添削27本目【終電をなくした酔っぱらいのコント】

さて、今回はピンネタですね。

さっそく送られてきた台本を読んでもらいましょう。

うい~、飲んだ飲んだ。ひっく、今までで一番飲んだな~。
花金とはいえ飲みすぎたかな~。
うい~、電車が終わったら、そこで電車は終電だな~。ひっく。

(以下、酔っ払いながら)

わ!……倒しちまった。
(看板を立て直しながら)お?「陸の孤島の骨董市」?
っていうか、こんな広場あったかな?どれどれ~?

(少し歩いて)なんだ、あんま人がいねえじゃねえか。品数も少ないし。
おお、骨と皮だけの売り子さん、これ何?
室町時代の子供が作ったドングリゴマ?
ふ~ん、じゃ、こっちは?
室町時代の子供が作ったドングリゴマ?
ふ~ん、あれは?
室町時代の子供が作ったドングリゴマ?
全部室町時代の子供が作ったドングリゴマじゃねえか。

他の品は無いの?
人骨?ここにある骨、全部本物?グラム単位で売ってる?
使い道あんのかよ。
おまけ?10キロ買うと、売り子さんの皮も付いてくる?足の皮は人肌に馴染むタイツになる?
要らねえ!気持ち悪い!

まあ、こんな骨董市珍しいし、記念に室町時代の子供が作ったドングリゴマだけ買ってみるか。
じゃ、それ、一袋。はい、じゃあね。

(少し歩いて)ドングリゴマ買ったら、することないな~……。
ん?何?人いないんだから、耳打ちじゃなくていいだろ。
え?タイラサン?タイラサンって何?人?人身売買?
う~ん?なんだ?そっちに置いてるの?
(少し歩いて)ここ?古民家みたいな家があるけど……あぁ!?おい!人のポケット……あ!千円取った!返せこらぁ!……あ?消えた?
くそ!あの骸骨野郎!人の血が流れなくなると、人の心も無くなるな!
ああ~、生臭い着物着てる奴になんか付いて行くんじゃなかった~……。

うわ!古民家みたいな家から出てきた爺さんに怒鳴られた。
「おのれゲンジが何しに来た!?」って、何言ってんだ?

なんだよ。金取られるし、わけわからんことで怒鳴られるし。面倒臭え。もう、帰ろ。
(少し歩いて)ん?爺さんがついて来てる。人身売買したから?肉が落ちて骨だけだから、すごく細長くなった指で素早く金取られただけで、買ってないぞ。

おい、爺さん、勝手に金取られただけで買ってないんだよ。(指で骨董市の方を指しながら、顔も少し遅れて向ける)もう帰ってくれよ……お?あれ?骨董市は?骨董市の広場は?

ん?いやいや!お前の家に行くって言われても、どこの爺さんかわからん上に出会いも気ぃ狂ってるから、嫌だよ。
え?爺さんは平清盛で、出会いはちょっとした不思議?
平清盛は四捨五入すれば千年前に死んでるー!
……生きてた頃の平清盛ってなんだー!?
大体、ウチ来て何すんだよ!?
酒飲みたい?
こりゃ、「平家物語」じゃなくて「平家も飲みたがり」だ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

というわけで、元の台本を読んでいただきました。

なんでしょう、この台本は。

難解だったので何回も南海電車で読みました。なんか、いいと思って。(ナンカイがナンカイも出てきてます。この依頼主さんのテイストをマネしてみました)

えーと、率直に最初の印象を言うと、僕にはよくわかりませんでした。

ネタというより、“世にも奇妙なものがたり”の台本とか、そういうものに近い気がします。

「文学小説の一節ですよ」と言われて、読んだら、そうなのかな、と思いながら読んでしまいそうです。

これ、何か元ネタみたいなのあるんですか?
何かのパロディ?

ひょっとして。
だから、僕が解読不能なの?

本当にそういうケースもあるので、読者さま、その場合は僕に教えてください。

恥をかくことになりますから笑

さて、ここで、重要なお話をします。

【ネタとものがたりの違い】

ネタとものがたり、は違うんです。
この台本は、ものがたり、ですね。

なにが違うのか?

実は、このテーマについて、僕も深く考えたことはあまりなかったんです。

自分はネタを書けるので笑笑

添削とか、審査員のお仕事などをちょこちょこするようになってから、“ものがたり”を書いてくる人が一定数、存在することに気づいたのです。

分かりやすく言うと、「桃太郎」「浦島太郎」「かぐや姫」「一寸法師」などは基本的にはネタではありません。

ものがたり、です。

だから、笑うところはありません。

エンタメ性があることと、笑いが起こるネタというものは、必ずしも一致しません。

上記のネタも、そうなってしまってます。

結構いいテーマを突きつけられました。

【ものがたりとネタはどう違う?】

うーん。これ、わかる人いますかねぇ。僕はよくわからないです。違うってことはわかるんですけど。

うーん。

うーん。

これは、面白いテーマなので、実験として、【桃太郎】をものがたりじゃない脚本に作り変えてみましょう。

ここで、注意。

【桃太郎】のパロディであっては意味がないです。そうじゃなくて、ゼロから桃太郎の筋だけど、ものがたり、ではなくネタになっている、にしようかなと思います。

添削だけをすればラクなのに、こんなことまでやってしまうのが僕の不器用なところです笑笑

でも、お笑いのネタについて考えるいいきっかけで、自分のためにもなるかもしれませんので。

断っておきますが、考察のためなので、ぜーんぜんおもんない台本になるかと思います。

【桃太郎】

むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが、おりました。

子供がいないのに、おじいさん、おばあさんと表現していますから、一般的な基準として、見た目でおじいさんとおばあさんなのでした。

おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に行きました。

川の近くの民家に洗濯機があるからです。「使ってくれてもいいよ」と言ってくれてるので、おばあさんは遠慮なく使います。

おばあさんが川らへんで洗濯をしてると、川上から大きな桃がどんぶらこどんぶらこと流れてきました。

(心の声 全然おもろくできない。ボケも入れられない。ここらへん。)

おばあさんは、その桃を持って帰って、おじいさんと食べることにしました。

おじいさんが、その桃を大きなマサカリで切ると、中から可愛らしい男の赤ちゃんが生まれてきました。

子供がいなかったので、おばあさんは大喜び。

おじいさんは喜んでるフリをしましたが、おばあさんを抱く大義名分がなくなってしまうので、その赤ちゃんを少し憎みました。

「子供を作る」という大義名分なきセックスになってしまうからです。

おばあさんは、この赤ちゃんに「桃から生まれたので、桃太郎という名前にしましょう」と提案しました。

おじいさんは“大義名分”を失ってしまった今、おばあさんが何をしゃべりかけても「うん」しか言わないように、それ以降、呆けてしまいました。

大義名分を失ったおじいさんは体重がとても減りました。くしくも、減った分の体重の重さが、桃の重さとまったく同じでした。

桃太郎はスクスクと大きくなり、勇敢な若者になります。

その間もおじいさんは「うん」と「桃太郎に弟か妹がいないとかわいそう」の二つしかしゃべりませんでした。

そのころ、村にやってきては、宝物を強奪したり、悪さを繰り返す鬼たちがいました。

この鬼たちを倒すために、桃太郎は鬼退治に行くことになりました。

おばあさんも本来無口でほとんど喋らないため、桃太郎も「うん」の「桃太郎に弟か妹がいないとかわいそう」の二つしか喋れないインコのような状況で、鬼たちのいる鬼ヶ島に向かうのでした。

出発の日、おばあさんは、無言で吉備団子をつくり、桃太郎に渡しました。

おじいさんは桃太郎の目をみて、「桃太郎に弟か妹がいないとかわいそう」と言い、桃太郎はおじいさんとおばあさんに「桃太郎に弟か妹がいないとかわいそう」と言い残し、出発しました。

桃太郎が歩いていると、向こうのほうから犬が歩いてきました。

「桃太郎さん、桃太郎さん、お腰につけた吉備団子、わたしにくれたら、鬼退治のお供をしますよ」

桃太郎は「うん」と返事をして、犬は仲間になりました。

さて、さらに歩いていると、向こうのほうから猿が歩いてきました。

「桃太郎さん、桃太郎さん、お腰につけた吉備団子、わたしにくれたら、鬼退治のお供をしますよ」

桃太郎は「うん」と言い、猿も仲間になりました。

さらに歩いていると、向こうのほうから、キジが歩いてきました。

「桃太郎さん、桃太郎さん、お腰につけた吉備団子、わたしにくれたら、鬼退治のお供をしますよ」

桃太郎は「桃太郎に弟か妹がいないとかわいそう」と答えました。

どっちのセリフを言うかは、完全にガチャなのです。

キジは、それを聞いて「弟分として活躍してくれという意味なのかな?」と考え、仲間になりました。

すると向こうのほうから、仲間由紀恵が歩いてきましたが、桃太郎たちをチラッと見ただけで、通り過ぎていきました。

キジは「仲間が仲間に、みたいな展開になったかもしれないのに、ダジャレ不成立だね」と桃太郎に話しかけましたが、桃太郎は「桃太郎に弟か妹がいないとかわいそう」と答えたので、会話になりませんでした。

さて、鬼ヶ島に着きました。

着いてから5秒以内に、犬は赤鬼にやられ、猿は青鬼にやられ、キジは自殺しました。

桃太郎は「桃太郎に弟か妹がいないとかわいそう」と叫びながら、鬼たちを一人で倒しました。

盗まれていた宝物をたくさん持って、おじいさんとおばあさんが待つ「大義名分ハウス」に帰りました。

大義名分では、桃太郎の弟か妹を作ろうと、おじいさんとおばあさんがハッスルしていました。

桃太郎は、「弟の名前はハッスル太郎ですなあ」と突然話しかけ、おじいさんとおばあさんはびっくりして、死んでしまいましたとさ。

おしまい。

ということで、書き終えました。

“ものがたり”と“ネタ”の違い。

わからんwwww

わからないけど、ものがたりのほうは、“ツルン”としてますよね。

たんたんとしてて、ツッコミどころがない。

ネタ、というものは、やはりどこかに“無駄さ”がある気がします。

桃太郎が鬼ヶ島にいって、鬼たちを倒すだけじゃ、つまらないので、“何かしらふざける”んですね。

しかし、変な桃太郎を書いたから、余計によく分からない笑
【添削迷子】になっちゃいました。

うーん。

脱線しすぎたので、元の台本に触れていきます。

これ、酔っぱらいという設定なんですが、酔っぱらいだから幻覚を見てるのか、ホントに平家の末裔(平清盛?)が出てきてるのか、解釈が2つ出来てしまいます。

ものがたり、なら、それでも良いのですが、ネタなので、【こう思わせといて、こっち!】みたいな風に、作者に解釈は決めてほしい、ですかね。

解釈をあえて二通りにする、のは高等テクニックなので、やらないほうがいいでしょう。

なぜ、元の台本はツルンとしてるのか、、。。

難しいですね。

亡霊なので、【不気味な存在】でいいから、かもしれませんね。

変なものをたくさん骨董市で販売してたとしても、それはそれとして、違和感がない。

一方で【酔っぱらい】も【支離滅裂な存在】でいいから、それはそれとして、違和感がない。

だからものがたりっぽく、ツルンもしてるのかもしれませんね。

なるほど。分かってきました。

ボケとボケだから、なんのこっちゃ分からないのかもしれませんね。

下記は、NSC(よしもとのお笑い養成所)でも言われます。
基本なんです。

【まともなツッコミ(お客さんと同じ感覚)の人が舞台上に一人はいるべき】

酔っ払いがツッコミでもいいけど、泥酔、酩酊ではなく、ある程度つっこめる状態、ぐらいのほうがいいかもしれません。

さて、どう変えようかな。。
大手術になりそうです。

あ、そうそう!!

今までこの視点で語ったことないですけど、初心者にオススメのネタの書き方、として、【目的】があるネタが良いと思われます。

よしもと新喜劇を思い起こしてみてください。

【30年ぶりに帰ってきた父親と、ほったらかされていた息子が再会するけど、心を開かないから、周りのみんなで仲直りさせようとする】

これは、目的がありますよね。

で、“妨害”や“ハプニング”が入り、それが笑いへとつながる。

元の台本は、“目的”を持つ人間がいないとも言えます。

たとえば、酔っ払いは、終電をなくしてしまってる。家に帰るのが目的?

いや、家に帰るのが目的で、電車はやめてタクシーを捕まえようとして、なかなかつかまらない、とかでもない。

亡霊のほうも、目的がまたハッキリしません。

酔っ払いか、亡霊か、どっちかに、目的があり、それを“妨害”されたり“ハプニング”が起きたり、という“違和感”が必要なんですね。

元の台本は、亡霊がせっかく出てきてるので、亡霊に、なんらかの“目的”を与えてやることから出発します。

なんでもいいんです。

呪いたい、でもいいんです。

今回は、こうしましょう。

呪いたいから、呪いのグッズをたくさん販売してるけど、お客さんを引き寄せるために、最近ブームで、手に入らないと話題のヤクルト1000を置いてる。

でも、みんな呪いのグッズは、ちょっと見るだけで、ヤクルト1000だけ買っていく、みたいな話にします。

今のところ。書いていくうちに変わるかもだけど。

元と全然違うけど。

今回、ほんとに支離滅裂な文章になったことをお詫びします。

それだけ、ものがたりとネタの違いを考えると、パニックになるのです笑笑

さて、ここからはAFTERのネタとポイント解説を観ていただきます。有料にはなりますが、記事を買うか、全体のマガジンを、買っていただければ、読めます。
もっともっと添削の内容を知りたい方には、【個別の記事を購入するよりも、全体のマガジンを、ご購入していただいた方が絶対にお得】です。

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