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なににもならない

「なぁしりとりしようや」

「いいよ」

「しりとり」

「りんご」

「どんな?」

「どんな?んーじゃあ青リンゴ」

「なるほどな。じゃあ、ゴマメ」

「あー、メガネ」

「どんな?」

「虫眼鏡」

「レンズ一枚しかないやつか。ね、ね、練馬」

「マトリックス」

「どんな?」

「リローデッド」

「お前なんか外しにいってない?」

「何がやねん」

「全部ちょっと変やねん。青リンゴとか虫眼鏡とか。マトリックスにいたっては2作目の方言うてたぞ。誰も見たことない」

「どんな?って聞く方が悪いやろ。しりとりのリズム狂うやんけ。こんなもんテンポ感で楽しむゲームやのに」

「俺はしりとりを通じてお前の価値観を知りたいだけやねん。それやのにお前は奇をてらっててらって。お前どうせあれやろ、好きな人に真っ直ぐ気持ちとかぶつけやんと行動で察してくれって思うタイプやろ」

「そりゃあ、どんな?って聞かれたらちょっと変化球で返さなあかんのかな?ってなるやん。ほんで好きな人には気持ちぶつけるよ。歌とか書くし」

「お前音痴やのに歌書くなや」

「歌は書いて歌わへんよ」

「それポエムやねん。歌はメロディーという鎧を被ったポエムやからな。歌わんかったら戦闘力ゼロやぞ」

「ええやんけ。人それぞれの愛の形あるやろ」

「お前の形きしょいねん。正二十面体みたいやわ」

「形のきしょさ表すのに正多面体を出す方がきしょいで」

「うるせぇ口だな」

「同性に言うなよそんなセリフ。というか異性にも言うなよ。そんなん言うてまう口、実質ゴミ箱の蓋やで」

「次から変に考えやんと答えてくれよ」

「わかった」

「じゃあ、マトリックスのスからやな」

「リローデッドのドじゃない?」

「それはサブミッションの答えやろ。本筋はマトリックスや。す、す、スロット」

「と、と、トマト」

「どんな?」

「スペインの」

「でたよ。また変なこと言ってる」

「なんやねん」

「誰が原産で答えんねん」

「しゃあないやろ。脳が咄嗟にそう弾き出したんやから」

「もうやめやめ。個性出そうと必死やわ」

「個性なんか出た方がいいやろ」

「いや、社会に出たら個性あるやつなんか煙たがられんねんで」

「お前ニートのくせにわかったような口きくなや」

「お前もニートやろ」

「俺ら平日の昼間に何してんねやろな」

「こんなことは将来、クソの役にも立たんねやろな」

「別に楽しいわけでもないのにな」

「最近な、飯食っててもあんまり味わからんのよな」

「わかるで。なんか違和感あんのよな」

「俺その正体つきとめてん」

「なんなん?」

「あれが自分の未来を食べてる味やねん」

「、、、というと?」

「俺らは普段から未来を貪ってんねん。有意義な時間を過ごしてたら飯もうまい。未来が美味いから。無意味な時間を過ごしてたらあんま味せぇへん。それは未来が真っ白やから」

「んー、ようわからんけど」

「お前就職する気あるん?」

「運次第かな」

「何の運?」

「俺のやる気が出るかどうかの運」

「それ運ちゃうやろ」

「運ってことにしといたほうがええねん。お前はどうなん?」

「運次第かな」

「おっけ。明日もここでな」

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