添削11本目【スカイダイビングの漫才】

それでは、11本目、まずは送っていただいた台本から。

漫才

【BEFORE】


◉ 「今度の土日暇?」

◎ 「まー要件によるわ。楽しい予定なら空いてるし」

◉ 「正直だな。いや、友達とスカイダイビング行くんだよ。一回やってみたくてさ!で、良かったらお前もどう?」

◎ 「スカイダイビング?なら行かないよ」

◉ 「なんで、楽しそうじゃん」

◎ 「怖いだろあんなん」

◉ 「え、お前怖いから来ないの?」

◎ 「怖いだろ」

◉ 「大丈夫だよ結構ちゃんとした所で、今まで一度も事故起きてないって言うから」

◎ 「いやそういうんじゃなくてさ。スカイダイビングのインストラクターって、産まれてからどういう経験をして、どういう人生を歩んだらあの仕事に就くのか、マジで分からないじゃん」

◉ 「まぁ変わった仕事ではあるからね」

◎ 「そんな奴に命預けられる?」

◉ 「そういう怖さ?」

◎ 「だって多分俺と全く違う人生を送ってて、全く違う経験をしてきてて、だから全く違う価値観で、俺の常識とかあいつらにマジで通じないと思うよ。俺が見ている青色はあいつらにとっての何色だ?」

◉ 「なんかうるせえなぁ。なんかうるせえわ」

◎ 「そんなツッコミねえだろ。とにかくそんな訳わからん連中と飛べるわけないから」

◉ 「いやでも多分だけどさ、インストラクターの人達も、初めは俺らみたいに遊びでダイビングして、そこで良く言うじゃん?人生観変わっちゃって!で、素晴らしい仕事だなーと思って、インストラクターになったんじゃない?」

◎ 「だとしたらより怖えよ」

◉ 「より怖いってなんだよ」

◎ 「俺らも人生観変わっちゃったらどうすんだよ。インストラクター目指す事になったら。終わりだぞ」

◉ 「終わりでもないけどね?いや、流石に俺らが突然インストラクター目指さないでしょ」

◎ 「今の人生観で語るなよ!それが変わっちゃう可能性あるって話だろ。スカイダイビングのインストラクターになったらどうすんだよ。リスクの売人になって幸せな家庭が築けるか?」

◉ 「うるせえなあ」

◎ 「うるせえってなんだよ。とにかくあいつらは人の人生観を変えて、自分たちの仲間を増やしていく。ほら、そういう習性の虫いるだろ?」

◉ 「虫とか言うなよ」

◎ 「飛ぶし」

◉ 「うるせえよ」

◎ 「うるせえってなんだよ、まぁそういう理由で、俺はスカイダイビング行かない」

◉ 「なるほどな。なんか、人生観変わったわ」

◎ 「お前映画見たら死ぬぞ」

◉ 「どうもありがとうございました」


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さて、まず、◎と◉で送ってくださったのですが、非常に気持ち悪いです笑笑

苗字の人はわりと、います。
その場合は身バレを防ぐために、僕がAとBに振り分ける作業をしてます。

もともとAとBの人もよくいます。

しかし、◉と◎は初めてで、非常にきしょいです。

さて、そこは本来、まあどうでもいいんですが、こういう変なところで個性が出てる人のネタはどんなのかな?みたいなワクワクはありましたね笑笑。


スカイダイビングの誘いに関して、ボケが屁理屈を言っていくという構成ですね。
着想と出だしは悪くないと思います。

このネタ、パッと読んだだけで、僕には致命的な欠点があるように思えます。

みなさんは、なんだと思いますか?

ちょっと考えてみてください。


………

さて、答え言います。

…………

答えは、【ボケの人が高いところが怖いだけで屁理屈をこねて逃げてるのか、またはボケの人は高いところは平気だけど、ホントにこの理屈が原因で怖いのかが全く分からないまま脚本が終わるところ】です。

これについて、ツッコミがどっちかを探らないのも気持ち悪いところです。
普通、聞くでしょ。

このネタの添削をするとしたら、大きくわけて、二種類の添削ができるという理論になります。

①ボケの人が高いところが怖いだけで屁理屈をこねて逃げてるパターン

②ボケの人は高いところは平気だけど、ホントにこの理屈で怖がっているパターン


というわけで今回はゴージャスに2パターン作ろうかと思います。

ちなみに!!

あやふやにしてはいけないと言ってるわけではありません。【あやふやにしてる意識が作り手にあるかどうか】が問題なんです。

もうひとつちなみに!!!!

このネタだけじゃなく、【添削は何パターンもできる】ことが多いです。
むしろ、それが普通で、無限に近くある変え方のバリエーションの中から僕なりに分かりやすさ重視で書かせてもらうという作業なんです。


ここはダメである、という点があるとして、そこから右にハンドルを切って修正するか、左にハンドルを切るか、みたいな感覚ですので。
それだけで2パターンにはなります。

毎回はやりませんが、今回は題材として非常にわかりやすいので2パターン作らせていただきます。

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【AFTER】その1


“ボケの人が高いところが怖いだけで屁理屈をこねて逃げてるパターン”


以下A はツッコミ
Bはボケ


A どーもー、◯◯◯(コンビ名)です。よろしくお願いします

B よろしくお願いします

A あのさー。今度の土曜日、ヒマ?

B えっと〜、【用件を先に言わずに暇かどうかだけ聞いてくる奴をしばくパーティ】は、日曜日やから、と。(思い出すかのように上を見ながら)
土曜日はいけるで!

A いけるんか!一瞬しばかれるんかなと思った!なんなん、そのパーティ!怖いねん!

B お前は逆に日曜日空いてるんか?

A しばくパーティ呼ばれる!?いや、用件言うから!

B 用件たのむ。

A スカイダイビングしにいこうよ。友達が手はず整えてくれるから、無料でやらせてくれるねんて!

B え、いや、オレはやめとくよ。

A え?なんで?

B なんていうか、スカイダイビングってインストラクターに命預けるわけだろ?

A そうだけど

B どこで生まれてどんな人生過ごしたかわからないような奴に人生預けたくないよ!オレ!

A あ、なるほどね。そういうことね(ニヤニヤする)

B あ!オレは別に高いところにビビってるわけじゃなくて、わざわざ空まで昇って、降りてくる、意味わからん行動をとる動物と、いっしょにいるのがイヤなだけだから

A もういいよ。怖いわけか?

B インストラクターがな!高さにはビビってない!!

A じゃあバンジージャンプしに行こうよ。今度

B その日は、おばあちゃんの葬式だから

A 日にち言ってないよ!!おばあちゃんを簡単に殺すな!!そんな葬式が前々から決まってるわけねーだろ!!
お前、完全に高いところ、怖い奴じゃん!!

B バンジージャンプのロープあるだろ?

A そりゃあるよ

B ロープアレルギーなんだよ

A あるか!そんなの!ロープの素材によるだろ!

B ロープの形状がダメなんだよ!

A じゃあ、ジェットコースター乗りに行こうよ!

B さっきも行ったけど、ジェットコースター自体は怖くないけど、乗り物なのに、スタート地点も目的地がいっしょなのがイヤなんだよ!

A タクシーじゃねーんだよ!当たり前だろ!

B タクシーなら乗るよ!

A 確かにジェットコースターは乗るところと降りるところ、同じだけどさ!じゃあ、仮に、ジェットコースターで、乗るところと降りるところが別の場所になってるようなジェットコースターがどこかの遊園地にあれば、乗るか?

B オレ、歩くの好きなんだよ

A 認めろよ!怖いって!!

B 高いところ自体は怖くない

A じゃあオレの友達でサーカスの関係者がいるんだけど、空中ブランコで遊んでみる?

B ロープアレルギー

A くそっ!ブランコにロープある!!じゃあ、綱渡りは?

B 綱って言ってしまってるじゃねえか!!

A ロープ!!!!くそっ!!なんでこんな理論武装だけできてるんだよ!うぜー!!カナダに友達がいてスキージャンプの練習させてくれる友達いるんだよ!やろうよ!

B いや、それはいいけど。

A いいんだな!言ったな!

B スキージャンプ多分、余裕で出来るけど。

A じゃあ、いいじゃねえか

B うーん。カナダまで船かあ

A いや、飛行機こえーんだろ!いい加減にしろ!


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というわけで添削が終わりました。
元のボケがあまり入ってないじゃないかと怒られそうですが、前述の【一番の欠陥として指摘した部分】が前半にあるため、そこらへんから変えていくと、先が変わってしまう、ということで、ご容赦願いたいと思います。


ここからは【AFTER】その1のテクニック解説をしていきたいと思いますが、まずその前に、【BEFORE】の最初のほうを見てもらいたいと思います。

【BEFORE】

◉ 「今度の土日暇?」

◎ 「まー要件によるわ。楽しい予定なら空いてるし」

◉ 「正直だな。いや、友達とスカイダイビング行くんだよ。一回やってみたくてさ!で、良かったらお前もどう?」

◎ 「スカイダイビング?なら行かないよ」

◉ 「なんで、楽しそうじゃん」

◎ 「怖いだろあんなん」

◉ 「え、お前怖いから来ないの?」

◎ 「怖いだろ」

◉ 「大丈夫だよ結構ちゃんとした所で、今まで一度も事故起きてないって言うから」

◎ 「いやそういうんじゃなくてさ。スカイダイビングのインストラクターって、産まれてからどういう経験をして、どういう人生を歩んだらあの仕事に就くのか、マジで分からないじゃん」

◉ 「まぁ変わった仕事ではあるからね」

◎ 「そんな奴に命預けられる?」


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ここまで。ボケと呼べる部分が一体何個あるつもりで作成してるネタなのか、ちょっと本人ではないので、分からないですが。

明らかに笑わせようとしてる、大きな節目の部分は、多分【そんな奴に命預けられる?】の箇所だと思うんです。

そこまでが長い!!

一個目のボケまでが長い。許容範囲ではあるんですが、軽いジャブでもいいから、何か入れてほしいと思いました。

この人の用意した1個目のボケは、理屈っぽいボケをするわけですから、そのもっと手前に一個目のボケとして【理屈っぽいこと言いそうな人という方向性のボケ】を入れれるチャンスはなかったか?

それでは、見ていきましょう。

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【テクニック解説】

A どーもー、◯◯◯(コンビ名)です。よろしくお願いします

B よろしくお願いします

A あのさー。今度の土曜日、ヒマ?

B えっと〜、【用件を先に言わずに暇かどうかだけ聞いてくる奴をしばくパーティ】は、日曜日やから、と。(思い出すかのように上を見ながら)
土曜日はいけるで!

A いけるんか!一瞬しばかれるんかなと思った!なんなん、そのパーティ!怖いねん!

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解説)ここに入れました!
理屈っぽいことをこれからも言いそうなボケです。

以前も言いましたが、一発目のボケは【キャラクターの方向性を決める】とか【設定の説明も兼ねている】とか、意味を持たせると良いんですね。

“しばく”は少し野蛮で安易なので、この場合“論破するパーティ”とか、他のボケにしてもかまわないかと思います。

元々の台本は、【用事によるよ。楽しいやつなら行くし】という内容でしたが、理屈っぽい奴かもしれませんが、ボケと呼ぶほどにボケきってない、あるいは、普通の会話なので、もっと振り切って何かを言ってほしいと思いました。


ボケながら説明できるところは、ボケる!!

説明だけ、会話だけ、で終わってる部分はもったいないですよ!
シリアスさを引っ張らないといけない場合など、色んなケースもありますが。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

B お前は逆に日曜日空いてるんか?

A しばくパーティ呼ばれる!?いや、用件言うから!

B 用件たのむ。

A スカイダイビングしにいこうよ。友達が手はず整えてくれるから、無料でやらせてくれるねんて!

B え、いや、オレはやめとくよ。

A え?なんで?

B なんていうか、スカイダイビングってインストラクターに命預けるわけだろ?

A そうだけど

B どこで生まれてどんな人生過ごしたかわからないような奴に人生預けたくないよ!オレ!

A あ、なるほどね。そういうことね(ニヤニヤする)

B あ!オレは別に高いところにビビってるわけじゃなくて、わざわざ空まで昇って、降りてくる、意味わからん行動をとる動物と、いっしょにいるのがイヤなだけだから

A もういいよ。怖いわけか?

B インストラクターがな!高さにはビビってない!!

A じゃあバンジージャンプしに行こうよ。今度

B その日は、おばあちゃんの葬式だから


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

解説)ここからの話の膨らませ方は、ビビってることを認めないBに対して、認めさせようとする Aという構図になってます。

なので、【高いのが怖くないならば、これはどう?】という感じで、スカイダイビング以外の高い所として、バンジージャンプを登場させました。

このあたりも、色んな膨らませ方はあると思います。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

A 日にち言ってないよ!!おばあちゃんを簡単に殺すな!!そんな葬式が前々から決まってるわけねーだろ!!
お前、完全に高いところ、怖い奴じゃん!!

B バンジージャンプのロープあるだろ?

A そりゃあるよ

B ロープアレルギーなんだよ

A あるか!そんなの!ロープの素材によるだろ!

B ロープの形状がダメなんだよ!

A じゃあ、ジェットコースター乗りに行こうよ!

B さっきも行ったけど、ジェットコースター自体は怖くないけど、乗り物なのに、スタート地点も目的地がいっしょなのがイヤなんだよ!

A タクシーじゃねーんだよ!当たり前だろ!

B タクシーなら乗るよ!

A 確かにジェットコースターは乗るところと降りるところ、同じだけどさ!じゃあ、仮に、ジェットコースターで、乗るところと降りるところが別の場所になってるようなジェットコースターがどこかの遊園地にあれば、乗るか?

B オレ、歩くの好きなんだよ

A 認めろよ!怖いって!!

B 高いところ自体は怖くない

A じゃあオレの友達でサーカスの関係者がいるんだけど、空中ブランコで遊んでみる?

B ロープアレルギー

A くそっ!ブランコにロープある!!じゃあ、綱渡りは?

B 綱って言ってしまってるじゃねえか!!

A ロープ!!!!くそっ!!なんでこんな理論武装だけできてるんだよ!うぜー!!カナダに友達がいてスキージャンプの練習させてくれる友達いるんだよ!やろうよ!

B いや、それはいいけど。

A いいんだな!言ったな!

B スキージャンプ多分、余裕で出来るけど。

A じゃあ、いいじゃねえか

B うーん。カナダまで船かあ

A いや、飛行機こえーんだろ!いい加減にしろ!


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というわけで、オチとしてさりげなく【怖さを認めてしまう系】のものにしました。

さて、この次は、パターンの二つ目ですね。

ボケの人が、本当にこの理屈で怖がっているパターンの台本のAFTERですね。
なんとなくの僕の予想では、ネタの送り主さんは、こっちで書いたつもりだったのではなかろうかと思います。


さて、ここからはAFTERその2のネタとポイント解説を観ていただきます。有料にはなりますが、記事を買うか、全体のマガジンを、買っていただければ、読めます。
もっともっと添削の内容を知りたい方には、個別の記事を購入するよりも、全体のマガジンを、ご購入していただいた方が絶対にお得です。

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