義兄妹の許されざる愛(仮)14

【最終章】-2『永遠の愛』

 車を走らせ別荘へと向かう二人。

 その車中では特に会話は無く、終始重たい空気が流れていた。

 その後しばらくして思い出した様に紗弥加に語りかける雄哉。

「そう言えばあれから何も食べてなかったね、おなかすいたんじゃない? 何か食べようか」

「そうですね、何も食べてないから何だかおなかすいちゃいました」

 そんな時、運転する雄哉の視線の先にファストフード店の明かりが見えてきた。

「紗弥加ちゃんそこで良いかな?」

「あたしはどこでも良いですよ」

 その声にそのファストフード店の駐車場に雄哉が車を滑り込ませると店内へと入る二人。

 適当にハンバーガーとドリンクのセットをオーダーした二人は商品を受け取るとテーブルへと座る。

「何だか最後の晩餐にしては味気ないね」

 雄哉がそんな言葉を放つと紗弥加がそれに応える様に言葉を放つ。

「良いじゃない別に、あたしハンバーガー好きよ」

 しかしそれは雄哉を気遣っての言葉であった。

 その後ハンバーガーを食べ終えた二人は店を後にし、再び二人が車に乗り込むと雄哉はゆっくりと車を走らせ店を後にする。

 その後しばらく車を走らせていると助手席に座っている紗弥加はいつの間にか眠ってしまっており、いつの間にか二人を乗せた車は遠回りした館山の高台の上にあった。

 寄り道し車を停めた雄哉は紗弥加の肩をそっとゆすった。

「紗弥加起きてごらん、夜景がきれいだよ」

 その声に目を覚ました紗弥加はゆっくりと車から降りると、まばゆいまでの夜景の美しさに感激する。

「ほんとだきれいだね、あたしこんなきれいな夜景初めて見たかも」

 きれいな夜景に感激している紗弥加に自分の着ていた上着そっとかける雄哉。

「ありがとう」

「何でもないよこの位、それよりここ良いだろ、さすがに百万ドルの夜景って訳にはいかないけどね、それでも充分だろ?」

「充分よこれでも、それにしてもほんときれい」

「俺何か嫌な事があったりするとたまにここ来るんだ。そうするとスカッとする気がしてね」

「そうなんだぁ、あたしもなんだか心のもやもやが晴れた気がするな」

「そうだろ? 空を見上げてごらん、都心の様に街明かりが多くないから星もきれいに見えるよ、今日は空も晴れているしね」

 言われるがまま空を見上げる紗弥加、するとさまざまな星座がはっきりと分かるほど綺麗に星が見えていた。

「田舎の方に行けばもっときれいに見えるんだろうけどね」 

「そんな事ないよこれでも充分きれいだわ、素敵なものを見せてくれてありがとう」

「どういたしまして、でも見ている所悪いけどあまり長居しても風邪ひくからそろそろ行こうか」

「そうだね、もう少し見ていたいけどあまりゆっくりもしていられないからね」

 その後再び車は南房総の別荘へと向け走り出した。

 雄哉の運転で南房総に向かう中、車の助手席ではまるでゆりかごの様に心地よく揺れ、その後再び気持ち良さそうに眠ってしまった紗弥加。

 しばらくして車が南房総市にある別荘に着くと、車を降りた雄哉は助手席のドアを開け、そのまま中に入り寝室のベッドの掛布団をまくっておき、再び車に戻ると紗弥加をやさしく抱き上げた。

 実はその時紗弥加の目は覚めていたのだが、あまりの気持ち良さにそのまま寝ているふりをしていたのだった。

 その後雄哉は紗弥加を寝室へと連れて行き、そのままやさしくベッドにおろした。

 その頃畑中家では紗弥加が依然帰らないと騒ぎになっており、麗華が雄二のもとに電話をかけていた。

「もしもし雄二さん?」

『君か、どうしたんだこんな時間に』

「紗弥加がまだ帰らないの、ケータイに電話してみても繋がらなくて……」

『帰らないってもうすぐ十時じゃないか、いつもこんなに遅いのか?』

「そんな事ないわ、少なくとも遅くなる時は連絡くれるもの、雄哉君は今どうしてるの?一緒じゃないわよね? さっきの事があるから心配だわ」

『分からない、今一緒には住んでいないんだ。とにかく少し待ってくれ、どうせ電話しても出ないだろう、これからすぐあいつの所に行ってみよう』

「分かったわ、お願いします」

 その後すぐに雄哉の住むマンションへと向け車を走らせた雄二であったが、しばらくしてマンションに着いたものの雄哉の部屋に入ってみるとそこはしんと静まり返り暗闇に包まれていた。

「いないか……」

 ポツリと呟いた雄二はダメ元と思いながらもすぐにスマートフォンを取出し雄哉に電話をかけてみるが、当然のごとく電話が繋がる事はなかった。

「やっぱり繋がらないか」

 諦めて電話を切った雄二はすぐに麗華のもとに電話をかけなおす。

『もしもし雄二さん? 紗弥加達いた?』

「ダメだいなかった、雄哉に電話もかけてみたがやはり繋がらないんだ。二人共繋がらないって事は二人一緒って事かもしれない」

『マンションにいないって事は二人はどこにいるの? まさか変な事にならないわよね』

「二人は兄妹って事が分かったんだ、変な気は起こさないだろう」

『じゃあどうして二人共いなくなったのよ、ほんとにどこにいるの?』

「沖縄の別荘に行くのは時間もかかるし考えられない、それにすぐには航空券が用意出来ないだろう、という事は葉山か房総か軽井沢のどこかって事になるが、一つ一つ行っていては時間がかかる。一体どうしたら良いんだ」

『それだけじゃないわよ、もしかしたら近くのホテルにでも泊まっているかもしれないじゃない』

「そうだな? とにかくまずは別荘を一軒一軒あたってみよう、今はそれしかない」

『じゃああたしは一軒一軒ホテルに電話して泊まっていないか聞いてみようか?』

「いや、そんな事しても無駄だろう、恐らく客の個人情報は教えないだろうからな?」

『そうかもしれないわね、それにホテルの方も若い高校生と大学生の男女が泊まるとなると不審に思うだろうし』

「とにかくすぐにでも別荘に行ってみるよ」

『だったらあたしも行きます』

「いや俺一人で大丈夫だ、君は明日も仕事があるんだろ?」

『そうだけど、そんな事言ったって心配で眠れないわ』

「とにかく待っていてくれ、それに君と二人で探しに行ったと知ったら妻がどう思うか分からない。何か分かったらすぐ連絡するから」

『分かったわ、何か分かったらお願いね』

「ああ、きっと探し出して見せる」

 その後すぐに車で別荘へと探しに出た雄二であったが、最初に向かったのは雄哉達のいる房総ではなく正反対の方向にある葉山であった。

 その後葉山の別荘に着いた雄二であったが確認するもそこに二人の姿は無く、すぐに軽井沢の別荘に向かうものの、軽井沢へと向かう車中も次第に不安が増幅し心配でならなかった。

 しばらくして軽井沢の別荘へと着いたが、そこにも二人の姿はなかった。

(居ないか、ここにもいないとするとあとは房総しかないな? 房総にいればいいんだけど、とにかく急ごう、二人とも無事でいてくれよ)

 その後房総の別荘に向かう雄二であったがその頃にはすでに空が白みかけていた。

 翌朝早くに目が覚めた雄哉は隣で寝ている紗弥加を起こさないようベッドから立ち上がると顔を洗い車でどこかへと向かった。

 その後帰ってくると再び寝室へと戻った雄哉は紗弥加をやさしく起こす。

「紗弥加、朝だよ起きて紗弥加」

 未だ寝ぼけ眼ながらもゆっくりと目を覚ます紗弥加。

「おはよう紗弥加、目が覚めた?」

「おはよう雄哉」

「食べるものが何もないからコンビニに行って買ってきたんだ、一緒に食べよう」

「ありがとう」

「さぁ顔を洗って」

 顔を洗った紗弥加がテーブルに着くと雄哉と共に朝食を口にした。

「ごめんね朝からコンビニ弁当で」

「良いわよ気にしなくて、コンビニ弁当もおいしいじゃない」

「それはそうとすぐ近くに海岸があるんだ、ご飯食べたら行ってみようか」

「行ってみたい、だったら水着持ってくればよかったかなぁ?」

「そうだね、とにかく行ってみよう」

 その後食事を終えた二人はそろって海岸へと向かった。

「良い所ね、人が全然いない」

「近くに有名な海水浴場があるんだけどそこからは少し離れているからな? ほとんど人が来ない穴場なんだ。それにまだ時間も早いしな」

「そうなんだね」

「実はここの別荘はもうすぐ手放す予定なんだよ」

「どうして? こんなに良いとこなのに」

「ここにはほとんど来ないんだよ、一年に一回来ればいい方かな? 維持費とか結構大変だしね、ほとんど来ないのにもったいないだろ?」

「そうなんですか、良いとこなのになぁ?」

 残念がる紗弥加であったが、ここでとんでもない事を言いだす紗弥加。

「ねえ雄哉、あたし達本当に別れなきゃいけないのかな?」

「そうだな仕方ないよ、紗弥加だってそう言っていたじゃないか」

「別れたくない雄哉、どうせ別れなきゃいけないのなら二人でこのまま海に入らない?」

「何言っているんだ、そんな事できる訳ないだろ」

「あたし本気よ、こっちの世界で結ばれないのならいっその事向こうの世界で結ばれた方が良いわ」

「ほんとに本気なのか?」

「本気よ、だから雄哉も決心して」

「そうだな、いっその事向こうの世界で幸せになろう」

 いらぬ決心を固めてしまった雄哉。

 それにより若い二人は沖へ向け歩を進めてしまう。

 その頃別荘へと着いた雄二であったが、車はあるにもかかわらず姿が見えないため二人を探していた。

 そして最後に海岸へと探しに来た時、そこには二人の足跡が海へと延びているだけであり、そこに二人の姿が確認される事はなかった。


これにて完結になります、
拙い作品を最後までお付き合い頂きましてありがとうございました。

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