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日本以外の国への販売

今回は子会社のインドネシア工場の仕事について書こうと思います。
工場はインドネシア首都のジャカルタから300kmほど離れた、インドネシアでは3番目に大きな都市バンドンの郊外にあります。交通インフラが発達途上で渋滞が相当にひどい状況なので、ジャカルタの空港から車で直行しても6時間はかかります。大阪から名古屋ぐらいの距離なんですけどね。そこで約600人ほどの人たち、工場のあるチチャレンカとその周辺の村に住む人たちが働いてくれています。ぼくが名前と顔を覚えているのはそのうちの20人ほどでしょうか。みんなにこやかで、もちろん個性はそれぞれですが、日本人と比べても純朴さを感じます。

インドネシア工場が作る製品の90%強は日本の市場向けに作られています。三栄ケースは工場が作ってくれたものを日本に輸入して、日本国内で管理・流通させることが主な役割のひとつです。もちろん営業面の仕事、商品の企画、材料の手配や2次加工なども日本法人が担う役割ですが、ほぼ日本国内で完結する仕事です。一方、工場で生産されている残りの10%は、日本以外の別の国に輸出されています。現時点での主な顧客としてシンガポールとドイツが挙げられます。

富裕層が多く暮らす都市国家シンガポールは、意外にもインドネシアから飛行機で2時間弱ほどで行ける立地関係です。地図で見るとけっこう近いことが確認いただけます。シンガポール顧客はローカル最大手のブランドで、あるとき展示会で出会うことができました。同じマレー語圏で言葉も似ているので、インドネシア人のスタッフたちにとってもコミュニケーションがとりやすいのだそうです。(言葉がどの程度似ているのか、自分には解りませんが) ドイツの顧客は最初に日本のウェブサイトを見つけてもらって、日本に問い合わせが来ました。インドネシア工場が直接対応することを伝え、工場の社長を務める兄に対応してもらうようにしました。意外かもしれませんが、このように日本のウェブサイトに海外から問い合わせが来るパターンもまあまああります。国別でいえばアメリカから一番問い合わせが多いのですが、アメリカからの引き合いはオーダー数量の桁が違うこと、そのぶん価格要求が厳しいことがほとんどで、現状は敬遠しています。

シンガポールの顧客はグループ内にいくつかのブランドを抱えるシンガポールでは最大手のブランドで、現地の展示会で出会った時点では中国からジュエリー用のパッケージを仕入れていたので、まあ相手にされないだろうというあきらめ半分、ダメ元でそのブランドのブースに当社のカタログを持ち込んで売り込んでみたこところ、その後問い合わせがきて、いまではそこそこ大きな取引に育っています。いまでは使うパッケージのほとんどすべてを、中国から弊工場に移管してもらえたようです。
ドイツのほうは中国に自社工場をもつ同業者で、それを補完するお試し程度の小さなオーダーから5-6年前に始まって、現在も受注量が拡大途上にあるとのこと。(シンガポールの展示会やウェブでの問い合わせは自分も手伝っていますが、インドネシアにいるスタッフたちと兄ががんばって作った成果です、ありがたい)

ジュエリーケースというニッチな商品は、1990年代のうちに、世界で使われるうちの9割以上が中国で作られるようになりました。1980年代はタイが一大産地となった時代がありましたが、ほかの産業同様、90年代にこの産業の製造機能のほとんどが中国に移り、今に至ります。
時代の流れのなかで、当社でも中国メーカーとの直接取引にチャレンジした経験が何度かありますが、やはりなかなかスムーズにいかないものです。インドネシアという別の国に自社工場を持つ身としては、中国メーカーに委託するものづくりの仕事が、そう簡単にうまくいかない背景や理由も手に取るようにわかります。単純にいえば、1つの商品を構成する材料や加工にかかわる人数が多いほど、伝言ゲームは難しくなるということです。

ジュエリーケースメーカーの本場は中国です。材料は探して見つからないものがないといえるぐらい豊富で、各種の加工機械を進化させ続けているのも中国です。自社でできない加工についても、中国なら外注先を選びたい放題。人件費がかなり騰がってしまったとはいえ、中国でのものづくりは有利に思える点が多いです。ただ、伝言ゲームの難しさは、中国、インドネシア、日本などと国別に比較したところで変わりません。国民性の違いはありますが、”正確に、ありありと、そうであるべき必要性を伝える”というシゴトについては、やはり会社それぞれの経験と思想に基づいた姿勢にかかわる部分だと思います。

国内外の大手ブランドの仕事を担えるだけの体制と実力がありながら、当社のインドネシア工場はあまり目立っていません。急に海外に大口の顧客ができて、親会社である日本の三栄ケースがたちまち商品不足に陥るような事態も避けなければなりませんが、これからも日本以外の国に販売する努力を日イ双方が力を合わせて頑張りたいと思っています。

2022.01.08

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