2019年に VMware が買収した企業一覧をまとめながら IT インフラの今後を考える
この記事は VMware プロダクト by 富士通クラウドテクノロジーズ Advent Calendar 2019 の16日目の記事です。
vSphere や NSX を活用した VMware クラウドサービスを運営していることもあり、VMware 社の動向は随時チェックしていますが、2019年も終わりなので今年の買収案件をまとめてみようと思います。
VMwareは(というか IT ジャイアントの全般的な特徴もありますが)買収を積極的に行う企業です。特に VMware はプロダクトを買収してそのまま運営するケースもありますが、vSphere等の中核プロダクトの機能拡張のために買収するケースも多く、買収案件を眺めているとプロダクトの今後の方向性が分かるため、個人的に非常に注目しています。
ちなみに2018年の個人的ベスト買収案件は Kubernetes コンサル、サポートの Heptioでしたね。元CEOでKubernetesの生みの親の一人であるクレイグ・マクラッキー(現 VMware VP)が今年の VMworld で vSphere がモダン IT プラットフォームだと宣言していたことも記憶に新しいです。
というわけで2019年を振り返っていきましょう!
AetherPal (2月) - Workspace ONEのリモートサポート機能へ統合
いきなり1件目が若干地味ですが、情報端末のリモートサポート機能の AetherPal です。この買収は Workspace ONE 機能強化が目的ですね。
Workspace ONE のベースの AirWatch も2014年に買収した製品ですが、VMware Identity Manager と統合してWorkspace ONEへと製品名が変わり、今回の AetherPal との統合と、エンドユーザーコンピューティング分野に注力している印象を受けます(この分野はメガクラウドがまだ進出していないことも関係しているのかなと想像しています)。
Bitnami (5月) - OS 以上のマルチクラウド対応強化
レンタルサーバーによくある「ワンクリックで WordPress インストール」機能のすごい版。マルチクラウド/オンプレミスへインストール可能で GitLab 、 Jenkins 、 Redmine など130以上のアプリケーションを簡単に AWS などへインストールできるすぐれものです。
VMware は VMware on AWS のようにITインフラ市場での存在感を維持しようとする戦略の裏で、情報システム部門向けのマルチクラウド対応プロダクトのポートフォリオを着実に増やしています。
情報システム部門との接点を生かしてクラウド管理ビジネスを拡大するぞ、という意気込みを感じますね。
Avi Networks (7月) - エンプラ品質のマルチクラウドNW
元 Cisco のメンバーが設立した100% Software のフルスタックなネットワーク機能群の Avi Networks です。ロードバランサー機能(L4, L7)、セキュリティ、アプリケーション可視化、パフォーマンスモニタリング、コンテナネットワークと全部入り感のある Avi ですが、これもマルチクラウド対応、マルチコンテナオーケストレーション対応ということで、マルチクラウド強化の流れを感じますね。
個人的には製品の価格帯や性能についてまだ確認前なのですが、 F5 との比較ページを用意するなど、Big-IP キラーに育っていくのか注目しています。
しかし、こういう比較広告をみると Cylance を思い出しますね。Cylance も Black Berry に買収されちゃいましたが。
Bitfusion(7月) - GPU も FPGA もシェアしたい
VMware の勝ちパターンである「ベアメタルの低利用率を仮想化で改善」をGPUやFPGA分野で実施する製品いうことで、bitfusionの買収です。AI/ ML 強化機能ということもあり、このあたりの成長分野へのポートフォリオ拡大も VMware としてはマストで実施したかったのであろうと予想できますね。
また、ベンダーやハードウェアを特定しないアクセラレーション、マルチクラウド・オンプレ対応ということで、 VMware 的に「間違いなく買うだろ」という役満の銘柄です。
製品戦略的な観点では、去年のk8s に続くvSphere への統合を予定ということで、20年選手である vSphere への機能追加になります。品質面などは部外者ながら若干ドキドキしていしまいますね(ちなみに k8s 統合は基幹部分には極力手を入れない形でインテグレーションされていると VMware KK の方から vForum で説明がありました)。
Carbon Black(8月) - 元祖EDR、マルチクラウド
最後は Carbon Black です。数年前から NSX とのインテグレーションは発表されていましたが、いまいち具体的なユースケースや実装方法が見えておらず NSX ユーザーとしてはモヤモヤしていましたが、2019年になって買収という結果になりました。
NSX 連携セキュリティソリューションという意味だと、先輩にあたるのがAppDefenseですが、若干役割がかぶっている部分もあるのが気になりますね。
また先日発表された、NSX Distributed IDS/IPS といい、先に上げた Avi Networks といい、ネットワーク&セキュリティ周りの製品群が増えてきているので、製品の統廃合やブランディングは気になるところです。
まとめ(1) : マルチクラウド強化
こうやってまとめてみると AetherPal 以外はマルチクラウド製品の買収ということで、やはりマルチクラウド強化の流れは継続していますね。
一言でマルチクラウド強化と言っても、ネットワークなどの足回りだけではなくbitnamiのようなアプリ層のアプローチも増えており、 VMware がどこまでビジネス領域を拡大するのか気になります。
ただ SaaS や OS 層以上の分野は2017年に買収したWavefront も2018年の CloudHealth や VMware Cloud のラインナップに加えたものの、日本での本格展開はこれからな印象を受けています。
SaaS ビジネスはセールスもマーケティングも DCインフラビジネスとは異なるので、そのあたりの違いをどのように解消していくのか、今年の買収製品を通して注目していきます。
まとめ(2) : 仮想化範囲の着実な拡大
今年はBitfusion ( GPU )や Avi ( NW 製品) のようなデータセンター仮想化製品のポートフォリオ拡充も目立った1年でした。
「仮想化によるオンプレミスの利用率向上(コスト削減)」という VMware のお家芸は今年も健在でしたね。SDDC ってキーワードは最近聞かなくなりましたが、この分野はVMwareの屋台骨の領域なので着実に継続していくでしょう。
個人的にはGPU仮想化の進捗状況と、Avi
の ハードウェアLBとの性能比較は気になっています。GPU仮想化ができると世界観変わりそうでワクワクしますね!
2019年を通して(まとめ) - 仮想化もクラウドも拡大
若干強引ですが、まとめると仮想化もクラウドもまだまだ拡大期であるということでしょう。
ただ仮想化市場についてはGPUや、NW機能など、最終局面に近いところまできているなと感じますね。サーバー、 SDN 、ストレージ、 SD-WAN ...などかなりの DC インフラ領域の仮想化が進んでいるので、落ち穂拾いに近い印象があります。逆に後なにが残ってるのか考えると面白いです。
逆にマルチクラウドビジネスはまだまだ拡大途中という印象が強いです。 Bitnami は VMware の既存ビジネスとどう連携していくのか(あるいはしないのか)、今後の方針も楽しみですね。
というわけで19年度の買収まとめでした!