父について
夏の終わり
78歳の父との突然の別れがあった
15歳から海外で暮らしていたこともあり
あまり家に寄り付かなかった青年時代
その後も、都会で仕事をし海外を渡り歩き
顔を合わせることはあっても
早くに独立した娘と父親の関係はそこまで深まることもなかったようにおもう
出産の時も実家には帰らずに過ごしたけれど
娘を産んで初めてのお正月
本当に久しぶりに実家で過ごし
父と母と娘と私と4人で
すぐ近所の高台へ初日の出を見に行った
その時の父の言葉が耳に残り続けている
「こんな日が来るとは思わなかったなー」と
父は寂しかったのかな
それから、娘を連れて度々実家に滞在し
生活の拠点も東京の実家の近くに移した
なくなった後、おじいちゃんはどんな人だったけねーなんて言いながら
娘と嬉しそうに遊ぶ父の動画をたくさん見た
こんなに早く別れが来るとは思わなかったけれど
それでもこの4年はかなり濃密に過ごしたのではないかと思う
少しだけ親孝行できていたか
アルツハイマーを患って
それでも私たちの顔と名前はずっと忘れなかった
なんでも母の言う通りで、優しいというか、母に尻にひかれていたというか
そんな父の実態も、本当の気持ちも聞いたことはないし
もう聞くこともできないけれど
偉大な祖父とその血を受け継ぐ母に挟まれ
あまり存在感のなかった父
おしゃべりが好きで、母の隣でニコニコ楽しそうにしていた
これ以上は自宅では難しいねと、家族会議を重ねてホームに入ってすぐに
急な病であっという間に他界した父
意識してではないだろうけれど
その引き際が最も父らしいのかもしれない
そう考えると すごい人だ
この4年間
家族の運命の糸に引っ張られ
実家の近くに移り住んだ
子を巣立て、祖父母を見送りする中で
最後くらいは少し親密になれていたのかもしれないと思うと
お互いに救われるのかもしれない
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