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最高の表現!最高の演技!最高の再構成!誉れ高きうみねこのなく頃に~Stage of the golden Witch~ Episode3を讃えよ!!

全てはこのnote記事が発端だった。

えー、僕のnoteデビューともなったこの記事、BanG Dream! It's MyGO!!!!!感想文コンテストに参加した記事なんですが、この記事のラストでこんなこと書いちゃってたんですね。

いやお前、何でMyGO!!!!!記事のラストで無関係な作品の宣伝してんの!? 一応釈明しておくと、当初このコンテスト企画の締切日を勘違いしており(まぬけ)、この辺りの記述をしたのが締切の1時間前とかいう死ぬほどタイトな状況だったのでノリと勢いに任せて書いた結果こうなりました。丁度この直前にEP2の開演と配信が行われていてその時点でドハマりしたこと、そしてMyGO!!!!!の対抗バンドであるAve Mujicaについての考察でうみねこ好きな中国人と国際交流していたことも大きく影響しているのですが(後者については上の記事を参照して下さい)、ともあれ観に行きますと高らかに宣言しちゃったわけですから観に行かなきゃフェイク野郎なわけです。いや、普通に行きたかったんですけどね。興味は大いにそそられていました。

というわけで、初日に実際に観てきたわけです。
その結果がこちら。

もう完落ちである
ちなみにこのオタクの厄介な特徴として、ネタバレだろうが何だろうが作品を浴びて抱いた感情をその場で語りたがるというカスの性質があるわけなんですけれども、とはいえ千秋楽までネタバレ禁止のためどうしようとなっていました。ふせったーなどの手段はあるにしても、書きたいことがあまりにも多すぎる……だったら書くしかねぇか、感想記事をよ!!

というわけで、その偉大なる舞台、うみねこのなく頃に~Stage of the golden Witch~ Episode3が超超超超超凄かったことを叫び尽くすだけの記事となっております。オタクの新鮮な悲鳴がいっぱい聞ける記事だよ! 楽しいね楼座ッ、楽しいねッ!

アニメうみねこへのリスペクト

上記のスクショでも分かると思うのですが、当方、EP2までの舞台は配信媒体を駆使して視聴していました。そして、この時点での僕の感想としては、アニメうみねこをとてもリスペクトした舞台化だ、ということでした。

その志が最も色濃く出たのがOPで「片翼の鳥」の再現したことではないかと思います。まず、PCゲーム版の「うみねこのなく頃に」じゃないんだ!?とは思いましたが、「片翼の鳥」も名曲中の名曲なのでこの選曲は理解できます。ですが、舞台が見せてきたのは、特にBメロで親兄弟たちに照明が当たっていくシーンまでもを再現するなど、アニメ映像への純然たるリスペクトでした。
お、おおっ、マジか!? 世間的にも評価の芳しくないあのアニメ版を!? ……いや失礼。単純に叩くべきではない作品なのは分かっています。元より映像化が困難な作品かつ、原作から出ている情報も少ないあの状況でやれることは限られた、しがらみの多いアニメ化でした。当時先例のない中で映像化しろと言われた制作陣は、ひぐらしの経験があったとしても悩み抜いたに違いありません。結果、ひぐらしで期待されたスマッシュヒットとは雲泥の差とも言える、乏しい反響とセールスになったのは歴史が証明しています。ただ、それでも、うみねこの映像化に果敢に挑戦したアニメだったのは確かなのです。そして、うみステが偉大なのは、このアニメを尊敬すべき先人として認め、アニメがやってきた挑戦をきちんと拾い上げて尊重してくれたことでした。

その象徴とも言えるのが赤字の演出。おおよそうみねこの代名詞と言ってもいい要素と思うのですが、おそらくは最もアニメ化および舞台化にあたって難儀した部分でしょう。こんな映像化泣かせな表現があるか!? と今でも思います。いや、映像って絵で見せるものなので、文字を読ませるのって根本的にタブーというか、映像の持ち味を殺すものですし……。
結果としてアニメの赤字は赤い文字列を作中のキャラクターの周囲に這わせるという解を見ました。この表現に“別解”があったのかどうかは未だ定かでないのですが、うみステはこの解を全面的に踏襲。ああいえ、アニメの解を肯定した上で、更に進化させてきたと言うべきでしょう。アニメの赤字表現に不満があるとすればその文字列が背景に埋没気味であったことですが、白布に赤き真実の文字列を投影することにより、赤字の独立性を物理的に上げるという見事な工夫でその点を解消。更には布をそのまま使って赤字により戦人が雁字搦めになるという表現を視覚的に達成してくれました。アニメの果敢な表現を更に高めてくれる舞台。それがEP2までを配信で観た時点での、うみステに対しての率直な感想でした。

あのシーンもこのシーンも、有効です!

とはいえ、やはり気がかりだったのは尺の問題。事前に3時間程度と告知されており、流石に諦めなければならないシーンも多数出るだろうとは覚悟していました。EP3って本当に盛り沢山なわけで……。とはいえEP2までの出来から原作再現度とカタルシスは高い水準を期待できたので不安視まではしていなかったのですが、結論から言えば美味しいシーンは全て完璧に舞台化されてました。……は?

しかも驚嘆すべきことに、あらゆるシーンが最大級の熱量を伴って舞台化されていたのです。EP2までやられっぱなしだった戦人が“指し手”を心得てからの赤字論理バトルは圧巻とも言える勢いで屁理屈を応酬。川隅美慎さんの戦人は相変わらず気持ちのいい暑苦しさで、何か叫ぶ度に会場の気温が上がります。トンデモ魔法バトルの方でも煉獄の七姉妹が舞台上を所狭しと暴れ回りますし、月うさぎの舞踏と共に放たれるシエスタ姉妹の弾丸は絶望感の塊。原作プレイ時でさえお、俺は何を見せられているんだッ!?となったワルギリア戦の双肩の戦塔やアイギスの楯やグングニルまでもが、映像やセットを駆使して完全再現されていました。この舞台、中二病とハッタリに本気です。
一方、留弗夫と霧江の戦闘シーンは大人の渋味を強く感じさせてくれるものでした。留弗夫役の福地教光さんが本当に色気に溢れていて、歳を重ねたからこその人間的魅力を最大限の説得力で演じてくれていたなと思います。霧江の語る嫉妬と妄執も背筋を凍らせる迫力があり、大人のカッコ良さと汚さの両面が滲み出ていました。実のところEP3のテーマは絵羽とベアトのインナーチャイルドだったりはするので、その対極にある「大人」を描く留弗夫と霧江の戦闘は絶対にしくじれないシーンだとも考えていました。なので、ここが完璧に決まったのは本当に嬉しかったですね。絶対に子供にはできない戦いが、最高の演技と表現で実現していました。
派手さが目立つのが原作からのEP3の特徴ではありますが、しっとりしたシーンも削らず盛り込んでおり、そのメリハリがやはり舞台の満足度に繋がってもいました。楼座と九羽鳥庵のベアトリーチェのやりとり、本当に一時の心温まる触れ合いになっていましたし、作中の大半をずっと下品にゲラゲラ笑うベアトリーチェで過ごしているのにあの場面だけは“籠の鳥”のベアトリーチェを降ろす稲田ひかるさんの演じ分けには脱帽モノです。
個人的に凄く良い味わいだったと感じたのは、源次が紗音と嘉音に安らかな死を与えるシーン。普段感情を露わにはしない源次が、あの瞬間だけは心からの同情の念を溢れ出させてくれる姿には得も言われぬ温かみがありました。しかも、それが長年抱いてる感情なのも後のEPから知っているので思わずグッと来るところ。なお、その直後で郷田が客席から登場するので笑いのメリハリも凄まじかったですが。この登場、EP2でベアトがやった奴なんですけど、ベアトと同格の扱いを受けるということは、やはりマジカル郷田シェフは真実なのか……。

それにしても恐るべきというか不思議なのは、これだけ数多の名シーンを全て演じきったにもかかわらず、うみステEP3には一切の「詰め込みすぎ感」が無かったことでした。
おかっしいじゃねぇかよ!! EP3のボリュームが3時間に無駄なく収まるってのかよ!? こんなの絶対あり得ねぇ!!! と心の中の右代宮戦人が慟哭しているのですが、一つこの舞台に大きな魔法をかけた人物がいるとすれば、それはロノウェでしょう。
出番が完全にカットされたラムダデルタとベルンカステル周りのシーンを除けば、目立った圧縮要素としてはヘンペルのカラスやシュレディンガーの猫箱といったロジック部分の説明が挙げられます。この辺りが全て軽く触れられただけにもかかわらず、以降の赤字屁理屈合戦は不思議と何の無理もなく進行していきました。こちらが原作既読だとしても些か不可解なくらいの引っかかりの無さ。一体何故なのだろうと少し疑問に思って考えたのですが、おそらくはロノウェの放つ「有効です!」の言葉に、原作にもない独特の推進力があったためだろうと思います。あの「有効です!」にはこれ以上の有無を言わせてこない異様な迫力がありましたし、あの言葉が発されることで、直前の問答の勢いを引き継いで次のトピックに移っていくような感覚すらありました。結果、これだけ圧縮したにもかかわらずテンションとカタルシスを全く失わない、勢いある大舌戦に仕上がっていたのだと思います。72柱に名を連ねる大悪魔は、MC回しも巧みだったというわけです。ぷっくっくっく。

舞台映えしすぎる煉獄の七姉妹

さて、うみねこ他媒体には存在しないうみステ特有の醍醐味と言えば、バックダンサー(Butterfly)の皆さんです。舞台の上を所狭しと舞い踊り、時には語りも交えて場を賑やかしながら物語を進行していくスタイルはEP1の頃から大変ユニークであり、EP1のアーカイブを観た時点で僕はこう思いました。ズ、ズルい…!! EP1から事実上のゼパルとフルフルがいる……!!
裏方もかなり兼務しているようなので本当にこの舞台の屋台骨なのだと思いますし、今回一気に7人まで人数を拡大したことにより煉獄の七姉妹の役を得て晴れてフロントに……出てきた瞬間一気に主役になってましたねこの人ら

EP2ではサタンとアスモ(とベルゼもでしたっけ?)くらいしか登場できなかった鬱憤を晴らすかのように、冒頭から凄まじいまでの賑やかさで戦人いじめをやってのける華々しいデビューを飾ったかと思えば、OPの片翼の鳥パートでいきなりキレッキレのダンスで大立ち回り。赤黒のバカ目立つ衣装のキャラクターが7人揃ってそこかしこで踊り倒す様子は壮観としか言いようのない光景でした。紛れもなく、あのOPは七姉妹のための時間でした。
その後も戦闘シーンの度に華のあるアクションを展開してくれましたし、ぶっちゃけ華がありすぎて、どの姉妹に注目すりゃいいんだ!?となるくらいにはパラレルプロセッシングパワーを要求されます。特に黄金郷に至ったパーティーの場面では他の役者まで交えてやりたい放題。この記事を書くにあたって原作を確認してきましたが、留弗夫とベルフェゴールがイチャついて霧江が止めに入る掛け合いなんて完全に舞台オリジナルです。違和感がまるで無かったから本当に凄い。
本舞台全体のMVPについては後述しますが、魔法バトルが中心となった前半戦のMVPは文句なしに煉獄の七姉妹でした。基本的に原作を忠実に再現してくれている舞台化なのですが、煉獄の七姉妹については想像を超えてきたとしか言わざるを得ません。煉獄の七姉妹って……こんなに舞台映えしちまうのか!?という純粋なインパクトがありました。
しかもこの内2名はシエスタ姉妹まで兼務していましたし、人数に比例して扱うセットの数までEP2の倍以上になっていたので、裏での慌ただしさたるや想像を絶するものがあります。本当にこの方々のお陰で成り立っている舞台だなと最大限の敬意を表するところです。ちなみにうみねこって、後年の追加エピソードで自虐される程度には登場人物がまだまだどんどん増えるので、今後さらに忙しくなりそうですし人数も増えそうなのですが、果たしてどこまで大所帯になっていくのか……。あ、でも、EP4ならマモンなんかは独立した役者立てるのかもしれませんね。EP4は男性キャラも増えるので、山羊さんたち(Atomosphere)も誰かしら兼役して活躍するのかなあ。鯖吉とか

EP8終わる頃にはカーテンコールに何人いるんだろう

怪演、エヴァ・ベアトリーチェ

前半戦のMVPが煉獄の七姉妹であったことは既に述べましたが、後半戦……いえ、全体のMVPはもう1人しかいないでしょう。エヴァ・ベアトリーチェ役の柴田茉莉さん。もはや完全に劇場全体を制圧していたとまで言えるほどの、怪演と呼ぶに相応しいパフォーマンスでした。この場を借りて、誉れ高きその名を讃えさせていただきます。

蔵臼への憎悪、大人になってしまった自分自身への不満と応援、黄金への妄執と、それを手にした時の狂喜。そのどれもが出色でしたし、魔女になるまでのエヴァのキャラクターを絵羽役の平湯樹里さんとの共同作業で作り上げていく様子がまさしく絵羽とエヴァの関係で、微笑ましくもあり狂気的でもありました。あの時流れたhappiness of marionetteは、この2人の名優の仕事ぶりを祝福するためのものだったとさえ感じます。
そして、祝福を受けて以降は魔女と化したエヴァ・ベアトリーチェが一本立ち。第二の晩、楼座と真里亞に何度も惨殺を強いる際の喜びようは狂気の塊としか表現しようのないものでした。あの伊藤美紀さんに比肩するほどの楽しいね楼座ッ、楽しいねッ!を聞ける日がまさか来ようとは……。
ところでこの第二の晩、中盤の山場でもあったためか(トイレ休憩はこの合間なので、丁度中間点でした)、演出面でも大変本気度が高いものでした。先述したようなハイクオリティな演出によって楼座と真里亞に課した虐殺の数々は余すところなく再現されたわけなのですが、流石に巨大な蜘蛛のセットが登場した時には感嘆を通り越して正直笑いの方が勝ったほどです。えっ、わざわざ作ったんそれ!? そのデカさから言って正直シエスタの弾丸より絶望感ありました。本当にそのコストに見合っているのか心配になるほどなのですが、それだけの本気度でエヴァが完全覚醒する第二の晩を盛り上げてやろうという確たる意志が伝わって来るものでもありました。この舞台に黄金(money)を落とす価値、間違いなくあります。こうやって設備投資として返ってくるわけなので。

その後も(原作どおり)エヴァの独壇場。先代様を嘲る様子は本当に憎らしいほど生意気ですし、魔女法廷で戦人にコテンパンにやり負かされて本気で悔しがる姿には、残虐さの中にある子供らしさが確かに垣間見えました。この二面性の表現がエヴァの肝とも言えるのですが、本当に完璧すぎるくらいの表現力でした。
とはいえやはり特筆すべきは……EP3最大のクライマックスと言うべきあのシーン。南條殺しでしょう。EP3に限らず、うみねこ全体を通しても、トップクラスに脳細胞を沸騰させてくる屈指の名シーン(対抗馬は「申し訳ないが、そなたを迎えても」くらいだと思っています)。ロノウェの言葉を借りるならば、これ異常ないくらいの精密なる美しい盤面。それくらいにうみねこファンの心に刻まれた、赤字が紡ぎ上げる芸術の粋とも言えるシーンだったのですから。

悔しいですが、………………美しい………。……何て、美しい赤による、……チェックメイト……………

原作プレイ当時は、赤字SEのビガーン!が鳴る度に恍惚としたものです。特に、南條が他殺と宣言された時には本当に膝を折りそうになったものでした。人は、心の底から敗北を認める時…。そこには未練も屈辱も生まれない。……ただただ尊敬の念しか生まれない…。原作のト書きがそう語るように、この南條殺しの問答は絶望が生み出す感動と表現して差し支えないものでした。それほどの絶望、それほどの感動、それほどの恍惚感。ファンにとってはやはり特別な思い入れのあるシーンでした。
そしてその期待を超えてくるほどに、舞台の南條殺しは最高の翻案を見せてくれました。赤字ラッシュに乗せて、作中にて死亡したはずの各キャラクターの演者が再び現れながら傍らに赤字の死亡宣告を誇示する様は、死にながらにして親族や使用人たちが戦人の立場を追い詰めていくかのよう。そして、その赤字を高らかに宣告していく柴田茉莉さんの演技は、子供が昆虫の羽根や脚を一枚一枚、一本一本剥ぎ取りながら嬲り殺していくかのような、幼さ特有の残酷さがありました。この赤字はまさにラッシュなので、赤字宣言には相応のスピード感が求められもするのですが、その残酷さを孕みながら淀みなく戦人を追い詰めていく様は痛快なまでの勢いとカタルシスがありました。……ああっ、これこれッ! この南條殺しを、ずっと見たかったんだよ!! 赤字SEが鳴り響く度に鳥肌が立っていく体験を、観客席にいながらできたことは本当に望外の歓びとしか言いようがありません。最高の演出と、そして最高の演技で成立した、名シーンの再現でした。


……以上、感想になります。本当に全ての演者、全てのスタッフの大仕事が積み重なって組み上げられた最高の舞台だと思いますし、改めて、この黄金の舞台には生まれてきてくれてありがとうと最大級の感謝を述べさせて頂きます。まだまだ書き尽くせたとも言えないですし、名前を挙げきれていない演者の方も全て誉れ高きその名を讃えたいくらいなのですが、あまり長くなりすぎても読みづらいのでこの辺で。
本来はネタバレ避けのために書き始めたはずなんですが、執筆に時間かかりすぎて結局千秋楽の公演後にアップするまでズレ込んだので、何か当初の目的は果たされることになっちゃいました。まあ、書いてて楽しかったので悔いはないです。

そして、嬉しいことにEP4制作も決定。ラストにあの娘が最後のガラスをぶち破って登場した時には確定演出だと思いましたが、やはり正式に告知されると喜ばしいものです。遂にoverさんも舞台デビューかと思うと感慨深いものがあります。EP4も見たいシーンが、或いはどう翻案されるのか興味深いシーンが盛り沢山なので、本当に楽しみです。やっぱり気になりますやんな。ガァプの衣装と瞬間移動がどうなるのか
それにしても、EP間が半年スパンなのはコミケ頒布だった原作当時を思い出させてくれますし、かなりのハイペースです。いいよなァ……。キコニアなんか4年以上経っても続編出ないのに(コロナ収束したしそろそろ、ね?)。

それでは、9月にまたうみねこがなく頃を、楽しみに待ちたいと思います。
シーユーアゲイン、ハバナイスデイ


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