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もやし:八方美人でいる辛さ

 もやし、というとコスパの良い野菜代表ではないだろうか。数十円なんかで、けっこうなボリュームが手に入ってしまう。そのうえ、多くの食材とマッチしてしまう優れものだ。

 しかしこのもやしという野菜、特別好きだという人を聞いたことがなければ、特別嫌いだという人も聞いたことがない。きっと、尖っていない無難な役どころなのだろう。重宝されるが一目は置かれない。そう言ってしまえば、少し悲しく思えてくる。

 フットワークが軽く、グループでの遊びによく誘われる。嫌われたことないでしょ、と何度か言われたことがある(実際は嫌われたことなんて全然あるのにね)。しかし、いざ自分で誰かごはんを食べに行こう遊びに誘おうと思うと、気楽に誘える相手がなかなかいない。それは、私がどこまでも無難なもやしのような存在だからではないだろうか、なんて重ねてみてしまう。

 八方美人で、誰からも嫌われないように常に気を遣って振る舞ってしまう。他人の感情を読み取り、気を悪くしている人がいたらとっさにフォローする。ニコニコしているので、その場にいても害はないし空気を乱すこともない。だから、グループでの遊びにはよく誘われる。けれども、なぜか深く関わってくれる人は限られてしまう。それは、相手側もそんな自分といて本当に心地よくはないからなのではないだろうか。

 それでは、結局なんのために八方美人でいるのだろう。

 適度に気を遣い、周りにどう思われても良い、と。自分の好きな人たちにだけ嫌われないようにすれば良いのだ、と。そんな生き方がしてみたい。