映画「ナイル殺人事件」(ユスティノフ版)感想

 クリスティーに関していろいろ書いているうちに、久々にユスティノフ版「ナイル殺人事件」が見たくなって、配信で視聴。昔の記憶通り面白かったです。(ここからは思い切りネタバレになるので、原作並びにユスティノフ版・プラナー版映画を未読・未視聴の方はぜひ先に原作か映画をご覧ください)
 この映画の面白かった要因は、まず以前にも書いたようにピーター・ユスティノフというスーシェ以前には最高のポワロ役を得たこと。もうひとつはミア・ファーローとロイス・チャイルズという2人のヒロインのキャストの絶妙さ。このキャスティングならたいていの人がミア・ファローが「親友に婚約者を奪われた不幸な女性」で、ロイス・チャイルズが「親友から婚約者を奪った悪女」と思いますよね。それが実は・・・となりますから。もし、最近の流行りにのって日本でも映像化するなら、個人的にはミア・ファローの役は長澤まさみさん、ロイス・チャイルズの役は北川景子さんあたりが適役かな?
 この2人以外にも、脇にジェーン・バーキン、オリビア・ハッセーといった中堅女優、更にデビット・ニーブン、ジョージ・ケネディといったベテラン役者らが出演。この豪華キャストが真犯人に対する「目くらまし」の役割を果たしていたと思います。
 また、実際のピラミッド、スフィンクス、サハラ砂漠、ナイル川の美しさと迫力は圧巻!これだけは小説では味わえない魅力だと思います。先に映画化された「オリエント急行殺人事件」が全編ほぼ列車内のシーンだったのに比べ、「ナイル~」は映画向きの題材だったと思います。
 さて、近年プラナー版の「ナイル殺人事件」ももちろん鑑賞したのですが、いきなり原作に無いポワロの過去が延々と描かれて、正直「一体俺たちは何を見せられているんだ」(笑)。プラナー版は「オリエント急行殺人事件」もそうでしたが、ポワロの描写に多く尺を割いている。本来原作において主役は「事件」そのものであり、ポワロは「狂言回し」のポジションだと思ってます。ユスティノフ版もそういうコンセプトで(「地中海~」「死海~」も)作られていたと思いますが、プラナー版はあくまで「ポワロを主役」として作っているという印象です。

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