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朽ち果てる前の風合い

窪田商店のトタン壁にコーラ瓶の看板が錆びている写真を見せていただいた。
掲示した当初はおそらく鉄板に塗料印刷したてのピカピカしたものだったろうが、日光と雨風にさらされ、塗料印刷が落ちると同時に赤錆が出てきたようである。
ていねいに書くと、看板は鉄板に地の白塗料が塗られ、その上にコーラ瓶の黒塗料が塗られた。月日がたち、地の白は赤錆になり、コーラ瓶は今のところ黒塗料がすべて落ちて、雨水の影響で、地の白が流れるように剥げ落ち、錆びている。
掲示した当初、雨が当たればコーラ瓶に水滴がついたようなシズル感が出たりしたのだろうが、今や看板はリアルを超えた感がある。瓶詰めの黒い液体は様変わりし、流れ出るカラメルと泡の滝に光り輝いているように見える。時空を超えた喜びに溢れている。私としては今の看板にあるコーラを飲んでみたい気がする。(実際に飲めば腹をこわすのだろう。)
やがて時とともに、白が剥げ落ちると、先に錆びていた地に瓶の影がおぼろげに残るのみとなり、おそらく見分けがつかなくなって錆一色になるのであろう。
今のは蛇足だが、製作者の意図とは別の価値が生まれたものとしてギリシャ彫刻が思い出される。もともとは着色してあった石像などの完成当初の色を復元した図を見たことがあるが、人形になっている。
それに対して現在は白を基調とした陰影に富む石像は、静かに訴えるものがある。欠けていたりするとなおさらだ。
まとまらなくなってきました。

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