天下繚乱セッション感想

超時空時代劇RPG・天下繚乱で遊んできました。
GMさせて頂いたシナリオは「相模の国風土記異聞・小田原魔神忍風録」。
MOOさんの作品で、TALTOさんで公開されています。

https://talto.cc/projects/sMKljnevbSBzAtzBBlmkv

伝奇らしさと外連味と、それでいて温かさや切なさにも満ちた、とてもすてきなシナリオです。
加えてシナリオギミックも面白く、シナリオ記述は分かりやすい!
天下繚乱を遊んでいらっしゃる方には全力でおすすめできるシナリオです。ぜひ!

以下、自卓での感想になります。
「ネタバレ」と書かれているところから下(スペースを空けてあります)はネタバレ内容込みになっておりますので、遊び終えていない方は閲覧をお避け下さい。

■PC紹介

PC1:

飛龍伝雷光(※四股名)
青龍1/力士3

江戸で人気を博する関取。
異国の血を引いており(ライフパス:渡来人)、金の髪と青い瞳を持つ。この髪の色と土俵での取り組みの烈しさから「雷光」の名がついた。
自分よりも強い相手と戦うこと、勝利することに邁進する生粋の戦士。その一方で、自分がモテることを自覚していたり女の子に声を掛けることにためらいがなかったりと、年相応の若者らしさを備える。女に手をあげる輩は絶対に許せない性質。
そして、両国は回向院の本尊・阿弥陀如来の神託を受けて妖異と戦う英傑という一面を持つ。

MPKお従兄さんの新キャラクターでした。
なんといっても元シナリオの「流浪の剣客」枠のところへの力士(ロール&ロール誌で追加のクラス)参入のため、ハンドアウトからかなり書き替えてのお迎えとなりました。とはいえ、天下繚乱の力士は「神と人を繋ぐ戦士」ということで、今回のシナリオには不思議なくらいぴったりのPC1でした。
カスタムしたハンドアウトで、夢枕に立った阿弥陀如来様から「東海道を西へと進み、魔を封ずる運命に生きる少女を援けよ」というお告げを受けたという導入に。女に手をあげる輩を許さない、という設定をつけてきてくれたためもあり、ヒロインとの出会いからしてとてもスムーズでかっこよかったです。その後もその快男児っぷりでセッションに明るい風を吹き込んでくれることこの上なし。重要な重苦しい場面、不気味な場面や物悲しい場面とのメリハリをつけて双方を引き立ててくれていました。
神霊なPC2・将軍なPC3の正体を知った時に派手に驚く役に回ってくれたのも嬉しいところ。

PC2:

蛙手比古(かえでひこ)
玄武2/神霊2

表向きは恰幅の良い商家の旦那さん。正体は二足歩行する蛙の姿の神霊。猿田彦大神の神使として、お伊勢の二見興玉神社から関東へ出向してきている。
導きと技芸の神に連なるものとして、人の文化を愛し、弱きものの願いや祈りに応える。

PLはありろくん、セッション参加はGMC含め3回目のPCさん。
穏やかで品のある立ち居振る舞い、人に寄り添う「神の使い」の立場、それでもやはりどこか間違いなく「神」側の視点で物を見ているという、「静かに異質な人外」ラヴァーにはたまらないキャラをしています。
今回はシナリオコネクションが神さまNPCということで、存分に神さまらしい視点で優しく神と人の関係を見守り、守る会話や立ち回りをしてくれました。PLありろくんから、なかなかここまで神神した(?)対話をする機会というのはないので、今回はとても楽しかった、という感想をもらっています。
小さな神さまを肩に乗せた、蛙の神さま。この御伽噺のようなビジュアルだけでも既にかなり「いける!!」感がありました。加えて後述の関係性を作ってくれたために、神々パートのシーンで素晴らしくキャラが立つことになりました。

PC3:

巨勢 新之助/徳川 吉宗
朱雀2/青龍1/天下人1

市井の事件に首を突っ込んで回る貧乏旗本の三男坊、は世を忍ぶ仮の姿。その正体は現職の将軍その人。なぜ吉宗が今の代の将軍なのかは秘密だ。
堂々たる為政者として厳しい顔も持つと同時に義理にも篤く、友人の危機には自ら駆けつける。

PLはYakyくん。セッション参加は3回目で、これまでも蛙手比古とともに事件を解決してきています。
時に冷徹な選択肢も頭の隅に留めおきつつ、仲間と共に進むこともできる、間違いなく大きなものを背負って生きてきた人。なんでこんなキャラのロールプレイができるんだYakyくん。
今回の卓では「吉宗」の状態でいる時間が長くなったため、上様としてかっこいいところや頭の切れるところをばりばり見せてもらえてGMはめちゃくちゃ喜んでました。PC2といい、このシナリオ、「PCの普段なかなか見せられない面を表現できる」舞台としても優れているのかもしれないと思います。

また、PC1の雷光との関係(PC間コネクション)を非常に面白い設定にしてくれました。
以前、御前試合に出ていた雷光関を、正体のほうの「吉宗」の姿で見たことがある、とのこと。これで雷光関の知名度も立てつつ、雷光のほうからは「どっかで見た顔な気がするんだけどな!?」と首を傾げられまくることしきり。新之助(吉宗)が《世を忍ぶ仮の姿》を解いた時の面白さの種を仕込みつつ、クライマックスでPC1の雷光を立てる伏線まで敷いてくれました。

※以下ネタバレ有

ここから下はネタバレ有の内容となります。未プレイの方は閲覧をお避け頂けますと幸いです。
また、内容は主に「うちの卓ではこうした」「うちの卓ではこうなった」という部分部分のご報告に近くなりますため、シナリオと対照しながらでないと分かりにくいとかいう構造になっておりますことを平にお詫びします。











シーン1

プリプレイの段階で、PC2の蛙手比古からワカツマノカミに対するシナリオコネクションについてPLから相談がありました。蛙手比古は神でなく神使なので、古き神であるワカツマノカミに対しては「幼子」より「崇敬」で行きたいとのこと。なので、ワカツマノカミが姿を現して呼び掛けた出会いの場面からこんな↓感じでした。

蛙手比古「(頭を下げると同時に神使としての正体を現して)古き神とお見受けいたす。わたくし猿田彦大神の神使、蛙手比古と申します。何か御用でございましょうか」

結果的に、人間サイズの蛙手比古が小さなワカツマノカミを肩に乗せつつ、支えながらも敬うという構図も美しく、またGMもワカツマノカミの「大人びた神目線」「必要以上にへりくだらない」かつ「冬の陽だまりのような」というキャラクター表現をしやすくなり、大いに助かりました。

シーン2

少女が男たちに暴力を振るわれている場面に出くわして、一も二もなく飛びこむPC1・雷光。
ここでは風魔忍軍はすぐに引くことになっていましたが、雷光が初ロールアウトということもあり、強さの演出をしてもらおうと軽くかかっていかせてみました。

モブ忍者「刀を抜け!」
雷光「言うねえ!(両手をあげて無手であることを示し、にやりと笑う)」
忍者「何だと!?」
雷光「覚悟がある奴は抜きな。だが、俺はお前たちが刀を抜くより速く動くぜ。まさに稲妻。雷光とは俺の名よ!」
忍者「(気圧されつつ)ひ、怯むな! 相撲など所詮は見世物よ。我らの剣術に敵うわけもない!」

そしてあっさりと転がされ、投げ飛ばされ、シナリオ通りの捨て台詞を残して忍者たちは逃げてゆきました。
楓の願いを聞いた雷光は、「任せておきな。小田原の凶事だってなんだって止めてやるよ。だがその前に、あんたの血を止めるのが先だ」と彼女を抱えて農村に向かいました。

シーン3

ここでは農村に向かう人々を止められないと見た吉宗はいち早くこの場を離れました。常備化している「馬」を飛ばして農村に先行したい、という提案にGMからOKを出しました。

シーン4

PC1・雷光が、ヒロイン楓を治療するシーン。
ここでPC2・蛙手比古が、膏薬を持った旅の商家の旦那さんというていで登場。PC2人合流となりました。
蛙手比古は神使パワーで、雷光に阿弥陀如来の加護がついていることを見て取り、興味を持ちます。

楓が目覚めて事情を話す中、彼女のロールに、神との交感の件を「信じてもらえるかどうか分からない」と迷う素振りを追加。
雷光は「信じるぜ。俺は如来様に会ったことがあるからな」と即答してくれました。ここから、「神と人の間を繋ぐ者」としての雷光と楓、という構図が出来上がりました。

蛙手比古が登場していたことで、ワカツマノカミと楓の合流もここに。
ここで、雷光と吉宗のPLのアイデアで「ワカツマノカミは、蛙手比古以外のPCにはふんわりとした光の塊にしか見えない」という設定になりました。彼の細かな振る舞いや表情を見て取ることができるのは蛙手比古(とNPCの楓)だけ。PC3人それぞれにヒロインNPCがいるというこのシナリオに合った、特別感の演出に繋がりました。

シーン5

馬を走らせ、「直訴を起こした村ってのはここか!」と農村に駆け込む新之助(吉宗)。家の外に出て来た村人たちに逡巡なく乱取りの件を知らせ「命まで落とすな」と逃げるよう促します。どうにか彼らが山に逃げこんでゆく頃、手に手に武器を持った町人たちがやってきました。
説得イベント前に雷光、蛙手比古も屋外に出てきます(登場)。
見れば、狂乱する群衆の前にひとり立ちふさがる新之助の姿。

新之助「お前さんら、そいつを振り翳してそこから一歩進んだら、このあと落ちるのは地獄だぜ」

かっこよすぎませんか。
その姿に、雷光が「剛毅な奴が小田原にもいるもんだな」と呟いて助太刀に入ります。
蛙手比古はしれっと楓を屋内に隠して扉の前に立って守っていました。

情報収集(前半)シーンでの色々

・雷光関、舞台裏の買い物で「エキストラ(自分のファン)」を購入。沈む小田原の人々の心を少しでも浮き立たせようと、ファンサービスで着々と力士としての自分のファンを作っていきます。あげく複数購入を始めて、「何で一人でビギニングアイドルやってるんですか!?」と突っ込まれる一幕も。
・情報収集のまだ最序盤のシーンで、岩槻(?)の部下の侍たちが道を歩いているのを見た新之助(吉宗)、「……足運びが武士や無頼のもんじゃねえな」とぼそりと呟きます。既に見抜いている! かっこよかったのに加え、PLの側から伏線を引いてもらったという意味でGMも助かりました。更に蛙手比古との会話で「呪いってのは、目立つ目標があるとやりやすいもんだ」とも。
・「ワカツマノカミの荒御魂」の情報内の「豊臣秀吉が北条を攻める際~」がPLに受けてました。Yakyくんが「おや、ご存知なかったですか。最新の説では常識ですよ」とか言い出しました。
・ファンを増やすのを止めたと思ったら、楓にあげる簪を買いはじめる雷光。

シーン6

ワカツマノカミから蛙手比古に旅をしている理由を問う上で、「(蛙手比古の主にあたる)猿田彦大神の司る技芸というものは、伝統を守り、変わらぬ日々を続けることで守り育てるものと思っていた」と言ってみました。
蛙手比古はこれに対し、「形を変えず、受け継ぐこと」と同時に、「新しいものを取り入れて、時代時代に変化してゆくこと」も大切なのだと語ります。昨今江戸で花開いた新しい(神目線)文化、歌舞伎を例に挙げつつ。
「人の世で姿を変えてゆく技芸、それこそが私ども神が守ってゆく芸学であると、私などはそう思います」
うなだれるワカツマノカミ。自分が変わってしまうことは恐ろしいと。彼の焦りと無力感を察して蛙手比古は言います。
「御安心なさいませ。かの雷光関、かの巨勢新之助なる者は、たぐいまれなる力を持った英傑でございます。彼らがここに導かれたのは、阿弥陀如来、猿田彦大神のお力もございましょうが、やはりワカツマノカミさま、貴方さまのお力でございますよ」
ワカツマノカミは礼を言い、猿田彦大神は導きの神でもあったな、と、かすかに表情を和らげました。

シーン7

このシーンには全員で向かいました。

新之助(吉宗)「案外、あやかしも神も単純なもんさ」
雷光「呪いすら騙す、ってことか……!」

シーン8

代官屋敷には新之助(吉宗)が独りで向かいました。
岩槻(?)の台詞の直後、襖を蹴倒して「その沙汰、待て」の言葉と同時に登場し《世を忍ぶ仮の姿》を解除。
お前にはこの地の窮状を立て直すことはかなわぬか、と挑発し、「小田原を天領にするという話も出ておる」と慌てさせた上で、

「岩槻」「はっ」「どうした」「どうした、とは」「病でも患ったか。余の知るお前とは思えぬが」「――……」「さて。お前は誰だ」

靭九郎が顔写しを解き、戦闘へ。
吉宗「貴様ら芸人一座のやろうとしていることなど御見通しよ。幕府を舐めるな」
鍛え上げた忍術を「芸」と扱われて逆上する者、吉宗の冷えた声に怯む者。そんな部下たちを靭九郎が喝破します。
「気圧されるな! 我ら風魔がまつろわぬ民に落ちたるは太平に腐り果てた徳川の世のため。その血に恨み重なることこそあれ、頭を垂れる道理はないわ!」

吉宗はその言葉を静かに聞いていました(伏線)。

セットアップで登場して将軍の姿にびっくりする雷光(雰囲気)。

実はここの戦闘で吉宗が覚悟状態になった上にもう一撃喰らいそうになり、GMどきどきしてました。まだ至誠如神も復活手段もありません。蛙手比古の振り直し技からのクリティカル回避で危うく切り抜けます。
致死の一撃を刀の鞘で受け止める吉宗。

吉宗「この程度か。日ノ本に比べれば軽い、軽い」

情報収集シーン(後半)のいろいろ

・とりあえずまだびっくりしている雷光、かしこまらなくていいという吉宗との押し問答の末、急に「まあ上様が許してくださるなら」とフランクに。
・「風狂魔」のネーミングが山田風太郎さん風か菊池秀行さん風かで何故か盛り上がる雑談。
・風魔一族が滅ぼされることなく残されていたのはこの「封魔」の役割のためだったのだろう、たぶん天海僧正あたりが調整してた、という話に。そういうことになりました。
・「風狂魔」の調査には、蛙手比古が楓を連れて向かいました。雷光も護衛を兼ねて同行。最初に楓が倒れていた付近の社の奥から古文書を引っ張り出して調べる場面に。
 内容を開けた後、「風魔」と「風狂魔」をGMから図解して整理。アラカツマ、「検索推奨のアラカツマ様」と呼ばれる。
・「太古の魔神」については、蛙手比古がワカツマノカミに「恐らくはほぼ自然そのもの、人々が貴方様を畏れた、そのままのお姿となられましょう」と説明します。俯いて考えこんでしまうワカツマノカミ。雷光が頭を掻いて「ややこしそうな儀式だが、さっさと岩槻を助け出すなり何なりして、条件をフイにしちまえばいいんだろう?」と口を挟みます。楓が眩しそうに雷光を見て、「まっすぐな人だね、あんたは」。蛙手比古、笑って「なに、雷はまっすぐに落ちるものよ」。
・蛙手比古「完全とは行かないにせよ、奴らは『魔神』の復活を狙うだろう」 雷光「そいつぁいい。ちょうどいい御前試合だ。とっておきの相撲が見せられまさあ」 吉宗「ああ。場合によっては、一番取って貰うことになるかもしれんな」
・GMが「判定失敗しても情報は入るよー」と悪魔の囁きを続けるも、PLは「(風魔の陰謀ポイントを)一点もくれてやるか!」と、振り直しや達成値上昇を駆使しまくって頑張りました。結果、0点をキープしてクライマックスへ。
・「太古の魔神」の情報を開けた蛙手比古PLのありろくん、内容を読み上げる途中で「その正体は病と毒のぶははははは!」「なに」「なに!?」
 最終的にはきちんと読み上げ、「こういうの大好き!!」+「助けられるかどうかがちゃんとデータとしてスイッチするのはすごくいい」という感想をくれました。

シーン10

雷光の希望で、社の古文書を簡単に片付けながらの二人きりのシーンに。
こんなことまで手伝ってもらって悪いね、という楓に、雷光は「なに、そのうちいつまた英傑が…… それは俺かもしれんが、妖異や古い神話のことを知りたくてここに来るかもしれねぇ。その時のためにも、しっかり整理しておかないとな」と答えます。
楓さん他のシナリオに再登場のフラグかもしれません。

その後、楓の呟きに応えて、
雷光「そんなあったかい神様でいてもらうために、お前たちがいるんだろ。ここが踏ん張りどころ、土俵際ってやつよ。ここのせめぎ合いをどうするかで勝率が変わって来るってもんだ」
楓「……ふふ。あんたがその例えをすると説得力があるね」
雷光「だろ? で、だ。土俵際にあるってのは傍目にゃ追い詰められてるようにも見えるが、土俵から出なけりゃ負けたわけじゃあない。まだやれることがある。引っくり返してやれるんだ」

頷いた楓は、雷光に彼自身のことを訊ねます。江戸にいれば人気の力士なのに、なぜ危険を冒して旅をするのか、戦うのか。
ただ穏やかに今を続けていたいっていうのは―― との再びの問いに、雷光はあっさりと答えます。
「変わる時代に俺らが合わせる必要はなくねえか? 俺らが望む生活ができるかどうかが一番重要だろ。俺はただ、旅をして戦って、そうしたいからそうしてる。変わらないことを望むなら、変わらなくてもいい。いいじゃんか。あったかい、冬の陽だまりみたいなぽかぽかした神様とこれからも一緒に生活したいんなら、それを目指して全力で頑張ったって良いじゃねえか」

シーンEx

蛙手比古の希望により、ワカツマノカミと二人で語るシーンを追加。
雷光PLに許可を貰い、シーン10の会話を社の外でふたりで聞いていたことに。

「どうやらあなたの巫女も、貴方と似たことを悩んでいたようですな」
「ああ」
「何、わたくしが先に話した芸事の話は、飽くまで芸事の話。参考までにおとどめください。カミのありかたは、また別の話でございます」
「ありがとう、蛙手比古。……けれど、新しい時代に民を守るため、新しい一歩が必要ならば、私もその勇気が欲しい。ほんとうは――」
「ええ。ですが、それは貴方さま独りでしなければならないことではございますまい。わたくしもお力添えいたします。必要になった時には、わたくしの上役にも。そして、楓殿のように、人の側から貴方さまに力添えすることもございましょう」
「ありがとう。あなたはやはり導きの神使であるのだな。……いつも、たのむことしかできずにすまぬ。どうか私の荒御魂と、裏切ったりとはいえ私の民を、止めてほしい」
「もちろんでございます。――ひとつ、ワカツマノカミ様にお願いがあるとすれば」
「言ってみてくれ」
「もし、万が一。荒ぶるお姿にお戻りになった時にも、お心を確かにお持ちくださいますよう」
「……。わかった。やってみよう」
「感謝いたします」

シーン11

PLに小田原周辺に詳しい人が多かったので、クライマックスの舞台である「硫黄臭と蒸気に満ちた箱根山中」は「大涌谷」に指定。
ワカツマノカミが呪いを弱める場面では、先のシーンを引いて蛙手比古に「力を貸してほしい」と頼み、ふたりがかりで干渉に入りました。
(ここで初めて蛙手比古の正体を見て、雷光またびっくり。)
呪いに満ちた空の下、硫黄に灼けた大地の上に弱々しくも草が萌え、蔓が伸び、渦巻く呪詛を僅かに和らげます。
それを援けようと土俵入りの儀式で周囲を清める雷光、祈りを加える楓。

吉宗はひとり、岩槻の元へ。

吉宗「事はまだ大事に至らず。今ならばまだなんとでもなる。この呪いは所詮人の心より出でしものよ」
岩槻「ええ。小田原の民の苦痛、不安、無念、魂の底まで伝わりましてございます」
吉宗「ああ。それらが、『勘違いして』お前のほうに向いている。お前になり替わった者がろくでもないことを働いた」
岩槻「それで、民が苦しんでいるのですね」
吉宗「ああ」
岩槻「では、私は、上様に任じられた代官として、民の元に戻らねば……!」
吉宗「そうだ。お前にはまだ、やってもらわねばならんことが山とある」

吉宗、ここで早くも《一件落着》を使用。
「悪政を働いていたのは代官になり替わった者だった」という情報をここまでに既に広めてきていたことにし、呪詛の行き先を失わせると同時に岩槻の戻る場所を作ります。が、直後――

シーン12

環状列石の外側で祈りながら、悲劇を見つめていたふたりの神。

ワカツマノカミ「蛙手比古」
蛙手比古「――為さるのですな」

覚悟を決めた真っすぐな声と、穏やかで敬意に満ちた声。頷き、ひとつ。心が通じるには、それで充分でした。

ワカツマノカミ「偉大なる神使よ。あなたは私に、ひとりではないことを、一歩を踏み出す勇気を、そしてあの雷光と共に、望む生き方のために力を尽くすことを教えてくれた。私の望みがいま分かった。私にも、できることがあると分かったよ」

シーン13

武器を構える風魔忍軍に囲まれながら、ワカツマノカミの消えゆく姿だけを見つめて吉宗は呟きます。
「……あまりにも不敬ゆえ、口にはせなんだが。みずから為されたか。――お見事」
吉宗は、最悪の場合に「魔神」の復活を止めるため、3つの条件のうちのひとつ―― 和御魂ワカツマノカミを消すという手段をずっと頭の隅に置いていました。人の王は、消えていった小さき神に短いあいだ頭を垂れました。

蛙手比古「さあ、今こそ我らが使命を果たす時ぞ」
雷光「ああ。本日の大一番だ。もう準備はできてるぜ」
吉宗「まつろわぬ者どもよ。貴様らのたくらみは全て潰えたぞ。当然、許されるなどとは思うておるまいな」

その後、呪いが靭九郎に降り注ぐあいだも吉宗は喝破します。
「さあ、風魔の者よ。最後の『芸』だ、耐えてみせよ。お前にできる最後のひと華だ」
彼は戦いのさなかにも、徳川の世を呪う風魔の頭領を徹底的に挑発しつづけました。
それはまた、もうひとつの呪い形代。
為政者なれば、恨まれることには慣れている。呪われることにも慣れている。死ぬる前に自分に全てをぶつけてゆけと、吉宗はそう靭九郎を導き続けました。

戦闘は最初のイニシアチブプロセス、吉宗の《鎧袖一触》からスタート。
吉宗「大一番、取って貰うぞ」と雷光に呼び掛けます。
雷光「いいねえ! 外せませんね、この御前試合。上様も瞬きせずに見て下さいよ」
吉宗「俺だけではない。カミの御前だ。気張れよ」
雷光「はっは! こりゃ、ここで気張らずいつ気張るって話だな!」

吉宗は靭九郎と斬り結び、雷光はアラカツマの巨体(GMが15mとか吹いてしまった)の足にぶちかましを掛けます。蛙手比古は後方から支援の構えを取り、戦闘は3エンゲージに分かれる形で展開。

雷光は環状列石を土俵に繰り返しアラカツマにぶつかってゆき、最後にはその足に組み付きます。
「俺の身体の全力を振り絞ってやる。飛龍伝雷光の名に、俺自身が負けていないことを証明するために!」
叫びと共に迸る稲妻のような力がアラカツマを貫き、とうとうその足と身体が砕け毀れました。

最後の最後、PC側が死亡の回復を可能にする系統の奥義全てを使いきったタイミングで、吉宗が靭九郎に斬りつけます。
吉宗は既に覚悟状態。靭九郎が回避を成功させれば《空蝉》で殺されるという場面、危うい数値で吉宗が対決に勝利。オーバーキルたった1点のダメージを叩き出し、靭九郎を斬り伏せました。

エンディング

先に使用された《一件落着》により、偽代官の悪事は小田原の民の知るところとなり、岩槻忠実はふたたび職務に戻ることになりました。

吉宗「この小田原の窮状が変わるわけではない。策はあるか」
岩槻「上様のように、あるいは雷光のようにとは参りませんが、民と共に一年二年、あるいは五年十年の時を掛け、必ずや」
吉宗「良し。ならば変わらず、この小田原はお前に任せる」
岩槻「はっ」
吉宗「それはそれとして、だ。民の心を活気づける何かしらの策は必要だろう」
蛙手比古「ほうほう」
吉宗「小田原には、八幡神社が多くある」
雷光「おっ、もしかして!」

そのもしかして、でした。
吉宗は雷光に音頭を取らせ、小田原での相撲興行を復活させることにしました。
《一件落着》はもうないので、地元の人々に声を掛け、土俵から手作りです。
蛙手比古は神社に渡りをつける役割に。

それから数週間。
一旦江戸に帰った吉宗は小田原に戻り、岩槻と語り合います。
蛙手比古は霊脈の観察と環状列石の調査を。
それぞれ済むと、ふたりは八幡神社に向かいます。
満席の観客の中、応援にこたえて土俵に入るは関取、飛龍伝雷光。
力士は最前列に座った少女に呼び掛けます。

「楓、瞬きするなよ。俺の相撲は稲妻より速いぜ!」