ヘルプマークの功罪

2018年末に乳がんの宣告を受けて翌年の1月下旬から抗がん剤治療を始めた。

仕事をしながらの治療なので、投薬後に数日の休暇をもらった後は出勤しなくてはならない(働かないと治療費も出せないからね)

初めての投薬後は副作用がどれくらい自分に負担になるかなんて全くわからないから、早めに家を出てバス〜電車を乗り継いで職場へ向かうのだけれど、思った以上に体がしんどくて、空いてる席があればすかさず座ってた。

このとき切実に欲しかったのが周りの目を気にせずに座らせてもらえる「ヘルプマーク」のタグ。

見た目でわからない障害や病気を抱える人が、周囲から手を差し伸べてもらいたい時があることを教えてくれる目印。社会的な認知はイマイチだけど、何もないよりはいいと思う。

そんなある日、SNSでヘルプマークを悪用している人がいる、と受け取られるような書き込みを見た。

「さっき、電車でヘルプマークを見せて席を譲ってもらって座ってた人、電車降りたら一目散に階段降りてった。しかもヘルプマークをかばんに収めながら。本当にヘルプマークが必要な人なんだろうか。私はあのマークを持ってる人は信用しない。」

もしかしたら悪用しているかもしれないし、本当に必要な人かもしれない。そこは本人じゃないとわからないけど、簡単に誰でも入手できるところが痛し痒しだと思う。配布方法は自治体まかせで、基本的に一人1枚なんだけど「ください」といえば「誰でも簡単に」もらえるという配布方法じゃなかなか信用されないよね。

私も住んでる自治体の福祉事務所に連絡したら、ありがたいことに何の証明書や書類も必要なく自宅に郵送してくれた。せめて病院や調剤薬局などの医療機関と自治体が連携して配布するほうがいいんじゃないのかな。

そして、本当にこのマークを周知させたいのであれば、すべての公共交通機関連携して優先席へのマーク追加するなど考えて欲しいけど、言い出しっぺの東京都ですら始めてから7年経った今でもそこまではできていない。なんだろ、このお役所の「こんなの作ったから見てー」みたいな自己満足感。

しかも全国的にはさらに認知度が低いと知った時の残念さといったらもう、なんなんでしょうかねぇ。

と、ここまで書いたのが2019年6月。通勤時間帯は最初からあきらめてるからカウントしないけど、夏頃から年末にかけて、ヘルプマークを付けて電車にほぼ毎日乗って席を譲っていただけたのはわずかに3回。そのうち1回は海外からのお客様だった。その程度の認知レベルなんだなと実感。

マタニティマークが今みたいに認知されるようになるまでどれくらいかかったんだろう、と気になってググったら、1999年に初めてデザインされ、その後自治体でバラバラだったのを2006年に厚労省が統一デザインに制定されたと書いてあった(wikiなのでざっくりとした知識として)

禁止事項(デザイン変更、営利目的の配布禁止など)もしっかり決められているし、ヘルプマークもそろそろこういうのを決める時期に来てるんじゃないのかな。

2020年になってから、ようよう東京近郊を走る電車の優先席にヘルプマークのシールが貼られ始めた。先は長いかもしれないけど、このマークの功罪の「功」の割合が多くなっていくことを切に願う。

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