大「責任と正義」

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