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湖のそばで


「浜縮緬工業協同組合」、通称「浜工」
今回のプロジェクトに関わる3事業者や長浜市内の白生地製造業者、全12社でつくる組織で、白生地製造の最終工程である精練、そして検品を担います。
これまでにもたびたび登場してきた“精練“、その現場を訪ねました。

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精練は本来繊維の不純物を取り除くことを指しますが、シルクの場合はセリシンという表面の膠質を取り除くことが目的。
シルク本来の光沢としなやかさ、そしてシボが表れ、「ちりめん」生地になるのです。
浜工は、ちりめん生地に特化した精練工場としてシボの出し方、その美しさに定評があります。

少し難しくなりますが、浜工のウェブサイトを引用します。

「元来縮緬の緯糸には強い撚りがかけられているため、約40~60%の撚縮みがあります。この生機を精練液(アルカリ石鹸)で煮沸することによってセリシンは溶解します。この分の隙間の空間が出来たことにより、経糸とガッチリと交差していて縮む場所が無かった撚り糸(緯糸)はその出来た空間へ縮もうとします。このことによってシボが形成されます」

撚糸や織り方によってもシボの形状は変わってきます。
つまり、撚糸+織り+精練、これらによって生地に凹凸(=シボ)が生まれ、しなやかさ、陰影や肌触りの良さといった特徴を作り出します。
事業者は、自社ならではのシボを出そうと、精練での縮みを計算に含め撚りの強度や織り方などをさまざまに試行、仕上がりを想定します。
また、浜工にとっては、事業者が持ち込んだ生機(きばた・織機から外した状態の織物)の状態を確認し、煮沸の最適時間を見極めます。


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「マニュアル通りの時間や温度を守ればいいというものではない。事業者のめざす生地のイメージを共有し、理解したうえで、数値化できない部分の感覚をもつことが求められます。我々浜工は、事業者とチームとして動いていかなければならない」
と話すのは、部長の松﨑修さん。精練に関わり40年の大ベテランです。

精練のプロセス

ここで工程について簡単に説明します。


1 準備
生機持ち込み→生地立て(筒状にまかれた生機をほどき、煮沸のための釜枠に収まるよう畳む)→枠かけ(釜枠にセット)

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(国内ここだけ!という生地立ての機械。精練にムラが起きないよう、均一な畳み方が求められる。手作業を完全自動化した)


2 精練
前処理、本練り、仕上げ練りと煮沸したのち、水洗いで不純物を完全に除去

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(風呂釜のような機械がずらりと並ぶ。ここに織物を入れ各処理を進める)

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(本練後。平坦だった織物が縮んでモコモコの状態になっている)


3 仕上げ
乾燥→幅出し(再び湿潤させシボを整える)→柔軟加工(伸縮はそのままに柔軟性を高める)

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(特大ローラーで熱乾燥させる。水分が蒸発しているのがわかる)


4 検査・出荷
水平と透かしのダブルチェック→重さを測る(販売は目方基準になるため)→組合登録商標などを押印

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(透かし検査の機械。生地が自動で動くようになっている。こちらも日本にここだけの特注品!)


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(浜ちりめんの証ともいえる検印。この後、自社へ持ち帰ってさらに検品し、ようやく「白生地」として完成する)


白生地産地たるゆえん

工場の外にもなくてはならない存在があります。
「ここから1㎞先の沖合から水をポンプアップしてるんです」と松﨑さんが指差す方向は琵琶湖。
浜工の所在地はもともと琵琶湖の埋立地で、湖岸はすぐ近く。その水を引き上げ、ろ過、さらに絹織物にもっとも適した完全軟水にしたうえで精練工程での水洗いに使います。

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(右のタンクがろ過装置。銀色のパイプを通じて左手の工場へと運ばれる)


撚糸・精練ともに欠かせないのが、軟水と湿潤な気候。
長浜は、山々と琵琶湖の間に平地があり、そこに人々の暮らしがあります。山から流れ出る河川の水は、地下に浸透しつつ、琵琶湖に注ぎ込みます。豊かな水を蓄えるこの土地の利が、白生地の発展の基盤と言えるのです。

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(浜工近くから琵琶湖南方を臨む。山々から注ぎ込んだ水がすべてたくわえられる「近畿の水がめ」とも言われる存在)