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【プロ野球】選手会が求める保留制度改革とは?【解説】

2024年7月23日にデイリースポーツの記事でこんな見出しの記事がありました。

プロ野球選手会 現行の保留制度を公正取引委員会に申し立て検討 独占禁止法違反として

これはプロ野球選手会側が、現行の保留制度は独占禁止法違反に当たると考え、公正取引委員会への申し立てを検討しているという内容で、選手会の公式見解として発表されています。

「独占禁止法違反」や「公正取引委員会」といった、普段の野球観戦には似つかわしくない言葉が出ていますので、ファン目線だと何のことか分からない方もいると思います。
なので私が1ファン目線で調べた内容をもとに、解説記事を書いてみました。



保留制度とは?

まず、保留制度について説明します。
簡単に言うと、この制度は球団が選手と翌シーズンも契約する権利を持つことです。

シーズンが終わると、FA権を使った選手が他の球団と交渉をしたり、戦力外選手を獲得する球団があったり、外国人選手の補強が行われたり等、移籍が活発化します。

しかし多くの選手は現在の球団と契約を続け、翌シーズンの年俸を決めて同じ球団でプレーするのが一般的です。
これは「保留制度」があるためで、球団は所属選手との契約交渉を独占できるのです。

そのため選手は契約が満了しても、自由に他の球団と交渉できず、基本的には所属球団と新しい契約を結ぶことになります。

もし契約更改の場で翌シーズンの年俸や待遇に不満があれば、契約を保留することもできます。
ただし、減額制限に引っ掛かるような大幅な減俸でない限り、選手が自分の意思で移籍することは難しく、結局のところ選手は残留か任意引退の二択しか選べません。

このため、選手はFA権を取得するまでは一つの球団に縛られることになります。
選手会は、これが球団が選手を独占する「独占禁止法違反」に当たるのではないかと主張しているのです。


保留制度が存在する理由

保留制度は他のスポーツにはあまり見られない、NPB特有のものです。この制度がなぜ存在するのかを説明します。

昔、戦後のプロ野球がまだ整備されていなかった頃、球団間で選手の引き抜きや契約交渉のトラブルが頻繁に発生していました。

有名なケースだと、南海ホークスに在籍していた別所毅彦選手が、シーズン中にも関わらず読売ジャイアンツと契約して問題になった「別所引き抜き事件」があります。

保留制度が導入される前は、高額な契約金を提示して選手を引き抜くケースが多く、戦力のバランスが崩れてリーグ全体に悪影響を及ぼしていました。

このような引き抜きによる混乱を防ぐために、保留制度が導入されました。
この制度により、球団は選手を引き抜かれるリスクが減り、戦力を保ちやすくなりました。


保留制度のメリットとデメリット

上記のことから、保留制度のメリットとデメリットをまとめます。

メリット

  • 球団側の安定: 球団が選手の引き抜きリスクを抑え、長期的なチーム戦略を立てやすくなる。

  • 戦力均衡化: 保留制度により、特定の球団に優秀な選手が集中することを防ぎ、リーグ全体の競争力が保たれる。

デメリット

  • 選手の自由度の制限: 選手は契約満了後も他球団と自由に交渉できないため、選手のキャリアの選択肢が制限される。

  • 給与交渉の不利: 選手は所属球団との契約更改において、不利な条件を受け入れざるを得ない場合がある。

このように保留制度は球団側にとってメリットが大きく、逆に選手側にはデメリットが大きいものになっています。
なので選手会は制度の変更を要求し、球団側はなかなか応じにくいという対立した状態になっています。


ファンへの影響

この保留制度が変わるかどうかは、何も球団と選手に対してだけでなく、ファンにも影響します。

もし保留制度が変更され、選手の意思で自由に移籍できるようになった場合、
資金力のあるチームのファンは、これまで以上に補強できる選手が増えるため、受け入れやすいと思います。
ただし支配下で選手を保有できる人数は限られているため、補強した分既存選手を放出しなければなりません。

資金力のないチームのファンにとっては主力選手の流出リスクが高まりますので、受け入れがたいでしょう。
ただし流出した分、新たに選手を獲得することができます。

どちらにしても言えるのは、選手の入れ替りが多くなるのは確実でしょう。

そうなると戦力格差は今よりも顕在化してきます。
そのため成績低迷してるチームからファンが離れやすくなり、その結果球団経営が逼迫して球団を売却する可能性も出てきます。
選手の移籍が多いMLBでは球団売却はそこまで珍しくないですし、同じようになりそうです。

なのでファンは、応援してる球団の選手が移籍するかどうかだけでなく、球団自体が売却される可能性についても留意すべきでしょう。


今後の動向

公正取引委員会に申し立てするか?

今後の動向ですが、まず選手会が公正取引委員会へ申し立てをするかどうかが焦点になります。
ここで申し立てをして、現在の保留制度が独占禁止法違反に該当すると判断された場合は、NPBとして保留制度の変更などの対応をしなければならないでしょう。
そうなればNPBの契約制度が大きく変わってきます。

逆に独占禁止法違反に該当しないと判断された場合、現行の保留制度は問題ないというお墨付きになる可能性があります。
なので選手会は申し立てに慎重になっていると思われます。


他の制度も改正する可能性

FA制度は保留制度に対して、選手が移籍できる権利を取得する手段としてできた制度です。
なので保留制度が変更されれば、FA制度も無くなる可能性が出てきます。

現役ドラフトも本来の趣旨は、チーム事情で1軍での出場機会が少ない選手の移籍活性化でした。
保留制度が変更されれば、選手自身の意思で移籍しやすくなるため、無くなる可能性が高いです。

その他だと、以下のような変化が予想できます。

  • 入団時の契約金の減少

  • 契約更改時の減額制限の撤廃

  • 複数年契約選手の増加

  • 戦力外選手の増加

  • 2軍の縮小、ユースチーム化

  • 育成選手の減少、撤廃

これらは筆者が思い付いたことなので、実際にこうならない可能性もありますが、現行の制度から色々と変わりそうです。




以上が保留制度改革についての解説になります。
この件については球団側、選手側、そしてファン側にとっても様々な思惑が出てくるでしょう。
どういった展開が日本のプロ野球界の発展に繋がるのか、考える契機にもなると思いますし、私も1ファンの立場から、動向を注視していきたいと思います。


【参考サイト】


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