映画「キャロル」を観た。
16/02/16
宣材物と主演の二人が視覚的に美しいから、という単純な理由で観たいと思ってた作品。
女性同士の恋愛を描いたものってことで、最近はLGBTを題材にした作品がよく話題になるな〜と思いながらも、結構期待して観ました。そうしたらいい意味でその期待を裏切られて超興奮している今!!!
というのも、最初にも書いたようにもっと「美しさ」を売りに感情に訴えかけてくる感じなのかなと思ってたのに、予想以上に社会派というか、ずっと意図的な作品だったから。ただ綺麗なだけで済まさずにちゃんと頭で考えさせてくれるようになってた。すごい……。
ルーニー・マーラ演じるテレーズは、ただなんとなく人形売り場で「労働」し、自分に好意を寄せてくれる男とただなんとなく寄り添っているぼやっとした女性。
そこに現れるのがケイト・ブランシェット演じる人妻・キャロル。テレーズとは対照的にパキッとした女性で、なんだか訳がありそうなその言動がテレーズの視線を通して、ひたすら魅力的に描かれる。
初めて二人がランチをするシーンでは、この二人の違いがよく現れている。キャロルが光速でメニューを決めるのに対し、テレーズは迷ったあげく「(飲み物も食べ物もキャロルと)一緒で。」と答える。
その後お互いの身の上を言葉少なげに語るのだけれど、キャロルに「あなたは彼と暮らしたい?」と聞かれ、テレーズは
「私はランチも決められなくて……」
と返す。
この台詞、最高にシビれない?!何って私、この映画の台詞が最高に好きだった。みんなが言っているように映像や衣装、主演二人の演技ももちろん美しいのだけれど、論理的でクールな台詞運びにずっと夢中だった。
キャロルとテレーズが、旅先で出会った、女性向けの小物を売っているという男性と会話するシーンでは、
テレーズ「口紅は売ってる?」(この前夜キャロルとテレーズはお化粧をし合う遊びをしている)
男「いや、裁縫セット。そんなものいらないよね(笑)」
といった具合。「口紅」に「裁縫セット」って返しがもう……。最高……。笑
あとは2人の関係が窮地に陥るシーンでテレーズが
「望みが分からないのにすべてにイェスと……」
と言って自分を責めるの。本当に短いけれど、端的にテレーズという人間を表す最高の台詞だと思う。
台詞意外でも繊細な描写が良かった。上でも書いたようにキャロルは一見強くて自由な女性のように見えるのだけれど、煙草に依存していたり感情的で情緒不安定だったりと、実は弱い女性。
そんな彼女の性をよく描いていると思ったのが、「キャロルはよくものを見つけられなくなる」という描写。
鞄の中身からものが見つけられなくてナーバスになる、という一見なんてことないシーンが2回あるのだけれど、この場面で実はキャロルは複雑でしがらみの多い女だってことが分かるのだと思う。
そして作品のテーマも良い意味で予想とは違って考えさせられた。
お恥ずかしい話、「性別に拘らずに恋愛してもいいじゃない?」っていう単純にセクシャルマイノリティーを肯定する映画だと思ってた。
でもこの映画はそうじゃなくて、レズビアン特有の〈男性(または男性中心的社会への)嫌悪からくる消極的な選択肢としての同性愛〉と、その閉塞感がちゃんと描かれているの。
「性別に拘らず恋愛したっていいじゃない!」ってことなんてみんなそろそろ気付いているはず。だから「じゃあなんで性別に拘らなくてもいいの?」、「じゃあなんでそれが上手くいかないの?」ってところが、これから取り組んでいく議題なんだろうな。己の勉強不足を恥ずかしく思う。
あと、以下はネタバレにも繋がってくきてしまうので注意だけれど、実は冒頭と終盤のキャロルとテレーズがディナーするシーンはリンクしている。
2人が話しているところにテレーズの知り合いの男性が「テレーズじゃないか!」と言って入ってくるんだけれど、このシーンを見て思ったのは、キャロルとテレーズの関係は、男性がいることで、あくまでその「差異」としてしか、セクシャルな関係として浮かび上がってこないということ。
テレーズが仲間とのパーティーで見ているカップルたちの画もまさにそれ。本当になんてことないシーンなんだけれど、すごく切なくなった。
ということでだらだら書いてしまったけれど、決して全てを肯定するような綺麗ごとで済ませる映画じゃなくて良かったということです。この映画の一筋縄ではいかないところを分かってくれる人と語りたい〜!
p.s.
でも男性はこの映画をどう思うのだろう?と思って周りの人に聞いたら、「まあまあ良かった(綺麗だった)」「つまらなかった」と言われた……笑 私はこんなにも興奮したのに見方というのは面白いものですね。
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