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ひゃくごじゅういち(どころじゃない)のおもいで

 カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ、イッシュ、カロス、アローラ、そしてヒスイ。私が冒険してきた、ポケモンの世界。
 ひゃくごじゅういちの思い出、なんて歌があるけれど、この世界を旅して得られた思い出は、ひゃくごじゅういちなんかじゃとても収まらない。話せば何日あったって足りないほどの、私の相棒たちとの思い出。
 その一部を、ちょっと語ってみたいと思う。

ヒノアラシ

 私がジョウトを旅したのは三回。初めてウツギ博士の元を訪れたとき、待っていたヒノアラシ、ワニノコ、チコリータを前に、私は悩んだ。
 確か、一目惚れはチコリータだったと思う。だけど、選んだのはヒノアラシだった。カントーの旅の経験から、ほのおタイプは希少だと思っていたからだ。なんて打算的な判断だっただろう。
 しかしすぐに、私はヒノアラシの可愛らしさにメロメロになった。小さい体を丸めて懸命に火を吹く姿も、細い目も、感情豊かな口元も。ぬいぐるみみたいで、なんと可愛いことか! あまりの可愛さに、ずっと進化キャンセルし続けたくらいだ。

メリープ、そしてウパー

 それからマダツボミの塔、そしてキキョウジムを経た。そこまで手持ちはヒノアラシだけで、まだ戦えてはいた。が、そろそろ戦力が心もとなくなるころ。しかし、せっかくだからカントーにはいなかったポケモンを手持ちに加えたいと思っていたから、なかなか仲間は増えなかった。
 そんな中、踏み入れた32番道路で出会ったのが、メリープ、そしてウパーだ。
 もこもこふわふわ、メリープの可愛らしさは説明不要だろう。しかも、貴重な電気タイプ。ジョウトで初お目見えのポケモン。手持ちに加えない理由は何一つない。つぶらなひとみはピカチュウにも似て、でも私の中では圧倒的にメリープに軍配が上がる。だってピカチュウは耳とか尻尾とか尖ってて痛そうだったもの。
 両生類と、丸いものと、つぶらなひとみに弱い私にとって、ウパーの容貌はクリティカルヒットだった。一目で夢中になった。しかも水タイプ。ヒノアラシとメリープの弱点を補える。小さな足で懸命に歩く姿。大きな尻尾を引きずって、ペチペチと音を立てながら。手がないから転びやすそうだけど、転んでもぷにんってしてそう。想像するだけで顔がにやけてしまう。
 ああ、この二匹は今に至るまで、私の中でトップに君臨し続けている。まさに運命の出会いだった。

ウソッキー

 つながりの洞窟、ヒワダジム、ウバメの森ときてコガネシティ。新しい仲間を増やした私は、三匹のちびっ子を愛でながら、快進撃を続けた。もちろん、ずっと進化キャンセルだ。正直面倒くさかったけれど、可愛い子のためなら我慢できた。タイプのバランスもいいし、もうずっと三匹だけで進めてもいいんじゃないかとさえ思っていた。
 そんなわけだから、四匹目の仲間については、そんなに切実ではなかったのだ。たまたま出会った変なヤツことウソッキーを手持ちに加えたのも、たんなる気まぐれだったと記憶している。最初はいわおとしとけたぐりしか使えないし、正直言って微妙なやつだなぁと思っていた。
 ただ、ちびっ子3匹の弱点である耐久力の面で、彼は頼りになった。それから、かいりきといわくだき、そしてずつきを覚えたことで、評価は「便利なヤツ」に変わった。そして、何を隠そうその後のルギア戦で、彼は最高に輝いたのである。
 主人公の相棒にして、ちびっ子の保護者。普段はぱっとしないのに、イザというときは頼れるオス。気がつけばウソッキーは、そんなポジションに収まっていたのだった。

ルギア

 ルギア。言わずとしれた銀の看板。彼のために銀を選んだくらいだから、仲間にしたら手持ちに入れるのは当然だった。――もっとも、初めの頃はもっぱらそらをとぶ係である。伝説に申し訳ないことをしたとは思っている、が、そのおかげで彼はパーティになくてはならない存在となった。
 チャンピオンロードや四天王戦では、相性もあっていまいち活躍できなかった。必殺技のはずのエアロブラストはよく外した。伝説のポケモンだけど、なんら特別なポケモンではない、というか。大きくて強そうなのにちびっ子に守られる様子が、なんとも不憫かわいいというか。
 イケメンを起用したはずが、いつの間にかマスコットになっていた。それが私にとってのルギアというポケモンである。

カポエラー

 スリバチ山でからておうに出会った私は、ちょっとうれしくなった。かつてヤマブキシティで彼と親しくなった記憶があったからだ。そんな彼から託された、見たことのないポケモン、バルキー。エビワラーとサワムラーの件を覚えていた私は、試しに育ててみようと思い立った。そして順当に育ったバルキーは、やがてカポエラーに進化したのである。
 ところでバルキーは、進化条件が特殊なポケモンだ。特にカポエラーは他の分岐と比べて、一段難易度が高い。しかし、当時の私がそんなこと知るはずもなく、なんかお目々がつぶらで生意気そうな可愛いものになったと、単純に喜んだものだ。運が良かった。後年になって改めてカポエラーを育て直そうとして、進化に苦戦したのは記憶に新しい。
 さてカポエラー。目覚ましい活躍はそんなになかったように記憶している。ウソッキーと技が似ていたし、有利を取れる相手も少ないし。でも、その小さい身体で文字通り独楽のようにくるくると跳び回る姿は、なんとも健気で可愛いではないか(さっき調べて、こいつの身長が140もあることを初めて知った。言うほど小さくないな)。彼はちびっ子少年サムライのイメージである。

 その後、カントーでの冒険を経て、シロガネ山へ。生ける伝説と戦ったあと、初めて私はヒノアラシ・メリープ・ウパーを進化させた。進化後も彼らの可愛らしさは全く失われず、ただヒノアラシはたくましくかっこよくなり、メリープはわんぱくな雰囲気を得てかわいさを増し、ウパーはよりのんきな癒し系に変貌した。進化しても、彼らが私の大切な相棒であることは、何一つ変わらなかった。

これは、当時の彼らを想って描いたもの。
今でもずっと大好きな六匹の相棒である。

 
 またいつかの機会には、ほかの相棒たちのことも語ろう。なんと言っても、相棒との思いでは、ひゃくごじゅういちどころではなく、あるのだから。

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