【タイのカルパッチョ】
【人生を変える料理】
昼からのバイトの時間には少しだけ余裕があるが、いつも余裕を持って、早く出かけるのが自分のやり方だった。
「みなさん、こんにちは。今日のお料理、今回は500回記念ということで、生放送でお送りいたします」
「500回記念の生放送なので、本日は、先生、何を作ってくださるんでしょうか?」
見るでもなく、たまたまつけていたテレビでは、料理をやっている。500回記念か。今から行くバイト、一体何回目ぐらいなのだろう。
そんなことをふと思ったが、出かけるためにテレビを消そうとした。
その時である。
「500回記念で、てぇへん、めでてぇので、鯛を使ったカルパッチョを作りてえと思います。視聴者の方は、お魚の鯛をさばくのはテェヘンだと思ってる方もいるかと思いますが、でぇじょうぶだと思ってもらいたいです」
私は、画面を凝視した。この着物の50代ぐらいの女性の先生は、どうしちゃったのだろう。
てぇへん、めでてぇ?
カルパッチョを作りてえ?
でぇじょうぶ?
と、思った途端に、料理の先生の唇がわなわなと震えて、目からは大粒の涙があふれてきていた。
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