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とある星の子、運命につき

私は牡羊座の一部である。

地球でまことしやかに囁かれている十二星座占いによれば、"牡羊座生まれはとてもエネルギーに溢れた人間であり、見た目もパワフルな人が多い。好奇心が旺盛で、どんなことがあっても常にポジティブ思考。"

そうあるべき存在。


そう、あるべきだったんです。
私も。



「アレス様、本日はどういったご用命でしょうか。」

「お前は、もうこの星に居るべき存在ではない。」


それは突然の通告でした。
しかし、そう言われる運命にある事は、私が一番よく分かっていました。


「……分かりました。後任の者は、既に?」

「じきに生まれる。だからお前は、星を発つ準備をしなさい。」

「行き先は何処でも構わないのでしょうか。」

「ああ。蠍座にでも行ってみるのはどうだ?彼処ならお前のような子どもでも受け入れられる空気を持っているだろう。遠過ぎるというのであれば、牡牛座でも良いかもしれないな。」

「……そう、ですか。かしこまりました。直ぐに準備を致します。」


私の住まいは、おひつじ座α星 ハマルにあります。
二等星の輝きを持ち、それはとても煌びやかで眩しく、栄えている星です。
私はそんな星の、都市から遠く離れた小さな小屋に住んでおりました。
戸を開ければ私の生活態度が如実に現れた、物でいっぱいの部屋が顔を見せます。

私は常日頃から頂き物やその時々で心がときめいた物を貯め込む癖がありました。
それに付随して、物事に熱中すると寝食を忘れて小屋に籠りきりになることも多くありました。
アレス様は、それを見透かしていらしたのでしょうね。


「……私は、牡羊座の星に居るべきでは、ない」


改めて言葉を反芻すれば、前々から勘づいていた事だなと感じました。
他の神の子達は常にパワーに満ち溢れており、優れた直感で何でもすぐ行動に起こしていました。
それに比べて私はどうでしょう。何をするにも石橋を叩いて渡る様な慎重派な上に、アレス様からの命が無ければ常に小屋に引きこもっている様な子どもです。

それなのに、私はこの星の代表として他の神の子達から推薦状を出され、ハマルという名を授かり、大星命の称号を頂きました。


「二等星の輝きに……相応しくなかった、ってことですよね……あ、はは……」


人間であれば、こういう時に涙を流すものなのでしょうか。
神は涙を流すことが出来ません。それに近い存在である私も、例に漏れず声を震わせる事しか出来ません。


もうすぐ後任の大星命が生まれるとの事でしたから、荷物は最低限に。
それでも、私の生活を彩ってくれた物たちは鞄に少しずつ詰めて。
他の神の子達が寝静まった頃、私はひっそりとハマルを発ちました。


それから私は、広大な宇宙を放浪していました。
アレス様の進言の通り、牡牛座や蠍座にも向かいました。
どちらもとても居心地が良く、心が落ち着ける場所ではありましたが、私の持つ羊の角に怪訝な目をされる事が多く、そこに住む星の子達には「観光をしに来た」としか言えませんでした。

そうやって黄道を一周しきろうかとした頃、かの惑星に興味を惹かれました。


地球。
太陽に照らされ青く輝く、コバルトブルーの星。

宙の上に私の居場所が無いのなら、惑星に。
そう思い立った時には、私は既に地球へと翼をはためかせていました。


​────そして、貴方様と出会うのです。
まだ見ぬ人間さん。


「初めまして、私夢宙ハマルと申します。」
「おひつじ座α星 ハマルという星で生まれ、アレス様の命により神のお声を届けるべく地球に派遣されました、神の使いです!」


そう、私は牡羊座の一部。
牡羊座であるべき存在。
だからこそ貴方様には、私を"牡羊座のハマル"として認識して欲しい。
私の運命など、知らないでいて。

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