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スポーツの未来に僕たちができること レポート vol.3 新規顧客と解約顧客の砂時計

#スポみら  記事の第3弾。

なんだかだんだんレポートではなくなってきた。お二人の話はDNAの二重螺旋のように絡まりながら、影響しあいながら話は進んで行った。

僕の話はそれと連携しながら、それでいて少しだけ外れた領域の話をしている。

こんな感じ。

さて、今回の話は新規顧客、解約顧客の砂時計の話をします。

アルビレックス新潟のイノベーションとジレンマ

アルビレックス新潟は2001年にビッグスワンが竣工したことをきっかけに爆発的に観客動員数を増やしたクラブ奇跡のクラブだ。

その時は「スポーツ不毛の地の奇跡」とか「地方クラブの優等生」とか言われていろいろなところで成功パターンとして紹介された。

モデルは超簡単で「コミュニティの最小単位である家族をターゲットに招待事業を展開する」というもの。

前回の記事でアルビレックスの特異性として赤ワクで囲った「日本一の招待事業」を図解するとこんな感じだ。

実に簡単に図解した。

だが実はこれがなかなかできない。地域の自治会長や教育委員会を説得するのが凄まじく大変なのだ。

これは僕が言っていることではなくて、Jリーグのレポート記事として公開されている。

J league NEWS Plus vol.8(前編)

J league NEWS Plus vol.8(後編)

そしてレポートの中にはこのようなことも書かれている。

「一企業の営利事業になぜ協力しなければならないのか」という意見が強く、多くの自治会の班長に拒否反応を示されたという。そのためクラブスタッフが自治会の集会に足しげく通い、「新潟を元気にしたい」という招待事業の主旨を根気強く繰り返し説明していった。「新潟市内すべての自治会が受け入れてくれるようになるまでに3年かかった」

これが他のクラブがなかなか真似できず、ビッグスワンを視察に来た多くのクラブのスタッフは肩を落として帰っていたという話も聞いたことがある。

一方で、問題点も語られている。

「ビッグスワンのオープンから8年という歳月が経過すれば、例えば家族で来ていた子供も大きくなって親と一緒に来なくなる。そうした変化に応じた顧客対応ができていなかった」、「J2降格を回避することに敏感になりすぎて、顧客満足度向上にまで気を配れなかった」。

これはどちらも2009年に当時の中野幸夫社長が語ったことだけど、アルビレックスを長年見てきた僕の肌感覚とも完全に一致する言葉だ。

アルビレックスは砂時計に砂を入れ続ける作業をしていたのだ。

資料にも書いてあるけど、「ビッグスワンを見に来ませんか?」「満員のスタジアムを体感しませんか?」の一点が攻め筋な極端な戦略だと言える。(島田社長の話を聞いた後なら特に)

現実として、僕らのクラブはその後観客動員数を減らしつづけることになる。3万人、2万5千人、2万人と順調に減らし、昨年は1万5千人まで落ちた。

すでに砂場は痩せ細り、砂時計の穴は相変わらず塞がっていない。
砂時計の体積はとてつもなく大きい(4万2千人)。

千葉ジェッツのイノベーションはここが違う

一方、島田社長の話は「誘うのも大事だけど、せっかく誘うならしっかり迎え入れる準備をしなきゃダメでしょ」というものだった。

勝利はコントロールできない試合の雰囲気もコントロールできない。でも運営レベルはコントロールできる。コントロールできる範囲のものは100%やろう。日本一のショーアップをしよう。

この方針はおそらく「観客の離脱率の圧倒的な低下」をもたらしているはずだ。

島田社長は砂時計の穴を小さくしている。
そもそも砂時計の体積が小さい(5000人)。
砂場にはまだまだ新規の砂がたっぷりある。

2つのイノベーション 爆発力と持続力

最近すごく面白い話を聞いた。この本を書いた人のお話。

元WOWOWのスタッフの経験を書いた本で、一言で言うと「解約しようとする顧客を説得する部署の設立を任された件 えぇ?社内の営業スタッフも全部敵なの?」だ。アマゾンの書籍紹介にはこう書いてる。

無料施策を続けると失敗するのはなぜか?リアル店舗、通販、SNS、会員制ビジネスなど顧客や会員減に悩む、すべての会社、個人が使える「顧客を離れさせない仕組み」「優良な顧客だけをつかむ方法」がこの1冊に!

アルビレックスと千葉ジェッツのイノベーションを見比べた後だと「これが解決策じゃん!This is it!」と思わずにはいられない(苦笑)

新規顧客を獲得するコスト(営業コスト)と解約を防ぐコスト(離脱防止コスト)を比べると離脱防止コストの方が圧倒的に安いのだそうだ。(5分の1だとか)

そしてそれを社内で声高に叫ぶと営業セクションが切れるのだそうだ(苦笑)

つまり、招待事業は高くつくのだ。

Jリーグクラブでもそこに注目している人はいて

これですよね。ここ(F2転換)をちょっと引き上げれば離脱率を引き下げることができる。この考え方はスポーツマーケティングよりWebマーケティングをやっている人の方がセンスあるかも。

トイレとかヤジとか・・・の他にも渋滞とかグッズやビールが買えないとか満員のスタジアムも結構不快な思いあるんですよ。


一方で、僕らのアルビレックス新潟のイノベーションは「全くの無だった新潟でいきなり4万人の超満員イベントを通年で行うクラブを作った」ということ。

これは強烈なイノベーションで僕らはその虜になった。

今スタジアムに残っている1万5千人は、この書籍で言う所の「モチベーションの高い顧客」そのものだ。

F2転換(新規を2回目に引き上げる)って僕らサポーターも手伝いできたりするかもな。。。

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