金タワシ

「金タワシってわかる?」

「あのスチールウールの塊みたいなやつ?」

「そうそう」

「それがどうしたん?」

「あれってさ、フライパンとかの金属のものを洗うのに金属を用いるっていうことやんか?」

「そうやな」

「金属で金属を洗うって確実に『血で血を洗う』から着想きてると思うねん。怖ない?」

「別に怖くはないやろ」

「なんで怖ないねん。よう考えてみ?開発者はぼんやりと血で血を洗うのことを考えてる時間があったっていうことやで?」

「長い人生の中で血で血を洗うのことを考えることもあるやろ」

「ほなお前あるんか?」

「ないよ」

「ないやん」

「まだ人生これからやん。血で血を洗うのことを考えることもありゃ、へそを曲げるのことを考えることもあるかもしれん」

「たしかに。そういえば俺もこの前喉から手が出るについて考えてたわ」

「ほら、あるやん。何考えてたん?」

「喉から出た手は右手なのか左手なのか」

「気持ち悪いな。結論どうなったん?」

「それがなぁ、よくわからんのよな」

「なんで?」

「いや、やっぱり喉から手が出るって本能的なものやから利き手が出てくると思うのよ」

「なるほどな。それはそうっぽいな」

「やから俺の場合は右手が出ると思うねん。でも、それを右手か左手か区別できひんと思うのよ」

「なんでよ」

「だって右手と左手は一本ずつやから、右、左で分けれるやん」

「うん」

「でも喉から出た3本目の手が右手やった場合、右手が過半数になって、右、左に分けるの微妙にならん?」

「別に右手って呼んだらええんちゃう?」

「あかんやろ。歯医者さんで『痛かったら右手あげてくださいねぇ〜』って言われたら2本手上げてまうやんけ」

「めっちゃ痛いんやと思ってくれそうやん」

「恥ずかしいわ」

「そもそもお前、口から手が出た状態で歯医者行くなや。速攻緊急オペなってまうやろ」

「ほんまや。せっかく喉から手が出せたのにもったいない。ともかく喉から出た手は右手って呼ぶことができひんねん」

「じゃあ中手って呼べや」

「中手の形状が右手なの嫌やなぁ」

「ほんなら喉から2本手を出せや」

「それができたら苦労せんよ」

「そもそも1本も出んのよ。いや、もうええねんこの話。今日わざわざ集まったんはなんでやっけ?」

「来月のあいつの結婚式行くのかって話や」

「あぁ、そういえばそうやな。ほんでどうするん?」

「俺あいつ嫌いやから、同じ日に結婚式するわ」

「金タワシやん」

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