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オーバーキル王決定戦の話

先日ドラスタさんの企画であったオーバーキル王決定戦というものがありました。

簡単に言うと、ドローも全て操作できると仮定した上で5ターンの間にどれだけのダメージを出せるかという企画です。
過去にスパーキーチャレンジという企画でアリーナの限界に挑戦した我々にとって非常に興味深いものでした。

ルールについて

まずルールについてですが、以下のように定義されていました。

ドローを自由に操作できる状態で5ターンの間に対戦相手にどれだけのダメージを与えられるかを競う

・フォーマットは『イニストラード:真紅の契り』を含んだスタンダード
・初期手札7枚、1ターン目のドローは無し
・禁止カードや構築ルールはスタンダード準拠とする
・「ダメージ」か「ライフを失う」かは問わないものとする
 ※本企画では「ライフを失う」も含め便宜上ダメージと呼称する
・同じ挙動が2回以上繰り返せる、いわゆる「無限コンボ」になるものは最強を超えてしまうので殿堂入りとする(つまり禁止である)
 ※マナやカードの限り続くような有限のコンボはOKとする

禁止カードも特になくルールとしてはかなり緩めで、ターン数も5ターンと猶予も多く様々なパターンが考えられる事が予想されました。

結果

ルールが緩かったこともあり、『今回のルールで募集するにあたり、先述の通り運営の想像を遥かに超えるダメージ量、ルールに一切違反することなく「詳細な計測が人間の手では困難なレベルの回答」が複数送られてきました。』ということになりました。

結果として十分大きかった人の中から抽選で大賞が選ばれることになりました。運営の英断だと思います。

正直応募当初から審査員がどっちのほうが大きいかを判別することが極めて難しいなと感じており、我々はイメージとしてわかりやすく大きな値である《1不可説不可説転点》を回答として提出しました。結果として〈なかちか賞〉をいただくことができました。ありがとうございます。

我々の回答のスライドを下記に示しておきます。

実際誰が一番大きい数字を書いたのか

比較することはできないにせよ若干気になるところではあります。
今回は我々が考えた中で極限のダメージを出すために必須であろう2枚を紹介します。この方法より確実に大きいダメージを出す方法があるのであればその方が優勝だと思います。

まずいかにインチキ臭い方法でダメージを稼ぐかを考えるわけですが、現状のルールでぱっと思いつく方法は《嵐窯の芸術家》や《野生の魂、アシャヤ》と《水蓮のコブラ》の組み合わせなどをうまく使ってマナを伸ばし、その後各種の方法でパワーを上げたり上陸誘発による攻撃回数を増やすなどして総ダメージを増やす方法でしょうか。

我々も最初はそのルートを模索していましたが、ほとんど意味のない行為だということに気づくまでにさほど時間はかかりませんでした。

キーカード①

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キーカード①:指数関数的成長です。指数関数的成長は対象のパワーを2のX乗するカードで大量のマナを注ぎ込むことでとんでもないパワーを実現します。

X=10ですら2の10乗つまり1024倍になります。今回のルールで前述の《嵐窯の芸術家》や《水蓮のコブラ》などでマナを加速すればX=10億とかは容易に達成できます。2の10億乗が大体10の何乗になるかというと

次の式を満たす整数Nを探してみる。
 10^N < 2^(10^10億) < 10^(N+1) …式①
式①を底が2の対数にすると次のようになる。
 N log2_10 < 10^10億 < (N+1) log2_10 …式②
ここで log2_10 ≒ 3.32のため式③は次のように表現できる。
 N× 3.32 < 10^10億 < (N+1) × 3.32 …式③
式③を満たすNは3 * 10^(10億-1)。

ざっくり3 * 10^(10億-1)となります。どういうことかというと0の個数を1.2.3.4.5...と数えていって10億ぐらいゼロが並ぶぐらいってことです。
この段階で戦闘回数とか攻撃クリーチャーの数とかが些事であることがわかるかと思います。

キーカード②

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キーカード②《星の大魔導師、ヴァドリック》です。このカードを使っていない挑戦者との戦いは砂漠の砂と星ぐらいの違いがあるかと思います。

最初このカードを勧められた時は正直ピンときませんでした。昼?夜?関係なくね?って。

あなたがインスタントやソーサリーである呪文を唱えるためのコストはX少なくなる。Xは星の大魔導士、ヴァドリックのパワーに等しい

大事なのはこの一文。どういうことかというと、X=10で指数関数的成長をパワー1のヴァドリックに打つと、ヴァドリックのパワーは1*1024で1024になります。ということはインスタント・ソーサリーのマナコストが1024減ることを意味し、x=512の指数関数的成長をわずか緑緑で唱えることができます。固定の色マナである緑マナは《嵐窯の芸術家》などで捻出する必要はありますが、指数関数的成長を打つたびにヴァドリックのパワーはとんでもないことになり、さらに次に打つ指数関数的成長のXもとんでもないことになります。

例えばさっきのパワー1024のヴァドリックにX=512の指数関数的成長を打つと、ヴァドリックのパワーは2^522となり桁数としては157桁の数字になります。

1000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000

ざっくりこのぐらい。指数の指数がどれだけヤバいかわかってもらえたかなと思います。

で、次に打つ指数関数的成長のマナコストはこの分減っているので次あたりからはイメージで書くのも不可能な領域になります。
パワーが2^522のヴァドリックにX=2^521の指数関数的成長を打った場合、桁数だけで言うと10^156桁のパワーになります。さっきの例のやつが157桁なのであのイメージ図が無量大数個より多くなります。もはや意味不明だと思うのでこれ以降は割愛しますが、とんでもないってことだけわかってもらえればよいです。

ちなみにまだ指数関数的成長はわずか3回しか打っていません。わずかと表現したのは今回のオーバーキル王決定戦のルールではインスタント・ソーサリー回収系を禁止しておらず5回以上同一の呪文を唱えることを禁止していないのでまだまだ唱えることが可能です。

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これらのクリーチャーをバウンスなどで再度召喚したりコピーしたりすることで1万回以上は指数関数的成長を唱えることが可能なのでこんな感じになります。

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指数関数的成長を何度も打つことができ、打つたびにXの値が指数関数的に増えていくというのが、この《星の大魔導師、ヴァドリック》との組み合わせの恐ろしいところです。

最後に

今年も自分の放送の年末企画として色々やるのですが、その中でMTGアリーナ上で5分間でスパーキーに何ダメージを与えられるか的な競技を行う予定です。我こそはというチャレンジャーの参加をお待ちしております。


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