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もしも1つだけ願いが叶うなら、2011年3月5日に戻りたい。

「書く習慣1カ月チャレンジ」Day28のお題は「もしも1つだけ夢が叶うとしたら。【夢】ではなく、【願い】を書く。

2011年3月5日(土)母の61歳の誕生日。
母からのリクエストで私の夫と母と3人で房総半島にドライブに行った。

渋滞を避けるために、早朝に出発。
母が「朝ごはんいる?」と大きなカバンから、ガサゴソと、アルミホイルにくるまれた何かを取り出した。

「ごめん。食べてきた」と、断った。

アルミホイルに包まれたのは、手作りのホットドック。
あっ、あれね。
レーズン入りのロールパンにレタスとウインナーをサンドしたもの。
母は、後部座席で一人、もぐもぐとパンを食べていた。

小さい頃、母が休日によく作ってくれた一品だ。
「ホットドックはレーズンパンよりノーマルの方がいいのに」と言ったことがあるが、母が作るホットドッグはいつも「レーズンパン」だった。

母とは仲が良い時期もあったけど、あの時期は、少し母との間に心の壁ができていて、優しくできなかった。
普通に接したのではない。私はツンツンした態度をとってた。

せっかく作ってきてくれたのに、1個も食べない。
お土産にもらうことさえしなかった私。

自分も母になり、レーズン入りロールパンをスーパーで見るたびにあの日のことを思い出し、今も後悔している。

家族のために作ったのに食べてもらえなくて、少し寂しかっただろうな。
自分一人で食べる時、母はちょっと悲しかったのではないだろうか。

1か月後、母は亡くなった。
「ありがとう」も「ごめんね」も、言えなかった。
あの日のドライブが母にとって、人生最後のおでかけだった。

もしも一つだけ願いが叶うなら…
2011年3月5日に戻りたい。そして、母が作ってくれたホットドックを一緒に楽しく食べて、最大限の優しさで1日を過ごしたい」

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編集後記
エピソードで読者の頭に映像が浮かぶようにするには、五感の表現が必要。
この辺をもっと上手くなりたい。

2023.3.28追記
この記事を読んで、ライティングゼミの友人が「嗚咽するほど泣けた」と感想をくれた。
詳細なエピソードを書くことで、人は同じ経験をしたわけではないのに共感できる→「井戸の底で出会う」体験ができた。
そして、友人はnoteを更新しようと決心したと言う。
・読者の心を動かせた
・読者が記事を読んで新しい一歩を踏み出せた(行動変容)

記事のゴールに読者を連れていけた記念のnoteだ。
毎日note更新して70日目。
継続には、力があったと、改めて実感できた。


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