映画「オリエント急行殺人事件」(フィニー版)感想

 ユスティノフ版「ナイル殺人事件」を見たら、やはりこの作品も見たくなって久々に鑑賞(例によって以下ネタバレありなので、原作・映画を未見の方はご注意を)。
 今作でポワロを演じるのはアルバート・フィニーですが、見た目もしゃべり方などもかなり原作に「寄せている」印象。そういう意味でスーシェのポワロの雰囲気が近いですね。逆にユスティノフがほぼ髭しか共通項が無いのに、原作のイメージを損ねてないのがすごいのですが(笑)。
 また、「ナイル殺人事件」同様、いやそれ以上にこの作品も豪華キャストで、それが推理に対する煙幕になってます。特に、ジャクリーン・ビセットの美しさは今見ても色あせない。個人的な話ですが、実は私が生まれて初めて好きになった海外の女優がジャクリーン・ビセット。「ブリット」「大空港」、そして今作あたりの彼女の美しさは本当に絶品だと思います。
 また、後述する鉄道会社の重役に扮するマーティン・バルサムもいい味出してると思います。今作ではヘイスティングスのポジションも務め、同時にギャグ担当キャラでもあるのですが、そんな彼が原作通りですが最後の重大な決断を下すのがいい。
 この作品はポワロにしては珍しく最後に犯人を見逃すのですが、そこに至るまでのポワロの描写が原作、各実写版全く2つに割れてるんですよね。ポワロは依頼者のバルサム扮する鉄道会社重役に対し、「真犯人を見逃す」と「真犯人を告発する」の「2つの回答」を示し決断を委ねます。
 原作は、「真犯人を見逃す」ことを前提として重役に「2つの回答」を示している印象があります。このフィニー版、そして日本版(野村萬斎版)もそういうイメージ。一方、スーシェ版、プラナー版はかなり悩みに悩んだ末に「2つの回答」を重役に示している印象。おかげで同じ終わり方なのに、フィニー版と日本版はハッピーエンド、スーシェ版とプラナー版はビターエンドの印象です。
 

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