短編小説【コールドテレフォン】

【序文】

ピカソの描いた“ゲルニカ”という作品は、実は、知らん番号から電話がかかってきて、逃げまどう人々を描いたものである。

そういう説があります。

真偽は定かではありませんが、昔の人は、知らん番号から電話がかかってくることが、とても恐怖でした。

今のように、カウンセリングや心理学などが発達していない時代は、知らん番号から電話がかかってくることは、とても恐ろしいことだったのです。

現代人は、知らん番号から電話がかかってきても、それを理由に仕事を休んだりはできませんでしたが、昔は知らん番号から電話がかかってきたら、会社を休んでもいいというのが当たり前でした。

しばらく休んでもいいというのが当たり前でした。

一人一個ずつ当たるように買われてきたお菓子を、その人だけ二個食べたら、普通は顰蹙を買いますが、知らん番号から電話がかかってきた人の場合は、みんなが「わたしの分も食べてよ!」とお菓子をくれるので、一人で二個どころか、三個食べたり、ほとんど食べたり、全部食べたりしても、許されるのでした。

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