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「ABEMA Prime」のシャチ回で感じた、ヤな感じの喋りかたについて

シャチになりたい、という男性をご存知ではないですか?

人を探してるみたいな書き出しだが、これは過日、文学フリマで購入した本から知った〈エニオン〉さんのこと。
ヒトをやめてシャチになる。
あの、でっかいイルカみたいな、白黒の、名古屋グランパスのマスコットの、映画『ジョーズ』大ヒット後追い作品の中でフラワーカンパニーズ鈴木圭介さんが人生を挙げて愛してやまない『オルカ』

そして、シャチになる。


詳しいことはこちらのクラファンでの自己紹介文にかなりくわしく説明されています。これは必読。↓

↑ 先進事例も書いてあっておもしろい。

たとえば
色を音に変換する機械をつけサイボーグ化し、先天性色覚異常を補完・拡張、
動物の見ている世界にまで達したニール・ハービソンさん

ヤギとして群れで3日間暮らしたトーマツ・トウェイツさん
(=『人間をお休みしてヤギになってみた結果』として新潮文庫で発売中。
ん?と思ったら『ゼロからトースターを作ってみた結果』の人だった)
などなど。


ぜひ見てみてください!!





ヤな 感じとはなにか


・・以上を前提として。


今回書いていくのは

このエニオンさんが出演したネットTV局〈ABEMA〉の番組「ABEMA Prime」で、
司会のひとの、エニオンさんへの当たりが、
なんかヤな感じだったなあ
ということについて、

どこからその ヤな感じ は生まれてるのか。
スタジオのコメンテーターも誰もつっこまなかった、その水面ギリギリのラインについて、
あらためて動画を見ながら考えたい、のです。

これは文学フリマ感想の時点でやると言ってて、だいぶ遅れましたが、https://note.com/hamachiichiban/n/n379bb89107fd#670b5cc4-e8db-4de2-acdb-10468eb9acbe  

どうも「声を上げるほどではないけど」っていうのは、現代ヤな感じにおけるテーマですよね。


動画

ABEMAノーカット版(2023年9月7日放送)
https://abema.tv/video/episode/89-66_s99_p5118

◆キャスト
MC:EXIT(兼近大樹、りんたろー。)
 エニオン(野生のシャチになりたい当事者)
 浮世満理子(プロフェッショナル心理カウンセラー)
 安部敏樹(リディラバ代表)
 大槻奈那(金融アナリスト/名古屋商科大学 大学院教授)
 佐々木俊尚(作家/ジャーナリスト)
司会進行:平石直之(テレビ朝日アナウンサー)
ナレーター:榎本温子

YouTube概要欄より

ヤな感じセンサーが弱ってしまった

最初に正直に申しますと、
だいぶ時間置いちゃったせいなのか、
初めて見たときほどのヤな感じは受けなくなってしまいました。

あんなに、ヒドイ!これはヒドすぎ!なに放送してるの!
と憤っていたのに・・・。

たぶん、

「「シャチになりたいヘンな人」として引っぱり出されてる(※望む望まないにかかわらず、決定権はテレビにあるのだから)相手に対して、
全然包容力がない。
ヘンな人、という蔑視が生まれる/広げるかもしれないことを、想像していないし、自分の責任ではないと思っている感。
出す以上、一つ「その人との付き合い方」を答えを出すのが使命で、大きな場に引っぱり出すというのはそういうことなのに、それをやる気がまったく感じられない。
司会のジャッジを無意識にトレースするひともいるのに」

というようなことが、憤りの前提に据えられていたと思う。

上記の条件は、おそらく『タモリ倶楽部』を見てきて培われたもの。
『タモリ倶楽部』は、相手の生き方を平熱で受け入れる番組だった。だから好きだった。

で現在、上記のような、ひとが見たらどうなるか、の想像力が、自分から薄れて、
単純にへへーとテレビを見てしまうモードになってしまったのだろう。


相槌のタイミングと音高が重要

見直すと、これがけっこう音痴気味に聞こえる。

タイミングのずれ、音の高さのずれが、
話の内容を聞いているのか/聞きたいと思っているのか、
関心度合いは高いのか/高そうに見せて「はいはいもう終わり」というメッセージを伝えているのか、などを生むことになる。

以下、タイムコードごとにいくつか拾って書いていきますが、
前半はふつうにみられます。
多分問題は、ちゃんと内容が紹介された中盤以降の、食いつきの弱さなのかもしれない。


YouTube版は編集版

これもひじょうに重要な要素で。
ひとの話の流れって、何の後に何、で意味を作っていってるから、生放送から編集されたYouTube版では、唐突な言い方とかが増えている可能性もあります。
(例えばYouTubeだと佐々木さんが性的欲求について訊くのは唐突ですが、幼少時代から変身願望に性的な感情があったという話が先に出ている。
また、シャチ化計画にいたるまでの「生きづらさ」のくだり、司会のひとは言葉を挟まずちゃんと聞いている)


8:00ごろ

紹介動画、シャチ化計画の工程表説明が終わって、
「結構、ねえ、共感してくださる方がいたようですね?はい」
「そうですね、本当に」
「うん」
「シャチじゃないですけど”自分も動物になりたかった(という人から沢山お便りがあった。以下略)・・」
というやりとりがあった。

これは以後何度か出てくる。司会の方の癖のようだ。
話を相手に振ったあと、相手の話し出しでなぜか自分が「はい」と言う。
自分のパートがおわった安堵?
自分は聞き手に移りましたよ、という印の「あいづち」第一手を、早く打ちたい?

これ、何だろうか。


11:04ごろ

佐々木俊尚さんが『聖なるズー』の話を出し、性自認≒LGBTQのひとつとして獣化欲求もカテゴライズされうるかもしれない、ということを言う。
それにエニオンさんが、
獣化願望をもつ人も様々で、完全に動物になって生きたい人もいれば、週末だけの人、野生ではなくペットを望む人、人として獣になりたい人、などなどあり、一概に性自認の範疇で「動物になりたい」人をカテゴライズするのはむずかしい。
まだ、ざっくりとした感じでとらえていただきたい、という旨。

に対しての、尻上がりの「へぇ~」。


12:29ごろ

EXITりんたろー。さんが食べ物はどうしているのか質問。
安部敏樹さんが「シャチって4種類くらいに分かれますよね」と、分布によって食生活が違うことの補足。

それに対して、高めの平たい「へぇー」。


13:17ごろ

先の4種というのは南極海に住むシャチを分類したもの(A~Dタイプ)で、他にもシャチの生息域はあり(北極・カリフォルニア・北海道ほか)、それぞれ食生活が違うこと。
その中で、なろうとしているのは

「カリフォルニア沖のオフショアの、大っきいサメとか襲って肝臓を食べるようなやつらの生き方が今のところは・・」
「あっ!結構じゃあシャチ界のなかでもかなりワイルドめな・・」
というエニオンさんと安部さんのやりとりを聞き、

「この会話できる安部さんもすごいね。(スタジオ笑)ちょっとついていけないよ、さすがに」

ツッコミの範疇ではあるがぎりぎりのライン。


13:22ごろ

YouTube版ではここで時間が飛び(編集点)、
もう一人のゲスト、心理カウンセラーのかたのパートに入る導入部。

「更に話を進めていきまして・・まあもっともっと現実的な部分ということでですね、なりきることの力、ということで(以下略)」

現実的な部分、と言う際に愛想笑いのようなものを挟んでいる。

ここは編集で印象が変わる部分。
この前に、鯨類学者の先生に聞いた、ヒトがシャチになれる可能性「ほぼ0%」というのがあり、安部さんの「こんなの出していいの!」的なくだりがあったことも影響しているだろう。
(なお『季刊性癖』でエニオンさん自身も「無理」と表明している)

※※ところで
「「なりきる」ことによる潜在能力解放」というのは、エニオンさんの「シャチになりたい」こととは発端が違うので、両者をひとつの企画で出すのは無理がある配置だろう。特にYouTubeは
(YouTubeコメントで、心理カウンセラーを横に置くというイジリだろうという見解有。だったらなお悪い)


15:53ごろ

具体的に「なりきり」が役立つシチュエーションは・・と振り、相手が話し始めてすぐ
「うんー」
と相槌。

やはり、エニオンさんにだけではなく、本人の癖のようだ。


17:04ごろ

途中までの話を軽くまとめ、相手が話し出したところで
「うんー」

18:48ごろ

「なりきり」の話題から、「理想の自分」のようなペルソナを置くことで様々な意思決定をこなしやすくなる(安部さんが実行中。矢沢永ちゃんもそうではないか、と佐々木さん)、という話題に。

今の話はシャチ化計画に活かせそうですかと振る司会のかた。
エニオンさんが話し出したところで
「うん-」

また、カメラアングルで、話振った直後に相手から目を離してフロアのどこかを確認している様子が映る。
(仕事上当然なのだが、これがドラマなら「興味が薄い」の心理演出になってしまうところ)

19:00ごろ

エニオンさんが、どの意思決定も「シャチ化」に関わるかどうかでやっている、と返答。スタジオがおおー、となるなか
「この迷いのなさいいですね。走っていただければと思いますね」

と、ひとごと感のある距離感。

19:23ごろ

そろそろ締めのムードのなか、振られたりんたろー。さんが、EXITの基本的な路線はぜんぶ兼近がつくって、おれはのっかっただけで・・的な前フリのあと、
「最近は、EXITってどういう行動するかな、って、本当に安部さんじゃないですけど(司会:へぇー)考えたら、本当に楽になってきて(スタジオ:へぇー)」

と、ひとり突き抜け気味のタイミングでへぇー。


まとめ

ヤな記事でしたね これは。

というわけで
当初感じていたヤな感じはおそらく
「もっとやさしくしてくれるべき」
という、こちらの願望だったことがよくわかりました。

「マツコの知らない世界」やら「激レアさんを連れてきた」やら「家、ついて行ってイイですか?」のスタジオやらにおける
距離感と包容力。
それを求めることから生まれたんだろう。

カンペを読んで次の話題を振るだけじゃなく、
もっと相手の話をまとめたり、質問しに行ったりしてほしかった。

見直してみると、他にもやっぱり
「へえー」
の音の高さの問題、あいづちのタイミングの問題もあり、
やっぱり、興味を持って話を聞いている表明としては、下手こいてるところもあったわけなのですが。

そして実は、ABEMA版では、最後に
「けっこう深い話でしたね!
シャチになりたいって、何!?(スタジオ:笑)とかって私、ちょっと打ち合わせの時とか思っちゃったんですけど、思った以上に素晴らしいテーマでしたね。深いですね。
がんばってくださいシャチ化計画」
「はい、ありがとうございます」

という、司会のひとがやや胸襟をひらく締めがされている、のです!!

YouTubeはここもないので、後味がちがう。


でも、そんなに根本で取り違えがあるとも思わない。


ヤな感じ、をとらえる時に重要なのは
「人のふるまい、表現は、べつに内面を100%表しているわけではない」ということです。
ここをまちがえたらあかん。
ドラマとかマンガみたいな「感情表現」は公約数を取っただけで、現実の人間の内面と表現はそんなリンクしてません。

だから、おれが司会のひとを、ヤな感じだなあ、と思ったのは本当なんですが、
あいつはこんな偏見でひとを見て・・!
とかは、言いきれない。
ただ、あの場でこういうタイミングでこの音を出せてたら、もっとええ感じの場になっただろうに・・・
ということを、わたしはいいたい。

それだけ。


以上です。





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