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スクラッチができるまで

こんにちは。
僕ことハクです。

前回までは僕のメイン・トピックであるバンドDJについてご紹介していきました。
今回からは各セクションごとに分けて「ルーツ・オブ・バンドDJ」的なお話をしていきたいと思います。
手始めに、物語の出発点スクラッチができるまでについて解説していきます。


▼スクラッチ発明以前

一般的に、スクラッチを発明したのは後述するグランド・ウィザード・セオドアだと言われています。
しかし、それ以前からもスクラッチのアイディアに影響を与えるような現象は起きていました。
例えば~1950年代、それこそラジオのディスク・ジョッキーと呼ばれていた時代。
レコードの頭出しをする為、冒頭の部分を探すのにレコードを擦らざるおえませんでした。
今でもオーディオ用はベルト式ですが、DJ用のターンテーブルであるダイレクト式が誕生するまでもう少し時間がかかります。
なので本格的にスクラッチ導入という流れには、この時点では至りませんでした。

ですが、このぐらいの時代にちょっと変わったことが起きました。
ウイリアム・バローズという、作家なんですがアートとかカルチャー全般に興味をもってる人ですね。
この人がオープンリール・テープを使った実験作「Sound Piece」という曲を発表します。
おそらくミュージックコンクレート的なものを作りたかったんだと思いますが、ここでかなりスクラッチに近い音が生み出されています。

▼スクラッチの誕生

そうこうしているうちに現代のダイレクト式ターンテーブルが発明され、DJがゴリゴリのプレイをかます時代になりました。
ジャマイカ移民のクールハークがサウンドシステムの文化と共にブレイクビーツを持ち込み、アフリカ・バンバータがヒップホップ文化を一気に広めたことにより、DJという存在がアンダーグラウンドで急速に認知されていきます。
そして、その中の一人にグランド・マスター・フラッシュがいます。彼はスクラッチを広めた立役者と言われていますが、発明したのは彼の傍らでターンテーブルを使って遊んでいたセオドア少年です。
この少年がのちにグランド・ウィザード・セオドアと呼ばれるようになります。

▼スクラッチの普及

そんなこんなで正式に「スクラッチ」というものができましたよーってことになったので、今度はみんなが使いたくなるわけです。
ですが...今でこそDJがスクラッチをバッキバキに決めてなんぼのもの、ラッパーの為にDJがいてスクラッチすると盛り上がる的なイメージですが、まだこの頃は違いました。
どちらかというとダンサー、特にブレイキンの為に音楽を流す役割としてDJが成り立っていました。
ですので、ダンスがメインでそれを邪魔しない程度にスクラッチを入れるセンスが必要とされていました。
DJ達がこのような感じで、鎬を削りながらお互いの技術を高めあっていた中、ついにこの奇抜なサウンドがあの男の目に留まることになります。

▼聖典「Rock it」

その男とはジャズ界の巨匠ハービー・ハンコック。
当時マルコム・マクラーレンがアフリカ・バンバータに影響されて作った「Buffalo Gals」っていう曲を聴いて、俺もスクラッチの入ってる曲作りたいってことで「Rock it」が作り出されたとか。
にしてもバロウズとかマクラーレンとか、基本カルチャーの人が音楽人に与える影響って...やっぱり大きいですねw
(バンバータもエレクトロ・ファンクを普及させた功績は大きいですが、基本ヒップホップカルチャーを創設した人です。)
そしてこの名曲「Rock it」の中でDJとしてスクラッチをきめていたのがグランドミキサーDST(DXT)。
それ故に、彼をスクラッチの原体験として挙げるDJは数多います。

こんな感じで今回はスクラッチ誕生から「Rock it」が出来上がるまでを流れで解説させていただきました。
これ以降は、熾烈なスクラッチテクニックの競い合いに転換していきます。
その辺りは次回以降にお話できればと思います。

それではまた。
アディオス!

※余談

今回のお話は映画「Scratch」から引用している部分が多々あります。
ですが、この映画の説明だけでは足りないなーと思う部分、また逆に、これ無理矢理ヒップホップの流れでねじ込んでない?という疑問部分もあったので...
僕の解釈を踏まえて解説させていただきました。

ただ一つ言えることは...絶対に見た方がいいです。
ジュラシック5のインタビューとか、DJ SWAMPが後のトーンプレイにつながるアイディアを話していたり、結構文献として貴重な価値があります。
最後の方でDXTがQバートに「こいつこそ真のグランドミキサーだぜ!」って言ってたとことか...感無量ですね。
それだけ多岐にわたりスクラッチが進化していったことを物語っていると思います。

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