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星組「ザ・ジェントル・ライアー」ロバート・チルターン卿語り

「ザ・ジェントル・ライアー」はコメディなんですけど
 綺城さんが演じるロバート・チルターン卿の“救済の物語”であるとも感じました。
 彼は貧しい秘書官から今をときめく下院議員かつ外務次官に出世していずれは首相とまで目され、美しい妻との仲も睦まじく「完璧」と称賛される人物ですが
 本当はそれまで「高潔な紳士」「理想の夫」ともて囃されるたびに、過去の影に脅かされ苦しんでいたのでは?

彼が過去を悔恨してるとは思いません
 地位を得るためには必要だったと、あれが無ければ今の自分はいない事もわかっています。その証拠にひと言も弁解しません、「汚いお金」とまで罵られても。でも恐れてはいた、幸せや賞賛は砂上の楼閣と感じていたのではないかと。

ローラの出現により、苦悩の果てに全てを捨てる覚悟で
 過去の自分と決別し、愛も地位も富も全てを失う可能性が高い上で、あの演説に臨んだ彼の気概がどれほどのものであったのか
 あの演説の時点では、彼は未来に失脚と嘲笑を見ていたと思います。それでも自分の正義を貫いたチルターン卿に惜しみない拍手を贈りました。
 妻に受け入れてもらえて、更なる名誉を手に入れたのは、結果論です。
 
アーサーの尽力もあり、彼は過去から解き放たれ
 良い方向へ導かれました。でもそれは、チルターン卿がチャンスを掴んだ後に1つずつ積み重ねてきた精進から生まれた包容力にもよるのだと考えます、綺城さんはそこまで表現されていると感じました。やっぱり我がご贔屓は!天才です!!

演者が綺城さんでなくても、チルターン卿には
 感情移入していたと思います。でもやはり、演技巧者である綺城さんが緻密に練り上げ、ご自身の全てを注ぎ込んで臨まれたからこそ、あそこまで魅了されたのだとも思い非常に感動しています。

ハッピーエンドなのは知ってましたけれども
 固唾をのんでチルターン卿の越し方行く末を見守りました。
 話の細かい内容は知らないままだったので、彼が幸福になれて本当によかったと心から思います。やっぱり原作を読まずに観劇して大正解でした♪


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