アガサ・クリスティーについて思うところ・作品編

 今回は個人的にクリスティーの作品の中でも個人的に印象深いものについて簡単に語っていきたいと思います。思い切り「ネタバレ」の連続なので、クリスティーの作品を未読の方は「絶対に」以下の文章を読まないでください。基本発表順です。
 なお、「アクロイド殺し」と「オリエント急行の殺人」に関してはあまりにも犯人が有名すぎて、私もネタバレしてから読んだということもあり、今回は取り上げてません。

「スタイルズ荘の怪事件」(1920年)
 クリスティーの処女作にして、個人的に最高傑作。この作品以降も様々な想定外の犯人を設定してきたクリスティーですが、「1番怪しい人物がガチで犯人」という設定は初見の時完全に裏の裏をかかれました(笑)。また、「対立していた男女が実は共犯」という、この後のクリスティー作品に何度も登場するトリックもこの作品から使われてます。

「ビッグ4」(1927年)
 ポワロシリーズでも1番の怪作(笑)。まだ、クリスティーがミステリー作家として方針が固まってなかった時期の作品。基本ポワロシリーズは「本格推理もの」なのに、この作品は完全に冒険小説。後にスーシェ主演でドラマ化されましたが、さすがに内容は全然別のものになってました。

「検察側の証人」(1933年)
 これも「対立していた男女が実は共犯」のクリスティー作品の黄金パターン。しかし、ヒロインの動機が「夫の冤罪を晴らすため」ではなく、「夫の犯罪を隠すため」だったのはさすがクリスティーという設定。

「ABC殺人事件」(1936年)
 前回書いたように、私をクリスティーファン・ミステリーファンにした作品。「連続殺人の中に本命の殺人を隠す」という犯人のたくらみは、初見時小学生だった私にはインパクト大でした。

「ひらいたトランプ」(1936年)
 ポワロ以外にも、バトル警視、レイス大佐、オリバー夫人ら他のクリスティ作品でもメインを務めた探偵キャラが登場する作品。まさに「クリスティー版アベンジャーズ」(笑)。どうせならミス・マープルにも出てほしかったですが。

「ポワロのクリスマス」(1938年)
 残念ながら、個人的にクリスティー作品の中でもワーストの作品。「ノックスの10戒」や「ヴァン・ダインの20測」を絶対守るべきとは言いませんが、やはり「捜査側に犯人がいる」というのは反則だと思います。

「そして誰もいなくなった」(1939年)
 クリスティー作品の最高傑作のひとつであり、「クローズドサークルもに」の原点にして頂点。しかし、個人的には最後の2人が殺しあわなかったら、また最後の1人が自殺を選ばなかったら、真犯人の計画はつぶれていただろうといのがずっと疑問です。映画版や舞台版の結末はそういう感じなんですが。

「ゼロ時間へ」(1944年)
 ポワロの登場しない作品では最も好きな作品。「殺人はドラマの始まりではなくクライマックス」というコンセプトが秀逸。

「無実はさいなむ」(1958年)
 主人公がある人物の冤罪を晴らそうとしたことで、本来起こらなかったはずの、第2、第3の事件が起こる、しかも、冤罪を晴らそうと思った人物が実は事件の主犯だったというビターエンドが印象深い作品。

「カーテン」(1975年)
 「ポワロ最後の事件」というキャッチフレーズから、「多分犯人はOOOだろう」と思って読んだら、やはりそうだった(苦笑)。このパターンはすでにエラリー・クイーンが「レーン最後の事件」でやってただけに重ねて残念。個人的には、今度こそポワロには隠居してもらって静かな余生を送ってほしかった。

個人的にベスト3をあげると
1位「スタイルズ荘の怪事件」
2位「ABC殺人事件」
3位「ゼロ時間へ」
となります。(「アクロイド」「オリエント」は除外)

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