小説【骨折れてなかったお父さん】

【骨折れてなかったお父さん】

1【ケンタくんのお父さんの上司】

ケンタくんは、人懐っこい男の子。5歳で、新しい大人が大好きです。

今日の新しい大人は、お父さんのジョーシンと名乗ってました。

ジョーシンってなんだろう。

よくわからないけれども、ケンタくんは、今日お家に遊びにきた、新しい大人の周りになついて、くっついています。

「ケンタくん、わたしはお父さんの会社の上司だ。歳は三つしか変わらないけどね」

そう言うと、新しい大人は、ケンタくんに、家の中で投げても安全なふわふわとしたボールを投げました。

ケンタくんは、そのボールをキャッチして「おっちゃん、オレとキャッチボールするか?」と言いました。

「こら、ケンタ。部長にそんな口の利き方、あかんやろ!」と苦笑いしながらたしなめるお父さん。

「いや、ハッハッハ。いいんだよ。私は子供が好きなんだ」

それを聞いたケンタくんは「おっちゃん、お父さんのこと知ってるん?」と聞きました。

部長は「ケンタくん、君のお父さんはね。みんなで草野球をしていて、ケガをして、うずくまったお父さんなんだよ。

そして『絶対に骨が折れてる』と言って、病院に行ったら、骨、折れてなかったお父さんなんだよ」と答えました。

ケンタくんは、可愛いおめめをパチクリさせています。

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