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夜中に目が覚める。

雨の音。

窓を開けて寝てしまっていた。
空がうっすら明るいように見えたのは、気のせいだった。
直前まで見ていたなにかの夢と混同していたのに違いない。
とはいえ、その夢の映像さえ、砂時計の砂のようなさらさらとした感覚で、遠くに消えていってしまっているので、ふたしかだけれど。

隣家の屋根にあたる雨の音。
かなりの量の雨粒。
梅雨でもないのに。

そして、台風が近い雨にしては、まっすぐな音だ。

不安を覚える。
といって、それは台風やそれに伴う災害に対するものではない。

暗闇の中で目をこらして、しばらくじっと聞く。
まっすぐまっすぐ降り続けている、すだれのように降り続けているであろう雨の音に、耳をすます。

ざあぁぁぁ………………
 
 ざあぁぁぁ………………

ざあぁぁぁ………………ざあぁぁぁ………………

 ざあぁぁぁ………………ざあぁぁぁ………………

 ざあぁぁぁ………………

落ち着かない気持ち――いや、正確には、落ち着かない気持ちにさせられるなにかを思い出しそうになる。
思い出せそうで思い出せないなにかがあるような気がするだけ。

わからない。

思い出すべきことなのか、あるいは忘れたいと願う記憶なのか。

どういうわけか夜中の雨の音と結びついているそれを、いつかたぐりよせられるだろうか。

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