ラジオで本の紹介

最近はRadikoなどのアプリを使うとインターネット上で様々なラジオ番組をブラウズすることができる。そもそもラジオという媒体は、アテもなく周波数調整のダイアルをクリクリ回して、ザーザーという雑音の中からピタッとクリアになるところを探るという感じで、それほどきっちりと計画的に聴取しようと思わずに聞くというところがある。とはいえ、PC画面上の文字情報で番組の概要が一目で分かるというのも悪くない。このたびはたまたまディケンズの『オリヴァーツイスト』を紹介するという文字が目に入ったので聴いてみた。長編小説のしかも後半部分のみ(前半は一週前に終わったらしい)、それを30分の番組内でまとめるということで、相当難しいお題であるように思えた。『オリヴァーツイスト』は長編小説と呼ばれるものの中でもさらに長い部類に入るので、(電子でない)書籍で見ると見た目の分量に圧倒されてあまり読む気が起こらないかもしれない。したがって、上手にまとめられたお話を聞くだけで概要が分かるなら相当ありがたい。興味が湧いた人は自分で読みたくもなるだろう。ただ同時に、あんまりサクッと見事にまとめられてしまうと、読まなくてもいいやと思う人も多くなりそうにも思える。いわゆるネタバレをしないで多くの人の気持ちを惹きつける紹介をするというのは相当な名人芸と言えるだろう。

私ならディケンズをどう紹介するだろうと考えた。

オリヴァーはまだ読んでないけれど、読んだコッパーフィールド、二都物語とクリスマスキャロルから受けるディケンズ小説の印象は、19世紀イギリスをかなり詳密に描いた絵。小説って絵画そのものなわけはないけれど、絵に似ていると最近感じる。詳密さの一端として、法手続き関連の描写が結構細かいという点が挙げられる。これはディケンズ自身の経歴の影響らしいけれど、そういう一部詳しい人だけが専門的に扱う諸制度・手続きなどが、広く社会に影響力を及ぼしている様子を描く意図があったのではないかと私には思える。みっちり描かれるのは影響を受ける側のどちらかというと弱き人々ではあるのだけど、社会制度の一端でも詳細に記すことで、そうした人々の労苦というものがよりリアリティをもって迫ってくる。簡単ではないけれど、手続きにはそれをよく知ることで突破口を見出せるという側面もある。社会にある諸制度、仕組みに概ね絡みとられているからこその艱難辛苦。それでも希望がゼロだというわけではない。そんな感じ。

あとは単純に、ディケンズはお話が上手い、ということも紹介したい。特にこれは二都物語を読んで感じたこと。かなり重厚詳密な小説が多い印象だけれど、やっぱりなんやかんや言っても文豪。プロットというか、話の展開?最近よく使われる表現なら”伏線回収”となるのだろうけれど、その伏線の敷き方も含め、うーんなるほど、あの話が今ここにこう繋がるのかぁという妙とでも言おうか。小説のエンターテインメント性と言われる部分。やはり読み継がれていくにはそういうシンプルな楽しみが仕込まれているのだろうと改めて思い出させてくれる。

オリバーツイストも読んでみようかな。

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