くそ義仲

 4歳の時からエレクトーンを習い始めて、うまくはないがそれそうなりに弾けた。小1のもみじ音楽祭で、じゃあ吉川君にエレクトーンを弾いてもらいましょうということになったのだが、くそ義仲(仮名)とという女子がエレクトーンのコンセントを引っこ抜いてしまい、ずいぶん暗い目で「吉川君はもういらないのよ」と言ってきた。
 仕方ないわねえ、と先生も、俺にはピアニカを弾かせて、ただそれだけの音楽祭になったのだが、それから時は立って、小学五年生。マンドリンクラブに入った俺なのだが、くそ義仲もマンドリンクラブに入っている。
 くそ義仲は、わざと俺を外してマンドリンの演奏会を開き「吉君はいらないのよ」と、一年生の時と同じように面と向かって暗い目で言ってきた。成長がないなあ? と思いながら、別にいいんだけれど?
 あの頃から俺はあんまり喜ばしい人生を歩いてなかったんだね。


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