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詩「祠」

朧覚えの地図を頼りに
歩みに足る道を捜した
動く街にきな臭い紳士
こんな歯車に誰がした
あいつを超えるまでに
あと何回の恥に病むか
宗教に届かぬ慕情ゆえ
未だ机上を往還しつつ
次の日傘を捜している
書くだけ書いた手紙を
鞄にいつもしのばせた
忘れる権利さえ投げて
彼女の陶酔を唾棄した
億劫、引き返すことも
進歩すらもが埃塵曇怠
戦わぬままの白い足で
安全地帯を綱渡りする
髪に絡んだ性欲を梳き
粛々と津波に備えよう
一瞬の永遠を煮出して
たった一杯の茶を飲む
下らない漫画で笑おう
回るドラムに組しよう
頁を捲る手を見てみて
それが貴方のウン十年
リサイクルできる媒体
オーラを引きずる災害
クープランの墓を嗜み
無料のコーヒーに映す
令和のブラウン管放送
金で買えぬ心でも無理
粋な敗退にキスしたい
ふと傾く人工の向日葵
暗闇にも虹をかけよう
今すぐ伊豆に行きたい
安い月賦執念のマーチ
明日までには日進月歩
何も考えず眠っている
言える話は多くはない
三者百様の怒濤の中で
一つの価値をもつこと
一千年を堪えた祠にも
今日の風が吹き過ぎる


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