あさり
僕と彼女は期末試験の勉強のために図書館に来ていた。自習スペースで隣の席に座り、黙々と問題を解いていた。喋る人は誰もいなくて、シャーペンの芯の擦れる音や本のページをめくる音、かすかに空調の音が聞こえるくらいで館内は静かだった。図書館は勉強するにはもってこいの場所だ。 お婆さんが一冊の本を持って僕達の近くの席に腰を下ろした。 メガネをかけて本を読み始めた。しばらくすると、ふんふんであるとか、あらあらであるとか、まあまあといった独り言をし始めた。たまに言葉の響きを味わうように本の
私の元カレは小説家なんだけど、これがなかなか困ったもので、元カレは実体験をもとにお話を作る作家さんだから、私との思い出エピソードがちらほら出てきちゃったりして、私とのあの運命的な出会いや、初々しいキスや、喧嘩した日のことや、夜の話まで、私たち二人だけの秘密のあれこれを、私に何の断りも無く書くもんだから、私、ものすごく腹が立っちゃって、でも未練タラタラに元カレの小説を読んじゃってる自分にも腹が立つんだけど、何より一番腹が立つのは一番重大なことが書かれていないこと。私を殺したこ
〈明晰夢を見る方法〉 ・起きたらすぐに見た夢をメモする ・よく見る夢の中で共通するもの(キーワード)を見つける ・一日に数回、今見ているものは夢なのか現実なのか自問する ・眠る前に夢で意識を持つ自分を想像する 上記のことを習慣化する 習慣化することによって夢の中でも夢か現実か自問するようになる。 キーワードがトリガーになることもある。 そしてこれをきっかけに夢の中の不自然(文字が動く、時計の針がおかしい)を見つけると、これは夢だと確信する。 朝方か二度寝の時が成功
私は私の鼻のことをリトルラフレシアと呼んでいる。 私の鼻は生まれつき不思議な形をしていた。 歳を重ね、成長するにつれて存在感が増していくこの鼻を、私は特別な意味を込めて頭の中でそう呼んでいる。 小学生の低学年の頃までは特に気にしていなかった。友達からカピバラに似てるねと言われた時はあの可愛いキャラに似ているなんて嬉しいと思った。 両親は私のことを世界で一番可愛い子と言ってくれた。あなたは特別よとも言ってくれた。私もそう思っていた。 高学年になり、他の人と自分