スプーンかフォークかストレート

ある日コンビニでレジをしていたら、グラタンを持ってきたお客さんがいました。
「温めどうされますか?」
「あ、お願いします。」
30歳ぐらいの女性で、接客のしやすいお客さんでした。
敬語が使えるのはいいお客さんです。
「レジ袋どうされますか?」
「お願いします!」
となったので、システム化された自分のいつも通りの動きでレジ袋と、フォークを取りました。
すると、
「あ、グラタンやからスプーンで!」
と言われました。
「あ、申し訳ございません。」
と言ってスプーンをつけました。
スムーズに会計を終わらせ、温め終わったグラタンを持つ時に一回、「熱っ」と反射で手を引き、再びグラタンを持って袋に詰めて、
「お待たせしました!ありがとうございました!」
と言って、接客を終了しました。

そのお客さんが出てからさっきの一連の流れを反芻していると、
「グラタンやからスプーンで!」
が耳にこびりついてました。
「ん?グラタンやからスプーンで?どっか引っかかるな。」
すぐに引っかかる部分は見えてきました。

グラタン やから スプーンで

そう、この「やから」です。
もしかするとこれを読んでる方で何も引っかからない方もいるかもしれません。
でも僕からしたらこの「やから」はひどい時の肩凝りぐらい気になりました。

僕は生まれてこの方、グラタンをフォークでしか食べたことがないです。
家で出てきたグラタンにはいつもフォークが添えられていました。
なんの疑問も持たずにフォークで食べ続けてきました。
何不自由なく食べられますし、そもそもグラタンのホワイトソースとか全て剥いだ正体はパスタなのです。
パスタはフォークで食べるのが一般的ではないですか?
スプーンで食べようという発想に至ったことがなかったです。

そこにきてのこの事件。
今までの自分の価値観を全否定されたような感覚に陥り、
「なにが『やから』じゃい!それはお前の中の価値観じゃろがぼけぇ!一般的にそうかはわからんやろがい!」
とどこの方言かもわからない言葉で脳内罵詈をかましました。
「次そんなん言いよったら、スプーンでもフォークでもなく、右ストレートお見舞いしたろかい!」
フォークとストレートを掛けようとしたら野球以外の掛かり方をして、うまくいかなかったです。
何はともあれ、このことはそれなりのショックでした。

「グラタンはフォークで食うもんちゃうんか」
と思いながら、今ではグラタンを持ってきた人にはスプーンをつけるようになりました。
誰も文句を言ってきません。


ズレてんのは僕の方だったのかもしれません。

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