浜崎 輝樹

農家 https://youtube.com/channel/UC8BHzVN4XMb…

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捨て台詞にソ連

冬のアルバイト。今日から遠方の拠点を2往復しないといけなくなった。 車で往復30分ほど。先方でやらなければいけない仕事はない。ただのドライブ。今までは1往復でよかった。 無人の拠点に行ったことを証明する手段はないから、行っても行かなくても誰にも分からない。それでもやれというからやる。とてもまじめ。 会社員をしてた12年前、このような無意味な仕事はいくらでもあった。だから驚きはない。ただ、12年経っても何も変わってないのだという点には驚く。 やることがないので散歩をする。

    • 夏のロスタイム

      「秋ハ夏ト同時ニヤッテ来ル。」という太宰治の言葉に共感できる人は、きっと雪国の人間だ。 「夏の中に、秋がこっそり隠れて、もはや来ているのであるが、人は、炎熱にだまされて、それを見破ることが出来ぬ。」と続く。 ネムノキの下 クルミの葉 色づく 夏雲の影 コスモス 花茎を伸ばす この土地に完全無欠の夏なんて来ない。 夏至のあとはロスタイムみたいなものだ。 6月を見送って振り返ると、遠くで秋がこちらを睨んでる。 笛をくわえて夏の時計が終わるのをちらちらうかがっていやがる。

      • 灰色山

        桜が終わって少しすると、山が灰色になる。 半日か、せいぜい一日ぐらいか。季節の巡りの中では一瞬と言っていいくらいの、わずかな時間だけ見られる色だ。 明日にはもう、山の下から緑が走る。 実際のところ灰色なんてことはないはずで、ちょっとした光の加減でそう見えるのだろう。 山に入ってそばまで行けば、理由も分かるに違いない。 さりとて無理に知らなくてもいい。 河童も住めない世界では、知らないでいることの一つや二つ、残しておいた方が心が躍る。

        • シャッターは開かない

          9年前この町に引っ越してきて最初にしたのは、雑誌の定期購読を頼むことだった。 普段はAmazonでしか本を買わないけど、少しは町に貢献できるかと雑誌だけは本屋で買うことにしたのだ。 町に1軒だけの本屋は老夫婦が営んでいた。 いつ来ても半分だけ閉じられていたシャッターは、いつ見ても深夜1時のまぶたを連想させた。 レジにはビニールが掛けられていて、ビニールには埃が積もっていた。 去年の夏、体調を崩し福島から息子に手伝いに来てもらってるという噂を聞いた。 ぼくがしていたことは自

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