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エリザベス・ビショップ「ONE ART」を訳してみました。

こんにちは。ハルです。

突然ですが、20世紀のアメリカの詩人のうち、最も重要な人物の一人であり、桂冠詩人、ピューリッツァー賞の受賞者でもあるエリザベス・ビショップの「ONE ART」(1976)を訳してみました。

まずは拙訳から、どうぞ。

「ワン アート」 エリザベス・ビショップ

失うことを得ることは
そんなに手強くありません
喪失は世に充ち充ちて
災いなんかじゃありません

毎日何かを失くしましょう
鍵を失くして苛立って
無駄な時間を過ごしましょう
失うことを得ることは
そんなに手強くありません

もっとたくさん失くしましょう
もっと素早く失くしましょう
失うことを学びましょう
位置も名前も旅先も
失うことはこれ以上
憂いを運んで来ないから

母の時計を失った
見て!みっつの愛しい家のうち
一等か二等は消え去った
失うことを得ることは
そんなに手強くありません

ふたつの街を失った
とても素敵な街だった
広くてわたしのものだった
ふたつの河と 大陸と
寂しいけれど 喪失は
災いなんかじゃありません

あなたを失うことでさえーーー
(ジョークの声と 私が愛したその仕種)

私は嘘をつきません
以上が証拠となるでしょう
失うことを得ることは
手強すぎたりしないでしょう
失うことは、とても、まるで、

(私よ、書きなさい!)

災いみたいに見えるけど。

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続いて原文です。

ONE ART Elizabeth Bishop

The art of losing isn't hard to master;
so many things seem filled with the intent
to be lost that their loss is no disaster.

Lose something every day. Accept the fluster
of lost door keys, the hour badly spent.
The art of losing isn't hard to master.

Then practice losing farther, losing faster:
places, and names, and where it was you meant
to travel. None of these will bring disaster.

I lost my mother's watch. And look! my last, or
next-to-last, of three loved houses went.
The art of losing isn't hard to master.

I lost two cities, lovely ones. And, vaster,
some realms I owned, two rivers, a continent.
I miss them, but it wasn't a disaster.

--Even losing you (the joking voice, a gesture
I love) I shan't have lied. It's evident
the art of losing's not too hard to master
though it may look like (Write it!) like disaster.

脚韻の踏みかたが鬼ですね。ヴィネラルという詩の形式とのこと。ARTは「こつ」と「この詩が芸術作品であること」を掛けているのでしょうか。

是非原文でも味わって見てください。

ではまた!

いつか詩集を出したいと思っています。その資金に充てさせていただきますので、よろしければサポートをお願いいたします。